災害関連死、約8割が3カ月以内に死亡 女性の死亡事例集 内閣府

地震による建物の倒壊や津波などによる直接的原因ではなく、災害によるケガの悪化や避難生活における身体的負担など間接的な原因で亡くなる「災害関連死」。能登半島地震では今月14日時点で15人が災害関連死と認定された。内閣府が過去の災害を分析した調査では、東日本大震災と熊本地震では、災害関連死の8割が3カ月以内に亡くなっていた。

熊本地震の災害関連死、死因と原因

2016年の熊本地震では、犠牲者273人のうち80%以上の男女218人が「災害関連死」で、そのうち8割が3ヶ月以内に亡くなった(1週間以内24%,1カ月以内57%,3カ月以内81%)。死亡した人の8割が70歳以上の高齢者で、死因の最多は肺炎や気管支炎などの呼吸器系疾患。原因の最多は、地震のショックや余震への恐怖による心身の負担だった。

■死因
1.呼吸器系の疾患(肺炎、気管支炎など)…28.9%
2.循環器系の疾患(心不全、くも膜下出血など) …27.5%
3.内因性の急死、突然死等…13.3%
4.その他(アナフィラキシーショック、出血性ショックなど) …10.1%
5.自殺…8.7%
6.感染症(敗血症など)…6.4%
7.腎尿路生殖器系疾患(腎不全など)…3.2%
8.消化器系疾患(肝不全など)…1.8%

■原因
1.地震のショック、余震への恐怖による肉体的・精神的負担…40.0%
2.避難生活の肉体的・精神的負担…28.9%
3.医療機関の機能停止等(転院を含む)による初期治療の遅れ(既往症の悪化や疾病の発症を含む)…16.4%
4.その他(倒壊した家屋による外傷など)…5.4%
5.電気、ガス、水道等の途絶による肉体的・精神的負担…5.0%
6.社会福祉施設等の介護機能の低下 …3.2%
7.交通事情等による治療の遅れ…0.7%
8.多量の塵灰の吸引…0.4%

 

女性の災害関連死、事例

女性の災害関連死の事例は以下。被災による心身の負担で持病が悪化したことや車中泊、自殺など、背景は多様だ引用:内閣府「災害関連死事例集」

右視床出血で1週間以内に死亡(80代の女性)
心不全、高血圧、腎機能低下の既往があったが、服薬により支障なく生活していた。地震で寝室の壁が崩れ、近くの小学校へ避難する。避難所で倒れているところを発見され、救急搬送されるが右視床出血による死亡が確認された。被災による身体的・精神的負担が持病の高血圧を悪化させ視床出血による死亡につながったとして、死亡と災害との間に相当因果関係があると認められた。

急性呼吸不全で1か月以内に死亡(90代女性)
発災の半年前から慢性腎不全などで入院していた。発災前は3食の流動食を摂ることができていた。入院していた病院で被災。発災を契機に食事が摂れなくなり、家族の促しや看護師がスプーンで食べさせようとしても食事を摂ることができず、点滴により栄養補給を行う状態となった。発災から約半月後に、急性呼吸不全のため死亡。地震のショックや余震への恐怖が食欲を減退させて、体力低下を招き、持病の慢性腎不全が増悪し、急性呼吸不全で死に至ったものと推認されることから、死亡と災害との間に相当因果関係があると認められた。

急性心不全で3か月以内に死亡(100歳代女性)
発災前は、訪問看護などの支援を受けながら車いすでの散歩やテレビ視聴を楽しみ、自宅で平穏に生活していた。自宅が被災したため、自宅の駐車場で車中泊する。再び強い地震が起きたため近所の倉庫へ避難し、5日間車中泊を続けた。5日間の車中泊後、受入れ先の病院が見つかり入院する。肺炎、下肢静脈血栓、蜂窩織炎、慢性心不全増悪があったが、抗生剤の投与で一時的に改善する。しかし、心不全や全身状態の不良までは改善できなかった。入院から約20日後、発熱があり肺炎と心不全は悪化した。その1か月後、急性心不全で死亡した。地震による避難行動等が身体に負担を与え心不全で死亡したものと推認されることから、死亡と災害との間に相当因果関係があると認められた。

多発外傷で6か月以内に死亡(70代女性)
発災前は自宅で元気に生活していた。自宅で被災し、避難所に1週間程度避難していた。その後、自宅に戻るが、屋根に応急的に張ったブルーシートに雨が当たる音をとても嫌がっていた。梅雨時に入ると特に元気がなくなり、不眠を訴え、精神安定剤の処方や、カウンセリングを受け、病院でも家の修理が終わらない不満を度々吐露した。被災から約4か月半後には、友人が訪ねてきても会おうともしなくなった。被災から約5か月後の明け方、夫が気付いた時には家に姿はなく、自宅近くで死亡しているのを発見された。地震や避難生活による身体的・精神的負担がうつ病を発症させて、自殺に至ったものと推認されるため、死亡と災害との間に相当因果関係があると認められた。

脳挫傷で3年後に死亡(60代女性)
夫と子ども2人の4人で一戸建ての自宅で生活していた。持病もなく、家族間、近隣住民との関係も良好であった。発災時は自宅におり、夫とともに高台に避難する。避難した高台から自宅が全壊流失する様子を目撃する。その後、避難所での生活を送るが、特に心身の不調を訴えることはなかった。被災から約4か月後に、市内の仮設住宅に入居する。直後から、隣室の人が歩く音や生活音を気にするようになり、幻聴や妄想を訴えるようになる。市内の別の仮設住宅に転居し、一旦は幻聴等の訴えはなくなった。被災から2年後に心療内科を受診し、幻覚・妄想状態、不安、抑うつ状態がある旨の診断を受ける。被災から4年8か月後、市内の災害公営住宅(8階)に転居する。精神状態はだいぶ落ち着いたが、通院、投薬治療は継続。転居から1年10か月後頃から不眠、食欲不振を訴えるようになり、「ベランダから飛び降りたくなることがある」旨の言動もみられる。転居の2年後に、自宅ベランダから飛び降り、死亡。災害による生活環境の激変が身体的・精神的負担となり、妄想性障害を発症した結果、自殺に至ったものと推認され、かつ、被災以外の心理的負荷及び個体側要因が特に認められないことから、死亡と災害との間に相当因果関係があると認められた。

 

 

【編集部おすすめ記事】
女性など要配慮者向け製品、アイテム別の備蓄率 自治体への調査で明らかに
被災者の心の動き「ハネムーン期」から「幻滅期」へ、どう支援する? ガイドライン
災害経験のある女性に聞いた、災害時に最も困ったこと(24〜59歳)
避難生活で抜け落ちる女性視点、どんな配慮が必要? 防災・復興ガイドライン
【来場登録受付中!!】第2回 ジェンダード・イノベーションEXPO

PAGE TOP
×