フェムテック業界に求められるガバナンス改善、「データ管理を企業に委ねるべきではない」 英研究チームが警鐘
スマホで生理や体調を記録できる生理周期管理アプリ(CTA/Cycle Tracking App)が広く普及するなか、英ケンブリッジ大学の研究チームが、フェムテック企業による個人データの取り扱いに懸念を示した(UNIVERSITY OF CAMBRIDGE「Menstrual tracking app data is a ‘gold mine’ for advertisers that risks women’s safety – report」2025.6.11)。
報告書では、多くのCTAが生理や生殖、健康に関する極めて私的な情報を収集し、第三者に販売・提供するケースがある一方で、これらの行為に対する規制や透明性は不十分であると指摘。ユーザーが知らない間に、センシティブな情報が商業利用される可能性があることから、企業による「プロファイリング」の温床になっていると警鐘を鳴らしている。
またデータが悪用された場合、健康情報が保険料の設定や就職審査などに影響しかねず、差別や不利益を生む恐れがあるとしたうえで、CTA運営企業に対しては「ユーザーが安心して使えるためのルール整備と説明責任が不可欠」と、ガバナンスの改善を要求。同時に、生理に関するデータは企業のみに委ねるものではないとして、報告書では以下5項目を提言としてまとめている。
- 1)生理の研究に公的支援を
生理に関するデータの管理を民間企業に任せず、研究機関と企業、医療関係者、市民団体、一般市民が連携して、公共主導のデータ管理体制を構築する必要がある - 2)生理のトラッキングとリスクへの理解を広げる
全世代が生理のトラッキングデータのリスクについて学べるようにし、市民団体は啓発資料を整備する。学校教育でも生理とプライバシーの関係を教えることが重要である - 3)公的アプリの開発を促進
英国の国民保険サービスNHSが信頼性の高い生理トラッキングアプリを開発すれば、プライバシーへの懸念を軽減し、ユーザーの主体性も高まる。営利目的ではない点も信頼構築につながる - 4)生理のデータの保護を強化
生理や妊娠に関するアプリのデータを機密性の高い医療情報として扱うべき。英国とEUでは既に保護規定があるため、規制の厳格な運用が求められる - 5)CTAのデータ管理と設計の改善を
企業はユーザーに向けて、一括同意でなく段階的な選択肢を設けるなど、わかりやすく透明性の高いプライバシー設定と安全な設計を行うことが望ましい - 6)CTAの透明性と選択肢の充実を
データの活用方法を明確にし、妊娠に関心がない人向けの設定も提供することで、多様なユーザーが安心して利用できる環境を整えるべきである
今回の報告書ではCTAにおける適切なデータ管理のあり方を提言しているが、健康・医療情報のデジタル化が進む中、各ヘルスケア系アプリにおいても、ガバナンスの改善を求める声が強まりそうだ。
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