健常女性だけが世界の主役じゃない! 色んなボディポジティブを採用した有名企業の最新事例5選

世界的なダイバーシティとインクルージョンの流れで、近年になり急速に変化する”美しさ”の定義。ぽっちゃり体型、中高年齢層、グレイヘア、体毛、義足、病気、障がいなど、以前なら”日陰”に追いやられてきた女性やコンプレックスに感じてきた部分が、今は世界中でスポットライトを浴びている。時代で人々の価値観は本当に変わるものだ。今や多様な人種・年齢・ルックスの女性を起用する広告やwebサイトの方が、むしろ“今どき感”を感じさせ女性たちの心をときめかせている。「健常かつ容姿がパーフェクトな女性だけが世界の主役じゃない!」女性たちのそんな価値観の変革期をリードする有名企業の事例を見てみよう。

ステレオタイプからの脱却、ボディポジティブ

ボディポジティブとは?

多様な人種・年齢・ルックスの女性が支持されるようになったのは、「ありのままの自分の体型や外見を受容する」というボディポジティブの世界的ムーブメントが背景にある。

これまで社会・企業・男性が定義してきた美の基準と自分を比較するのをやめよう、という運動で、美しさのステレオタイプから脱却することで、ネガティブな身体イメージに苦しむことから解放され、心理的幸福の向上を図る。これがムーブメントが目指していることだ(※例:スリムな体型、若さ、色白、豊かな胸・ヒップ、細いウエスト、セルライトのない滑らかな肌、ツヤツヤしたボリューミーな毛髪など)。

この言葉が日本の各メディアで取り上げられるようになったのはここ1〜2年ほどだが、欧米では2012年に始まったと見られており、以降、SNSで瞬く間に世界で広がった。以下図は、ネット上の「body positive」の検索ボリュームの推移だが、これを見ても分かる通り、今なお世界中で支持され続けている概念だ。

【出典】Google Trend

【出典】Google Trend

インスタグラムでの投稿数も多く、「#bodypositive」の投稿は1581万件、略語の「#bopo」についても127万件も。様々な体型・ルックス・年齢の女性が、笑顔で自身の姿を披露している。

ボディポジティブ、なぜ支持される?

ボディポジティブの概念が多くの女性に支持されているのは、女性たちの自己肯定感が関係している。

ファッションモデルや女優、ハリウッドセレブ、企業の広告モデルなど、これまで世界で注目されてきた女性たちは一律、スリム・長身・豊かな毛髪・形の良いヒップ・適度に鍛えられた平たいお腹・端正な顔立ち・若い・完璧な肌質など、まるでかつてのバービー人形を再現したような完璧なルックスの持ち主たちだ(現在のバービーは、車椅子に乗っていたり有色や義足など、様々なタイプが発売されている)。

こういったパーフェクトな女性を見て、活力を得たり自分の外見磨きの励みにする女性は多い。だからファションショーなどのイベントや、女優やモデルなどのインフルエンサーは高い人気を誇っている。だが一方で、体質・元々の体格や骨格・病気・性格・年齢など様々な理由から、一般的に言われている美しさに到達できずに苦痛を感じている女性も大勢いる。

特に若い女性に顕著で、その代表的な問題が、無理なダイエットを試みた結果陥ってしまう摂食障害だ。子どもなら外見を理由にクラスでいじめの対象になることもある。内向的な性格になり、人生のあらゆる局面で積極的に努力することを放棄する女性もいる。

自分は女性として劣っているー。こんな風に自己肯定感が下がるだけで、女性の人生の幸福度や充実度は大きく低下するのだ。

ボディポジティブは、こういったステレオタイプによる苦しみから自己を解放し、ありのままの自分の姿を受容することで幸せになろう、という考え方なのだ。ネットやSNSの普及で他人と自分を比較する機会が増えたことも、この概念が生まれた背景と言えるだろう。

ちなみに自分の外見を肯定できない傾向が強いのは日本人で、国際比較調査で明らかになっている。「自分の容姿に誇りを持っている」と回答した日本人は3割ほどで、先進7カ国の中で最低だった内閣府,我が国と諸外国の若者の意識に関する調査,H30

【出典】内閣府

【出典】内閣府

 

ボディポジティブを牽引、有名企業の事例5選

ボディポジティブのムーブメント推進に特に積極的なのは、グローバル系美容企業、ファッション業界、SDGs推進に積極的な企業、女性起業家によるスタートアップなどだ。事例を見ると、いろんな形のボディポジティブ表現があることがわかるはず。

プラスサイズモデルを起用(Victoria’s Secret)

ボディポジティブの最もわかりやすい事例が、いわゆるプラスサイズモデルの台頭。ぽっちゃり体型のモデルを積極的に起用する企業が増え、もはや海外では、ぽっちゃり女性のモデルをショッピングサイトや広告で見かけるのは珍しいことではなくなった。

