肥満が脳の萎縮と関連する可能性

肥満の人は、特に腹部肥満であると脳が萎縮する傾向がみられることが、英ラフバラー大学のMark Hamer氏らの研究で明らかになった。9,600人を超える英国人を対象に分析した結果、適正体重の人に比べて、肥満の人は脳の灰白質の容積が小さいことが分かった。詳細は「Neurology19日オンライン版に掲載された。

これまでの研究で、脳の灰白質が萎縮すると認知症の発症リスクが増大する可能性が示唆されている。Hamer氏らは今回、英国の大規模なコホート研究である英国バイオバンク(UK Biobank)に参加した男女9,652人(平均年齢55.4歳、男性47.9%)を対象に、BMIおよびウエスト・ヒップ比、体脂肪量とMRIで評価した脳容積との関連を調べる横断研究を実施した。参加者のうち19%に肥満がみられた。

その結果、BMIおよびウエスト・ヒップ比、体脂肪量はいずれも、増大するほど灰白質の容積が減少することが分かった。特に、BMI30以上で腹部肥満(ウエスト・ヒップ比が男性で0.90、女性で0.85超)があると、適正体重の人に比べて灰白質の容積が最も小さいことが明らかになった。

さらに、肥満は脳の灰白質以外の部位の萎縮とも関連し、運動機能や動機付けなどを制御する部位も含まれていた。なお、灰白質には神経細胞の中心である細胞体が集まっている一方、白質は神経細胞体がなく、神経線維が多くみられるという特徴を持つ。

しかし、Hamer氏らは、今回の研究はこれらの関連を示したに過ぎず、肥満が灰白質の萎縮の原因であることを証明するものではないと強調している。同氏は「今回は長期的な追跡は行っておらず、ある時点の灰白質の容積を調べたに過ぎない。そのため、この結果が臨床的に意味があるのかどうかを結論づけるのは難しい」と説明している。

また、肥満と認知症の関連は多くの研究で検討されているが、結果は一致していない。専門家の一人で米ボストン大学神経学のClaudia Satizabal氏は「認知症になる人は、発症の510年前から体重が減り始めることがあり、これが肥満と認知症の関連を複雑にしている可能性がある」と指摘する。同氏は、Hamer氏らの研究を優れたものと評価しつつ、「認知症を発症するまでには長い年月を経ることが多い。この研究は、その途中のある時点で生じる得る変化を示したものだ」と述べている。

では、なぜ肥満は脳の萎縮と関連するのだろうか。Hamer氏は、肥満との合併頻度が高い高血圧や2型糖尿病が心臓や血管を傷つけ、結果的に脳の血流に影響するという仮説を立てた。しかし、今回の研究では、糖尿病や高血圧の有無に加えて、喫煙や飲酒、運動などの生活習慣を考慮して解析しても、肥満と脳萎縮の関連が認められており、これらの関連には他の因子が影響している可能性が示されたという

一方、Satizabal氏は、過剰に蓄積された脂肪組織自体にも原因があるとしている。脂肪組織は、脳機能に影響する可能性があるホルモンや代謝産物を分泌することが、複数の研究で示されている。

現時点では、肥満が認知症のリスク因子であるかどうかは明らかになっていないが、Satizabal氏は「これらの関連を示すエビデンスが集積しつつある」と述べている。Hamer氏も「肥満は多くの疾患のリスク因子であることは明らかだ。健康を維持するには、適正体重を保つことが重要だ」と助言している。HealthDay News 201919日)Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.

 

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