4月に始まるHPV検査、メリット・デメリットなど最新情報をまとめたセミナー動画を公開 日本産科婦人科学会
日本産科婦人科学会は今月、子宮頸がん検診に関するセミナー動画をHPで公開した。約9年間続いたHPVワクチン接種の積極的勧奨停止が終わり2022年に積極的勧奨を再開したものの、ワクチン接種率が依然低迷していることや、自治体が実施する子宮頸がん検診で4月から新たに「HPV検査」が導入されることなどから、子宮頸がん検診やHPVワクチンに関する最新情報をまとめた。本稿では動画全6本のうち、5本を概説。動画は2025年3月末まで無料で視聴可。
HPVの感染とワクチンの働き
- 女性の約100%が一生に一度、HPVに感染するリスクがある
- 15歳以上の男性の約3人に1人がHPVに感染
- 子宮頸がんの発症は年間約1万人、死亡者数は約3千人
- HPVは子宮頸がんだけでなく、口腔、喉頭、咽頭などの「頭頚部がん」とも関連
- 世界では、毎年63万例がHPVに起因するがんを発症(全がんのうち4.5%)
- 日本は、世界と比べてHPVワクチン接種が進んでいないため、HPVに起因するがんの発症率が増加傾向
セミナー動画
HPV ワクチン接種の勧奨差し控えがもたらしたこと
- 女子のHPVワクチン接種率は、1995年~1999年生まれは7割を超えるが、2000年~2010年生まれは1~3割程度
- 身体の不調等の副反応が原因で2013年~2021年までHPVワクチン接種の積極的勧奨が停止されたが、2022年に再開
- 積極的勧奨が再開され、キャッチアップ接種も開始されたものの、ワクチン接種率は伸び悩んでいる
- 積極的勧奨が停止されていた世代の接種率がこのまま上昇しなければ、感染予防効果の高い9価ワクチンを接種したとしても、接種率が高かった世代に比べて、子宮頸がんの罹患リスクが高くなる
- ワクチン接種だけでなく、同時に子宮頸がん検診の受診率向上の取組みが必要
セミナー動画
HPVワクチンの有効性と安全性
- 国外・国内からHPVワクチンの有効性と安全性が報告されている
- スウェーデンでは、4価ワクチン接種によって子宮頸がんリスクを10~16歳の定期接種で88%、17~30歳のキャッチアップ接種で53%下げる効果があると報告された
- 同様にデンマークやインランドでも、定期接種で子宮頸がんを約9割減らすことができると報告されている
- WHOは、15歳までの女子接種率を2030年までに90%にすることを目標としている
セミナー動画
子宮頸がん検診に導入される「HPV検査」
- 自治体の行う子宮頸がん検診に4月から「HPV検査」が導入される。ただし導入有無は自治体の判断による
- HPV検査の対象は、30歳以上の女性。20~30歳の女性は、今まで通り細胞診を受ける
- HPV検査の良い点は、HPV検査で陰性と判定された場合、検診間隔を現行の2年から5年に延長できること
- HPV検査の結果、陽性と判定された場合は細胞診を行い細胞の異常を調べる(同じ検体を使用するため再検査は不要)。なお、異常がなくても子宮頸がん発症のリスクはあるため、1年後に再び「HPV検査」を行う
- HPV検査を実施する場合は、受診者の結果によってその後のフローが異なってくるため、自治体の準備と対応が必要
セミナー動画
HPV検査の課題
- メリットは、子宮頸がん検診の感度の上昇、検診間隔の延長など
- デメリットは、治療の必要のない前がん病変を検出してしまう「偽陽性」の増加など
セミナー動画
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