オープンイノベーションで実現、世界初の胎児不整脈の診断支援システム 国立循環器病研究センター×カナデビア
内閣府主催の「日本オープンイノベーション大賞」の表彰式が今月5日に行われた。研究開発成果の迅速な社会実装が近年の課題とされていることから、国内のオープンイノベーション推進を目的に開催するもので、今回で7回目。業種問わず、オープンイノベーションの取り組みとして模範となる、先導性・独創性の高い15件の取り組みが受賞を果たした。
厚生労働大臣賞を受賞したのは、国立循環器病研究センターと、大型プラントや医薬機械などを手掛けるカナデビア株式会社(旧・日立造船)の協働により開発を実現した取り組み「AIを用いた胎児不整脈診断支援システム 〜胎児不整脈の診断を早く、正確に〜」。胎児心不全の原因となる胎児不整脈(赤ちゃんが母親の胎内にいる間に発症する不整脈)を、AIを用いて簡便な超音波断面の動画のみで診断支援をするシステムで、「胎児不整脈を超音波断面の動画のみで診断できるシステム」として、世界初。
胎児不整脈は種類ごとに治療薬が異なり、また、従来の診断方法では高い専門技術を要するために正確な診断が難しく、見落としが発生しやすいといった課題があった。同システムはそういった課題を解決するもので、女性の安心安全な妊娠・分娩に寄与する点が、社会的意義の高い取り組みとして評価された。
2社のオープンイノベーションは、大阪商工会議所次世代医療システム産業化フォーラムによるマッチングを通じて至った。カナデビアはこれまで医薬分野で事業展開はしていたものの、医療分野での事業経験はなかった。だが自社の画像処理・AIオペレーションの技術を活用できるとの判断から、専門知見を活用したアイデア実現を目指す国立循環器病研究センターとのマッチングが成立。2024年にプロトタイプが完成し、同年に医師主導知見を開始。2026年までの薬事申請を予定している。
オープンイノベーションとは、スタートアップや中小・大企業、大学、行政機関などが組織の壁を越えて知識や技術・経営資源を組み合わせ新しい取組を推進することを指し、イノベーション創出の国際的な競争の激化や、市場のコモディティ化、専門技術の多様化や深化などを背景に近年注目されている。女性ヘルスケア事業におけるオープンイノベーションは、昨年の女性の健康総合センター開設を機に今後の加速が期待され、幻滅期に入ったフェムテック市場の打開策としても関心が高まると見られる。今後の動向は、今月26日に開催されるセミナー「女性ヘルスケア市場で加速する共創オープンイノベーションがもたらす新たな商機と未来とは?」で詳説。女性の健康総合センターと、当メディア運営のウーマンズが登壇し議論する。
女性ヘルスケア市場の最新動向2024年度版
ヘルスケア領域の女性トレンドと業界トレンドを、今年度も徹底分析!最新動向を全103ページのレポート「女性ヘルスケア白書 市場動向予測2024年度版 〜健康トレンド・業界動向・女性ニーズ〜」にまとめています。前年度は2,300社にご利用いただいた、毎年人気のアニュアルレポート。ぜひご活用ください!
【編集部おすすめ記事】
■出生前検査の受検者数 30代後半が最多 受けた人・受けなかった人それぞれの本音
■モバイル胎児モニターなどを販売、フェムテックで「妊産婦・新生児の健康」を強化
■女性の健康特化した研究拠点「女性の健康総合センター」 オープンイノベーションセンターも
■女性ヘルスケア市場で加速する共創オープンイノベーションがもたらす新たな商機と未来とは
■売れるフェムテックの「開発」と「販売戦略」 17の障壁と対策