女性ヘルスケアビジネス専門のニュースレター登録
女性ヘルスケアビジネス専門のニュースレター登録

不妊治療と仕事の両立、どうやって職場で支援している? 25社の事例と支援のコツ 

不妊治療と仕事の両立ができる職場環境の整備のため、厚生労働省は、事業者や人事部に向けたマニュアル「不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル」を公開している最新の「令和7年3月」版は今年4月に公開

【出典】厚労省「不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル」の表紙

 

不妊の検査や治療を受けたことがある夫婦は近年増加傾向にあり、2021年は22.7%で、夫婦全体の約4.4組に1組の割合になる。不妊を心配したことがある夫婦は39.2%に上り、不妊は今や身近な健康課題として認識されるようになってきた。

だが、働き世代にとって仕事と不妊治療の両立は容易ではない。厚労省が実施した調査では、仕事をしながら不妊治療をしたことがある人のうち4人に1人が「仕事と両立ができなかった」と回答しており、その理由の最多は「仕事の日程調整が難しいため」で約5割に上る。背景にあるのは企業側の環境整備が進んでいないことで、従業員の不妊治療の支援を行なっている企業は3割未満にとどまる(厚労省「令和5年度 不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」)

【出典】厚労省「不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル」(グラフは「仕事と不妊治療を両立できずに仕事を辞めたもしくは不妊治療をやめた、または雇用形態を変えた理由」の結果<複数回答>)

 

同マニュアルは、こういった実態を受けて事業者向けに制作されたもので、不妊治療と仕事の両立支援に取り組む意義や、両立支援の導入ステップなどを解説している。トヨタ自動車、エムティーアイ、オタフクソース、日本航空など、先行して両立支援に取り組む企業や医療機関など25の事例も紹介。両立支援にあたり事業者がぶつかりやすい課題も整理し、支援のコツやポイントも掲載している(以下)

■男女とも同様に利用可能な制度とする
医学的にも社会的にも、不妊治療に対する支援が求められているのは、女性だけではない。

■非正規雇用労働者も対象にする
同一企業内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、あらゆる待遇について不合理な待遇差を設けることが禁止されているため、不妊治療と仕事との両立支援の取組を行う場合、法の内容に沿ったものか点検する必要がある。

■社員のニーズを把握し、多様な制度を整備する
不妊治療と仕事との両立を図るために、社員がどのような制度、支援を求めているのか把握し、社員のニーズに沿う多様な休暇制度・両立支援制度を整備する。

■「不妊治療」を前面に出さない方がよい場合もある
不妊治療のための支援策であることを前面に出すと、分かりやすい一方で、不妊治療を周囲に知られたくない人もいることから、前面に出さない方が活用が進むこともある。

■不妊治療以外の施策とパッケージ化して導入する
制度の恩恵を受けないと感じる社員の不満等を受け止め、会社として様々な施策で社員を総合的に支援している姿勢を示す。

■導入時には外部にも発信する
報道等がされたことで、社内における周知が更に進む契機となったり、制度の活用が進んだりすることがある。

■プライバシーの保護に配慮する
不妊治療の相談等があった場合、本人の意思に反して職場全体に知れ渡ってしまうことなどが起こらないよう、情報共有の部署や担当者等の範囲をあらかじめ決めておくなど情報の取扱いに留意し、プライバシーの保護に十分に配慮する。

■ハラスメントを防止する
働きながら不妊治療を受けようとする労働者に対しては、周囲からのハラスメントが発生することもあることから防止対策を講じる必要がある。また、親しい者同士でのからかいや冗談でも当事者を傷つけることがあることに留意する。

■制度づくりと併せて職場風土づくりをする
十分な制度があっても、その制度を活用しやすい職場風土がないと、活用は進まない。企業のトップ自らが不妊治療と仕事との両立を支援し、推進するというメッセージを発信し、休暇制度・両立支援制度を活用しやすい職場風土づくりをすることが重要である。

■不妊治療と仕事との両立に係る認定の取得を目指す
次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画に盛り込むことが望ましい事項に「不妊治療を行う労働者に配慮した措置の実施」が追加されている。また、令和4年4月1日から「不妊治療と仕事との両立に係る認定制度(くるみんプラス)」が創設された。自社の行動計画に不妊治療と仕事との両立支援に係る取組を盛り込み、認定の取得を目指して取り組むことも重要である。認定されると次のマークが使用できる。

引用:不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりのためのマニュアル

 

【編集部おすすめ記事】
「不妊治療中の自己注射サポートキット」、タイム誌が選ぶ画期的な発明品
働きながら不妊治療・育児・介護…複雑な諸制度のポイント解説
「不妊治療と仕事の両立」に関する総合調査、1,859社
女性ヘルスケア白書 市場動向予測2024年度版
売れるフェムテックの「開発」と「販売戦略」 17の障壁と対策

PAGE TOP
×