日本の離婚率と離婚の原因|年代別・地域別・国別

1,000人のうち約1.7人が離婚し、年間では20万7,000組が離婚(2019年6月公表)。「女性が離婚を切り出す理由」に関する調査結果の他、離婚の国際比較、離婚率の高い都道府県、年代別離婚率の特徴、同居期間別の離婚率など、日本の離婚率の現状を様々な角度から調査してみた。

日本の離婚率

日本の離婚率の実態(2019年6月公表)

2018年の日本の離婚率は1.68厚生労働省「平成30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況」。2019年6月に厚生労働省が公表しており、最新の数値となる。これは「年間離婚届出件数÷日本人の人口×1000」という計算式で求められたもの。人口1000人あたりの離婚率が1.68ということは、1000人のうち約1.7人が離婚しており、1年間で20万7000組が離婚している計算になる。離婚件数と離婚率の年次推移は、2002年(平成14年)をピークにその後は年々減少傾向で推移している。数十年前と比較すれば離婚率は高い水準にあるが、増え続けているわけではない。

 

離婚件数が2002年をピークにその後減少の一途を辿っているのに、2009年にわずかに増加に転じている理由について、書籍「『おひとりウーマン』消費!」が述べている以下考察は興味深い。

有名な話が、80年代後半に始まる妻たちの「不況先読み節」。これはバブル期以降、しばらく「離婚」(8割は妻が言い出す、とされる)が景気の先行指標のような動きを示していたことから、囁かれ始めた。すなわち、離婚が増えるとその1~2年後に景気がガタっと落ち込み、逆に減るとその数年後に景気が回復し始めるとの動きだ。これを見て、複数の経済学者は「女性特有の『動物的なカン』が景気悪化を予知し、子どもの養育費や慰謝料などを考慮して、早め早めに離婚を切り出すためでは」と推測する。逆に「そろそろ景気が上がるかな(数年後に景気上昇)」というカンが働くと、女性は「まだしばらく夫婦でいよう」と離婚を控える、だから景気上昇の数年前から離婚が減るのだ、との説だ。

真意のほどは定かではない。ただ妻が、夫が思う以上に「冷静に」離婚を考えているのは間違いない。離婚件数は02年の約28万9000件をピークに、その後ほぼ減少の一途を辿っているが、09年に微増ながらいったん増加に転じたのは「07年に、離婚時の厚生年金分割に関する制度が導入されかたら」、だからそれまで我慢していた妻たちが「よし」と一気に別れを決めたのでは、と言われる。引用:「おひとりウーマン」消費!,著者:世代・トレンド評論家 牛窪恵,p.24

 

実際に、女性の声を見ると離婚を冷静に考えている様子がうかがえる。ちなみに婚姻率は4.7となっており、推計59万組が結婚していることになる。

 

離婚率の高い都道府県

離婚数は都道府県別に特徴が見られる。離婚率が高い都道府県は「沖縄県(2.44)」「宮崎県(1.97)」「大阪府(1.96)」「厚生労働省「平成29年(2017)人口動態統計(確定数)の概況。離婚率の高さと都道府県の特徴との関連性についてはさまざまな要因が考えられるため一概には言えないが、家族のあり方、気候風土による県民の性格や離婚に対する地域社会の許容度、女性の社会進出の程度など、複雑な事情が絡みあって離婚率に違いが出ていると考えられる。

順位 都道府県 離婚率
1 沖縄 2.44
2 宮崎 1.97
3 大阪 1.96
4 北海道 1.92
5 福岡 1.90
6 和歌山 1.83
7 高知 1.79
8 香川 1.76
9 東京 1.74
10 岡山 1.72
11 福島 1.71
11  神奈川 1.71
11 愛媛 1.71
11  鹿児島 1.71
15 埼玉 1.70
15 愛知 1.70
17 大分 1.70
18 千葉 1.69
18 山梨 1.69
20 兵庫 1.68
21 栃木 1.67
22 静岡 1.66
23 茨城 1.65
23 群馬 1.65
23 広島 1.65
26 青森 1.64
27 熊本 1.63
28 宮城 1.62
29 京都 1.61
30 山口 1.60
31 滋賀 1.59
31 鳥取 1.59
33 三重 1.58
33 徳島 1.58
35 長野 1.57
35 佐賀 1.57
37 長崎 1.55
38 奈良 1.54
39 島根 1.53
40 岐阜 1.50
41 岩手 1.49
42 福井 1.41
43 秋田 1.38
44 石川 1.36
45 富山 1.34
46 山形 1.33
47 新潟 1.29

