自治体の子宮がん検診に「HPV検査」導入 30〜60歳女性の早期発見・受診率向上へ 厚労省
厚労省は今月18日、自治体が実施する子宮頸がん検診に「HPV検査」を導入すると発表した(厚労省「第40回がん検診のあり方に関する検討会」)。導入は自治体の判断になるが、がん検診の指針に盛り込むことで「HPV検査」を推進するのが狙い。2024年4月に開始する。対象は、30~60歳の女性(20代は子宮頸がんの罹患率が低いため対象外)。
子宮頸がんの主な原因は、性交渉によるヒトパピローマウイルス=HPVの感染とされており、HPVへ感染後、がんに進行するのはおよそ5~10年かかるといわれている。現在、20歳以上に2年に1回推奨している子宮頸がん検診は子宮頚部の細胞を採取する「細胞診」で、子宮頸がんのがん細胞を発見する。4月に導入が始まる「HPV検査」は、がんの原因となるHPVへの感染有無を確認できるため、子宮頸がんの早期発見・早期治療に繋がる。
自治体が「HPV検査」を導入する場合、これまで通り20歳以上の女性には「細胞診(2年に1回)」を行い、30~60歳の女性に「HPV検査(5年に1回)」を適用する。「HPV検査」の結果、陽性と判定された場合は「細胞診」を行い細胞の異常を調べる(同じ検体を使用するため再検査は不要)。異常がなくても子宮頸がん発症のリスクはあるため、1年後に再び「HPV検査」を行う。
市区町村の13.8%にあたる238の自治体がすでに「HPV検査」を実施しており(厚労省「宮頸がん検診へのHPV検査単独法導入について」)、佐賀県では2019年に、子宮頸がん検診に「HPV検査」を初めて全県下で無料導入した。同県は子宮頸がんの死亡率が全国ワースト1で(2017年時点)、また、早期がんよりも進行がんが多かったことから、早期発見のため導入を決めた。罹患者は30〜44歳に多いことから、同年齢を対象に細胞診と併用で「HPV検査」を行っている。今後の各自治体での導入にあたっては「研修の受講」や「住民や対象者への啓発」などが要件となる。
国内の子宮頸がんの罹患数は年間で約11,000例で、約3,000人が死亡している。罹患リスクが急激に高まるのは20代で、ピークは40代。がん検診受診率は43.6%で半数に達しておらず、受診率が60〜80%の欧米と比べると日本は未だ低水準だ(詳細:子宮頸がんの状況 〜罹患率・死亡率・生存率〜)。がん検診を受けない理由は「受ける時間がないから(28.9%)」が最多で、今回の「HPV検査」導入で受診回数が2年に1回から5年に1回に減ることで、負担軽減による受診率向上を期待できるとしている。
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