世界的人気を誇る米国の下着ブランド「ヴィクトリアズ・シークレット」もその一つ。一時期はプラスサイズモデルを起用しないことを宣言したことで、女性たちの怒りを買い大規模な顧客離れが起きたが、その後に方針を転換。現在のショッピングサイトやインスタグラムには、スリムな女性だけでなく、ぽっちゃり女性も多く登場している。

 

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セルライトを隠さない(Rael)

こちらは世界的な有名企業ではないが、米国で話題のフェムテック企業の事例を一つ紹介したい。Raelはタンポンや布ナプキンなどの生理ケア商品やスキンケア商品を開発・販売する、韓国女性が起業したスタートアップ。こちらもボディポジティブ推進の企業理念が伺える事例だ。

生理用品を販売していることもあり、同社のホームページやインスタグラムには下着姿の女性が多く登場するのだが、その女性の臀部や太ももにはくっきりとセルライトが見える。

 

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一般的にセルライトは、女性たちの間で「美しくないもの」「隠すべきもの」「悪者」と認知されているので、エステサロンや美容クリニック、あるいはセルライトのケア商品を扱う企業ではない限り、セルライトのある女性をあえてモデルに起用することはまずない。

だがRaelはそんな従来の常識はなんのその。セルライトのある女性をサイトのトップページに堂々と起用している。パンティの上にはドシッとしたお腹のお肉だって乗っている。従来であれば間違いなく企業が起用しないルックスだ。しかし、そもそも現実の女性は今も昔もリアルはこんな感じで、多くの女性にとって“普通”のこと。セルライトもあるし、お腹だって出ている。同社の起用したモデルに共感し好意を寄せる女性は多いだろう。

ダウン症のある女性を起用(GUCCI)(ELLE)

<GUCCI>

ファッションブランドであるグッチのビューティライン(グッチビューティ)も、ステレオタイプから脱却し様々な美の発信を始めている。同社は昨年、ダウン症のあるエリー・ゴールドスタインさん(英)をイタリア版VOGUEに掲載するマスカラ「L’Obscur」のモデルに起用した。

反響は大きく、グッチビューティのインスタグラムに投稿された彼女の写真は、11万の「いいね」を獲得している(2021年5月時点)。同アカウントの他投稿の「いいね」は大体が数千〜数万程度なので、いかに多くの人の共感を呼んだのかを想像できる。

 

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<ELLE>

彼女を起用したのはグッチだけではない。世界的な女性向けファッション誌ELLE(メキシコ版)もその一つ。今年2月号の表紙を飾ったのは彼女だ。

 

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歯並びの悪い口元を主役に(GUCCI)

グッチビューティからもう一つ、事例を紹介したい。同社は昨年、口紅のキャンペーンで不完全な歯並びのモデルを起用した。口紅のモデルと言えば、色・形・並びの三拍子が完璧に揃った女性の口元が当たり前だが、グッチビューティが新たに起用したのは、いわゆる“すきっ歯”。実に新しい時代の幕開けを感じさせるクリエィティブだ。

 

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義足女性をアンバサダーに(資生堂)

脚を失ったアーティストやモデルも、健常女性と同等に活躍している。その一人が、今世界で注目を集めている義足のモデル、ローレン・ワッサーさん(米)。彼女は生理用品のタンポンを使用したことでトキシックショック症候群を発症し両足を切断したが、そんな自分の姿を赤裸々にSNSで発信し、今なおモデルとして活躍している。

そんな彼女の、障壁の限界を超えた美しさに共感したのが資生堂。2020年、彼女をキャンペーンアンバサダーに起用した。

 

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新時代の美の基準は、“ありのまま”

今回ピックアップした企業の最新事例を見ると、かつての美の基準を全て兼ね揃えた女性だけを起用し続けることは、どことなく“時代遅れ”な気がしてくるだろう。どの会社も一律“バービー”のような女性を広告などに起用してきたこれまでの一般的なやり方は、よくよく考えると差別化に乏しく、企業のクリエィティブとしても“無個性”だ。

そんなことが言えるのは、ダイバーシティが支持される時代になったことや、多様な美を表現する事例が出てきたからなのだが、今後、多様な美を表現した企業が女性たちに支持される時代になることは間違いない。体型・ルックス・肌色・肌質・病気や障害の有無で世界の主役を決める時代は終焉を迎え、従来の美の基準を満たしている女性が活躍することもあれば、多様なルックスの女性が活躍することもある。それがスタンダードになるだろう。

どんな女性のどんな”リアルな姿”に着目し、それを、どんな形で商品・サービスと結びつけて自社を魅力的に表現するのか?ここが、これからの各社の腕の見せ所だ。

 

 

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