今時の女性ヘルスケアマーケティングがわかる、おすすめの「ジェンダー」書籍3選

女性ヘルスケア領域のマーケット情報を日々、収集・分析するウーマンズラボ編集部が厳選。読者の皆さんへ、おすすめ書籍を紹介するコーナー。今回のテーマは「ジェンダー」。2020年代の女性マーケティングを理解できる3冊をピックアップ。

特にここ1〜2年で国内外で急速に高まっているフェミニズムは、女性特有の身体・健康における権利(いわゆるSRHR)向上と密接に関わっており、このムーブメントがフェムテックや女性の健康ブームを双方向で押し上げている。加えてSDGsの目標達成年である2030年も近づき、この流れは勢いを増す気配。今や女性ヘルスケアマーケティングにおいて、ジェンダー論やフェミニズムの基礎知識は必要不可欠だ。

今時の女性たちに受け入れられる広告コピーや世界観の感覚を掴みたい人、プロモーションで炎上を起こさないために心得ておきたいNG概念を知りたい人、女性マーケティングの土台をジェンダー論やフェミニズムの視点から学びたい人向け。編集部も重宝しているお役立ち書籍!

女性学・男性学 〜ジェンダー論入門〜

男性学とセットで女性学の基本を学べるジェンダー論の入門書。女性特有の思考、性差別問題、性別役割分業やステレオタイプの背景など、女性を取り巻く事象や社会問題を、男女をトータルに論じながら解説しているので、女性学のみを学ぶよりも理解しやすく納得もできる。

かたいトピックもあるが、「男の子の勘違い/女の子の思い込み」「恋愛の力関係」「メディアが作るジェンダー意識」「パートタイム労働とジェンダー」など、興味深い視点からジェンダーが語られているので、取っ付きにくさは無くサクサク読める。

後述の2冊とは異なり国内の話がメインなので、ジェンダーの歴史や国際比較といった大局的なことよりも先に、まずは日本の現状を把握してすぐにマーケティングに落とし込みたい人は、こちらから読むのがおすすめ。

 

フェミニズム大図鑑

女性の健康を語る上でフェミニズムは、もはや切っても切れない概念。時間をかけて少しずつ読み進めて欲しいのがこちらの書籍。

フェミニズムのこれまでの歴史をたどった図鑑で、フェミニズム的思想の表明が始まった1700年代からMeToo運動が起きた現代までの、フェミニズムに関する様々な史実がまとめられている。

フェミニズムが誕生した当初、女性は男性に従うべきで、女性は男性よりも知的・社会的・文化的レベルにおいて劣っていると見なされており、この社会通念に対抗して政治的権利や教育を受ける権利、男女間の賃金格差、女性の社会的地位など、様々な権利向上を目指す運動が何世紀にもわたり各国で起きてきた。女性が自分自身の性・生殖・健康のことを決定できる「からだの自己決定権」を求める声もその一つで、長い間女性たちが闘ってきた重いテーマだ。この問題は今なお世界各国で続いており、人工妊娠中絶の是非を巡る問題、児童婚や女性器切除の根絶、緊急避妊薬のアクセス改善などがその例。

本書の中で特にヘルスケア業界のビジネスパーソンに読んでほしいのは「女性の健康は女性が定義するべきだ、女性中心のヘルスケア(p.148)」と「女性の自由にかかわる問題、合法的な妊娠中絶の権利(p.156)」のセクションだが、それ以外にも各セクションで、女性の健康に関するフェミニズムの史実が掲載されているので、ぜひチェックを。

この書籍を読み終えると、根強く続く男性優位社会での女性たちの生きづらさや、女性たちがジェンダーに関わる話題(女性蔑視発言や、ジェンダー問題に関わる企業のCM炎上など)に敏感になる理由、女性たちが自分の健康の権利を主張する理由、フェムテックブームとフェミニズムが密接に関わっている理由などをよく理解できる。「第1波〜第3フェミニズム」「エンパワメント」「男性中心主義」「ジェンダー・フルイド」「生物学的決定論」「性と生殖の自由」など、フェミニズムに関するキーワードの用語解説付き。

 

女性の世界地図

各国の女性がどのような差別を受け、抑圧され、生活し、どのような健康状態にあるのか?など、様々な視点から女性の”現状”を国際比較で見ることができる図版。前述の「フェミニズム大図鑑」は歴史を学びたい人向けで、こちらの「女性の世界地図」は、今現在の女性たちの状況を知りたい人向け。

「識字率」「名誉殺人」「児童労働」など、日本市場でのマーケティングからは遠いトピックも含んでいるが、「ソーシャルメディアと女性」「オンラインハラスメント」「男女間のデジタルデバイド」「男女間の賃金格差」「美容整形の国際比較」など、現代ならではの分析と考察も。

国際比較で見ることで、日本が抱えるジェンダー問題がより浮き彫りになり、また、様々な場面にはびこる男女格差を見極める目を養うことができる。女性のヘルスケア関連の国際比較も豊富(以下一例)。全ページがインフォグラフィックでまとめられているので、気楽に読み込める(ただし、こちらの書籍は和訳が難解でわかりづらい。”読んで”理解するのでは無く、インフォグラフィックを”見て”理解するのがおすすめ)。

  • 健康・衛生(乳がん/HIV/結核/マラリア/飲料水/トイレに関する活動/公害)
  • 出産にまつわる権利(初産年齢/避妊法の使用/妊産婦死亡率/中絶に関する法律/男児選好)
  • 身体のポリティクス(スポーツ/美/美容整形/女性器切除/セックス・ツーリズム)
  • 仕事(典型的な女性の職業・男性の職業、労働力における女性の割合、収入格差、父母それぞれの育休・産休、家事・育児労働)

 

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