厚生労働省「平成29年(2017)人口動態統計(確定数)の概況」よりウーマンズラボ作成

年代別離婚率の特徴

次に、年齢階級別に離婚の特徴について。全年代のうち20代以下の離婚率の割合は年々低下しており、2016年には戦後の3分の1の割合になっている。30代は2007年以降低下し、40%を下回っている。40代になると2002年以降上昇傾向にあり、20%台をマーク。50代の離婚率は年々増加傾向にあり、2016年は夫22.0%、妻14.7%となっている。若いうちに離婚をするカップルよりも、年齢を重ねてから離婚するカップルの割合が多いことがわかる厚生労働省政策統括官「平成30年 我が国の人口動態」。なお、熟年離婚とは婚姻期間20年以上の夫婦が離婚することを言う。

同居期間別の離婚率

同じ統計調査では、同居期間別の離婚率も知ることができる。5年未満、5年以上10年未満、10年以上~15年未満、15年以上~20年未満、20年以上、不詳の6つに分けて調査された。 これによると1991年以降すべての期間で増加傾向にあったが、2002年に「5年未満」および「5年以上10年未満」で減少となり、その後はすべての期間で減少もしくは横ばいである。同居期間20年以上のケースを5年ごとに分けて見ると、同居期間35年以上の離婚件数の値が増加。 婚姻期間が長く、歳を重ねた夫婦の“熟年離婚”が多いことが数値で裏付けられたといえるだろう。

長年連れ添った夫婦が離婚する場合、性格の不一致を自覚しつつも子どもの教育や生活のために我慢し、子どもが巣立ったり、定年退職するタイミングで離婚を選択しているのかもしれない。

世界の離婚率と日本の比較

日本の離婚率は、イタリアを除き諸外国と比べると低い。離婚率が高い国は、アメリカ(離婚率2.5)、スウェーデン(離婚率2.46)。離婚率が高い国の傾向として、女性が自立しやすい環境が整っていたり社会的理解が進んでいることが挙げられる。離婚後も女性が生活に困らないため離婚しやすい。一般的に子どもがいると経済的な負担が大きくなるため離婚しづらい傾向があるが、シングルマザーに向けた社会支援が整っている国は子どもがいても離婚しやすいと言えるだろう。

 

日本の離婚率の低さは、「シングルマザーとして生きていく環境が日本は著しく未整備であること」「離婚に対するマイナスイメージが以前と比較して和らいだとは言え、まだまだ根強く残っていること」「離婚すると経済的に不安定になることが影響し、子どもに十分な教育を受けさせることができず、子どもの非行や不幸の原因になりやすい傾向にある、あるいはそういうイメージがある」ことが関係しているのかもしれない。欧米では「家族を大事にしつつ、自分自身の人生も大事にする」考えがあり、親の離婚・再婚を子どもが応援したり好意的に捉えるケースは多い。親子が自立しあっている欧米の関係性に対し、親子が依存しあっている日本の風潮は少なからず “離婚のしづらさ” に影響していそうだ。

一方、日本の婚姻率は1957年から上昇傾向で、1971年をピークに急激に低下。近年は増減を繰り返しながら減少し続けている。

 

離婚率と女性の関係性

離婚率と女性の就労率

離婚率の高さは、一般的に女性の自立と関連する傾向が強い。共働きで、男性だけでなく女性も収入を得ていて経済的に自立している夫婦のほうが、離婚する割合は高くなる。女性にも独立した収入があると、離婚しても経済的に困らずに済むからだ。実際に専業主婦の場合、離婚したいけれど自由に使えるお金がない、仕事を見つけられない、仕事はあっても生活に十分なだけの額を稼ぐことができないといった理由で離婚を諦めるケースは少なくない。

