女性特有の不調にアプリ・運動・健康食品… 根拠はあるのか? 非薬物療法57項目のエビデンスレベルを一覧化

女性特有の不調へのアプローチとして、ヨガや運動、サプリメント、アプリ、認知行動療法など、さまざまな手法の活用が広がっている。一方で、どの手法にどの程度の根拠があるのかについては、まだ十分に整理されていない。ユーザーだけでなく企業や医療従事者にとっても、各手法の有効性をどのように評価すべきか判断は難しいところだ。そこで参考になるのが、AMED研究班が今年3月に公開した指針「働く女性における月経困難症・月経前症候群・ 更年期障害予防のための 非薬物的ヘルスケアサービスガイド」。働く女性を主としたユーザー、健康経営を行う企業、自治体、商品・サービスの提供事業者に向けて作成したもので、婦人科3疾患を対象に、さまざまな非薬物療法の有効性を国内外の研究をもとに評価している。本記事では、その中で評価された各手法のエビデンスレベルを疾患別に一覧で整理。事業への活用ヒントもまとめた。

婦人科3疾患、非薬物療法に根拠はあるのか

月経困難症・PMS・更年期障害のエビデンスレベルを整理

月経困難症、PMS・PMDD、更年期障害は、多くの女性が経験する健康課題だ。軽症の場合は医療機関を受診せず、運動やヨガ、サプリメント、アプリなどを活用したセルフケアで対応している女性も少なくない。近年はフェムテックの広がりもありヘルスケアサービスの選択肢は急速に増えているが、有効性や安全性について十分な情報が整理されているとは言い難い。ユーザーは何を基準に選べばよいのか判断しづらく、企業側も自社の商品・サービスにどの程度の科学的根拠(エビデンス)があるのか把握しにくい。また医療従事者も、患者などから相談を受けた際に客観的な根拠を示しにくい。

こうした課題を受けAMED研究班は、婦人科3疾患(月経困難症、PMS・PMDD、更年期障害)に対する非薬物療法の有効性について、国内外の研究を体系的にレビューし、指針を作成した。評価対象は幅広く、運動療法、温熱療法、ヨガ、鍼灸、指圧、認知行動療法、サプリメント、アプリなどのデジタル介入、マインドフルネス、食生活改善など多数。

なお本指針では、発症後の症状改善や再発予防など、二次予防と三次予防に関するエビデンスを中心に整理している。

エビデンスレベルの見方

本指針では、各手法をエビデンスレベルA〜Dまで6段階で評価している(※)。エビデンスレベルとは、各手法の有効性を支持する科学的根拠がどの程度蓄積されているかを示す指標のこと。Aに近いほど有効性を支持する根拠が充実しており、Dに近いほど根拠は限定的となる。

これは、効果の大きさや各手法同士の優劣を示すものではないため、見方には注意が必要だ。例えば、エビデンスレベルBの手法がエビデンスレベルCの手法より高い効果を持つことを意味するわけではない。あくまで「有効性を支持する根拠の確からしさ」に違いがあることを示している。

なお研究班は、「非薬物療法の研究は介入方法や対象者、評価方法のばらつきが大きいため、医薬品の臨床試験で用いられるエビデンスレベルと同列には扱えない」としている。そのため本一覧は、各手法の優劣を判断するためではなく、どれに比較的強い根拠が示されているのかを把握するための参考資料として活用したい。

(※)各エビデンスレベルの判定基準
・A :メタアナリシス(RCTのみ)・複数の質の高いRCTで明確に実証されたもの
・A−:メタアナリシス・システマティックレビューはあるが、解析に含まれた試験の異質性が高い、あるいはRCT以外の試験のメタアナリシスが含まれる
・B:複数のRCTまたは大規模な前向き臨床試験で実証されたもの。RCTのメタアナリシスでも、組み入れた試験数が少ない、対象例数が少ない、異質性が極めて高い
・B−:複数のRCTではあるが、症例数が少ない、有意差が十分ではないなどの課題がある場合。RCT以外のメタアナリシスで、かつ各試験のレベルが低い場合
・C:複数のRCTでない臨床試験や前向き観察研究、登録研究などで実証されたもの、単独のRCT、規模の小さいRCT
・D:単独の観察試験、後ろ向き観察研究などで示されたもの 

エビデンスレベルは事業にどう活用する?

