産後うつで女性の心疾患リスクが上昇
産後うつと診断された女性は、他に健康上の問題がなくても、心筋梗塞や脳卒中、心不全を発症するリスクが高い可能性があることが、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のPunag Divanji氏らによる研究から明らかになった。研究の詳細は米国心臓協会年次集会(AHA 2018、11月10~12日、米シカゴ)で発表された。
近年ではうつ病があると心血管疾患の発症につながりやすいとするエビデンスが増えている。UCSFの心臓専門医であるDivanji氏らは今回、産後うつと心臓病や脳卒中発症との関連を調べるため、心血管疾患または慢性的な抑うつ症状の既往がないカリフォルニア州に在住の女性180万人を対象に調査を実施した。対象とした女性のうち4万276人が産後うつと診断された。
その結果、産後うつと診断された女性は、出産から5年以内に心筋梗塞や脳卒中、心不全などの心血管疾患を発症するリスクが約70%高いことが分かった。糖尿病や高血圧、妊娠高血圧症候群のほか、喫煙や飲酒の習慣、健康保険への加入状況などの他のリスク因子を考慮しても同様の結果が得られた。
これらの結果を受け、Divanji氏は、産後うつを来した女性で心血管疾患リスクが上昇する原因は明らかではないが、その理由の一つとしてエストロゲンとプロゲステロンという女性ホルモンの関与を指摘している。同氏によれば、これらのホルモン値は妊娠中に急激に上昇するが、産後には大きく低下する。産後うつとなる女性はそうでない女性に比べて、出産後のホルモンの低下幅がより大きい可能性があるという。しかし、「これらの因果関係を明らかにするには、さらに研究を重ねる必要がある」と同氏は付け加えている。
専門家の一人で米クリーブランド・クリニック女性心臓病学センター長のLeslie Cho氏も、今回の結果の背景にある機序を明らかにするにはさらに研究が必要だと述べている。同氏によれば、抑うつ状態になると食生活が乱れ、飲酒量が増え、運動しなくなるなど不健康な生活習慣に陥りやすくなるという。また、これまでの研究でうつ病は高血圧などの心血管疾患に悪影響を及ぼすほか、血小板反応性などと関連することも報告されている。
Cho氏は、心疾患は女性の主要な死亡原因であることから、女性は年齢にかかわらず心血管リスクを考慮することが望ましいとしている。また、Divanji氏は、今回の研究によって、あらゆるタイプのうつ病が心血管疾患と関連することに理解が深まることが期待されるとし、「現時点では警告するほどのエビデンスレベルではないが、患者を診察する際には、うつ病がその後の心血管疾患リスクに重要な役割を担うことを認識すべきだろう」と述べている。(American Heart Association 2018年11月5日)Copyright is owned or held by the American Heart Association, Inc., and all rights are reserved. If you have questions or comments about this story, please email editor@heart.org.
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