離婚相談にいらっしゃる方の多くが離婚に踏み切れない理由としてあげられるのが、経済的な不安です。先ほども述べたような、別居にかかる費用や弁護士費用等のほか、その後の子どもにかかるお金のことや、長らく主婦をしていた場合には就職ができないのではないかなど、離婚の手続中や離婚後の経済的な問題に対する不安から、現状を我慢している方がましではないかということで離婚に踏み切れないとおっしゃる方が多くいらっしゃいます(引用:LEGAL MALL「離婚したいけどお金がない方が知っておきたい離婚までの道のり」)

 

離婚を切り出す主な原因

離婚原因にはさまざまなものがあるが「性格の不一致」が多い。他、不貞行為や DVなども挙げられる。離婚を切り出す原因は以下の通りで、いずれも妻側の件数が多い。

  • 性格が合わない(夫:11,137件、妻:18,990件)
  • 異性関係(夫:2,594件、妻:8,357件)
  • 暴力を振るう(夫:1,535件、妻:10,459件)
  • 酒を飲み過ぎる(夫:423件、妻:2,983件)
  • 性的不調和(夫:2,406件、妻:3,462件)
  • 浪費する(夫:2,268件、妻5,139件)
  • 病気(夫:795件、妻:844件)
    ※裁判所 司法統計「平成28年度 婚姻関係事件数 申立ての動機別申立人別 全家庭裁判所 」より作成

離婚と卒婚

離婚率が減少傾向にあるのは、近年注目されている「卒婚」が影響しているかもしれない。卒婚とは「結婚を卒業する」という意味で、主に婚姻生活の長い年配の夫婦が行う。法律的に離婚するとなると、財産分与や親権の問題、その他さまざまな問題が起こる上に、弁護士を立てる必要が出てくるケースも。そこで、婚姻関係は解消せずに、夫婦がそれぞれ独立して自由に行きていく取り決めをするのが卒婚である。従来はなかった新しい婚姻の形だが、こうした関係性が社会的にも認知されるようになることで「離婚したいけれどあえて離婚しない」という新たな選択肢ができた。

 

着目したい “離婚消費”

離婚すると夫の収入がなくなるため、養育費の有無に関わらず妻の経済状況はそれまでよりも悪くなるケースが多いが、一時的に“離婚消費”は活発になる。離婚消費とは、離婚というライフイベントによって新たに生じる消費のことで例えば以下が挙げられる。

  • 新居への引っ越し(妻側が家にとどまる場合は新居への引っ越しは無い)
  • 新居への引っ越しがある場合は、家具や家電製品の購入
  • 婚姻時に専業主婦だった場合は、仕事を新たに開始する際に必要な仕事用の被服の購入
  • 収入アップ、転職、再就職に向けた、キャリアアップのためのスクール通いや資格取得
    など

最近話題を集めているのが「離婚式」や「離婚のお祝い」。夫婦一緒に離婚をお祝いしたり、夫婦がお世話になった友人知人を招いて離婚式をしたり、「離婚おめでとう!」と書かれたケーキを囲って友人たちとパーティをするなど、離婚をポジティブに捉えて離婚の門出を祝う。日本ではまだ一般的ではないが欧米では「Divorce Party(離婚パーティ)」という名前で知られており、やがては日本国内でも「Divorce Party(離婚パーティ)」は広く定着していきそうだ。実際の離婚パーティに出席した女性のブログ「離婚パーティ。(DRESS)」を見ると、ポジティブで楽しそうな様子。

女性の未婚化が進み、シングル女性は昔ほど希少ではなくなった。また働く女性の増加により、夫や男性の経済力に頼らなくても自立して生きることができる女性が増えている。離婚率は近年減少傾向にあるとは言え、それら社会情勢の変化が「離婚したいけど我慢している女性たち」の背中を後押しするとしたら、今後離婚する女性は増え、それに伴い離婚消費が盛り上がるかもしれない。企業は「離婚消費」に目を向け、女性たちの“門出”をポジティブにお祝いしてみてはどうだろう。勇気づけられる女性は多いはず!

 

 

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