では、本一覧はどのように活用できるのだろうか。企業にとっては、自社事業にどの程度の科学的根拠があるのかを確認する際の参考資料となる。自社が提供する商品・サービスに用いられている手法がA・B に該当するのであれば、有効性を説明する際の根拠として営業やマーケティングの場面で活用しやすくなるだろう。一方、C・Dに該当する場合は、自社で研究や実証を進めるべきテーマとして検討する材料にできるかもしれない。

医療従事者にとっては、患者などから「ヨガは効果がありますか?」「アプリは使った方がいいですか?」と相談を受けた際に回答する上での参考情報となる。エビデンスレベルが高い手法については、一定の根拠がある選択肢として紹介しやすくなるだろう。一方でエビデンスレベルが低い手法については、その限界や不確実性など、留意事項を添えた説明がしやすくなる。あるいは、エビデンスレベルがより高いものをおすすめする際の、参考情報になるだろう。

 

エビデンスレベル一覧

それでは早速、疾患別のエビデンスレベルを見ていこう。

月経困難症のエビデンスレベル(16項目)

月経困難症(月経痛)では、16の手法が評価された。エビデンスレベルが最も高い「A」と評価されたのは、「指圧」「鍼・電気治療」「灸」「アロマテラピー」「ω3脂肪酸」「ショウガ末」の6種。伝統医療や機能性成分が上位に並び、身体症状にアプローチする手法に比較的強い根拠が示されていた。運動も「A−」と高い評価だった。

A 指圧
鍼治療・電気鍼
アロマテラピー
ω3脂肪酸
ショウガ末
A− 現在・過去の禁煙
運動
ビタミンD
ハーブ(フェンネル)
B 十分な睡眠
毎日の朝食摂取
温熱療法
ヨガ
ハーブ(カモミール)
B− スマホアプリ(生活習慣やセルフケアの情報を提供するもの)

 

PMS・PMDDのエビデンスレベル(17項目)

PMS・PMDDでは、17の手法が評価された。エビデンスレベルが最も高い「A」は禁煙のみ。「A−」にはヨガや有酸素運動、認知行動療法(CBT)、鍼治療が並び、月経困難症と比べると、生活習慣の改善や心理療法など、心身両面からのアプローチに比較的強い根拠が示されていた。

A 禁煙
A− ヨガ
有酸素運動
鍼治療
CBT(認知行動療法)
B お酒の過剰摂取をしない
アロマテラピー
サプリメント(ビタミンB6)
サプリメント(亜鉛)
チェストベリー
ハーブ類(レモンバームやサフラン)
B− マインドフルネス
デジタルデバイスを用いた介入(生理管理、遠隔治療、iCBT、マインドフルネス、運動など)
C 運動習慣
植物性タンパク質や魚
指圧
サプリメント(ビタミンD・カルシウム)

 

更年期障害のエビデンスレベル(24項目)

更年期障害では、3疾患の中で最も多い24の手法が評価された。更年期はホットフラッシュや不眠、気分の落ち込みなど症状が多様なため、対策も運動、心理療法やカウンセリング、サプリメント、ハーブ、デジタル介入まで幅広い。また、機能性成分やサプリメント関連の手法が他の2疾患より多いことも特徴だ。エビデンスレベルが最も高い「A」と評価されたのは、ホットフラッシュに対するエクオールの摂取だった。

A エクオール(ホットフラッシュに対して)
A− 運動療法(血管運動症状、QOL、不眠症状に対して)
ヨガ
マインドフルネス
鍼治療(うつ症状やホットフラッシュに対して)
ブラックコホシュ(ホットフラッシュに対して)
CBT-I(不眠改善のための認知行動療法)
B 食事改善(更年期症状に対して)
禁煙(うつ病に対して)
過剰なアルコール摂取をしない
アロマテラピー(更年期症状、睡眠の質、心理状態に対して)
鍼治療(不眠症に対して)
ブタプラセンタ療法(うつ症状・肩こりの痛み・ホットフラッシュ・不眠などに対して)
大豆イソフラボンの摂取(うつ症状に対して)
ω3脂肪酸の摂取(ホットフラッシュ・抑うつ症状に対して)
セージ(ホットフラッシュに対して)
iCBT(オンラインの認知行動療法)(更年期の心身の症状や睡眠の質に対して)
B− ヒトプラセンタ療法(ホットフラッシュに対して)
ブドウ種子ポリフェノールの摂取(ホットフラッシュ・不眠・身体症状・不安に対して)
ビタミンE(血管運動症状・泌尿生殖器症状に対して)
フェンネル(不安に対して)
電話・対面・グループによるカウンセリング(ホットフラッシュ、心理的・身体的QOL改善に対して)
C セルフケア教育(更年期症状に対して)
大豆イソフラボン(ホットフラッシュに対して)

 

注:本記事はAMED研究班が評価対象とした手法を整理したものであり、婦人科3疾患に対するすべてのセルフケや治療法を網羅したものではない。

 

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