クリニックでの「化粧品」「ボディケア・スキンケア製品」の取り扱い実態は? 全国のクリニック勤務医1,200人に調査
本稿は、医療・ヘルスケアに特化した市場調査会社の株式会社インテージヘルスケアによる寄稿記事です。今回のテーマは、業界で関心が高まっている「医療機関での物品販売」。物品の中でも特に女性ヘルスケア市場と関連が深い「化粧品」「ボディケア/スキンケア製品」に焦点を当てて解説します。
目次
アンケートをもとに市場分析
「化粧品」「ボディケア/スキンケア製品」は、専門店はもちろん一般的なドラッグストアやコンビニエンスストア、アマゾン・楽天・ヤフーのようなECサイトやメーカーサイトなど、さまざまなチャネルを通して購入されています。一方、医療機関でも「化粧品」「ボディケア/スキンケア製品」は販売されており、「ドクターズコスメ」といった呼び方も定着しています。今回は「ドクターズコスメ」を含め、クリニックにおける「化粧品」「ボディケア/スキンケア製品」の実態をご紹介します。
<この記事のポイント>
- 現在、皮膚科クリニックでは、「化粧品」は約50%、「ボディケア/スキンケア製品」は約25%で取り扱われている
- 「化粧品」「ボディケア/スキンケア製品」以外も含め物品を販売している理由・きっかけは、「患者からのニーズ」「治療/予防/療養の補助」。一方で、物品を販売しない理由は「煩雑/時間がない」「医師本来の業務ではない」「副作用/健康被害を懸念」
- 医師内にもさまざまな考え方があることを念頭に置く必要はあるが、「患者からのニーズ」「治療/予防/療養の補助」といった医師の販売理由やきっかけに合わせて、製品の特性を訴求していくことが重要
ドクターズコスメの特徴
ドクターズコスメは皮膚科や美容外科などで取り扱われていることが多く、通常の市販化粧品と比べて以下のような特長があると言われています。
- 皮膚科医や専門医が監修しているため、成分や処方が科学的・医学的に検証されている
- 市販の化粧品よりも高濃度の有効成分が配合されていて、特定の症状に対する効果が期待できる
- 厳しい品質管理と安全性の基準を満たしていることが求められるので、信頼性が高い
- 患者の肌質や悩みに応じて、医師や専門スタッフが適切な製品や使用方法をアドバイスしてくれる
一方で、高品質な成分や専門的な開発から市販品に比べると価格は高く、医療機関まで足を運ばなければ購入できない場合も多くあります。また、効果が期待されるということは使用のリスクがあることも忘れてはいけません。
クリニックにおける「化粧品」「ボディケア/スキンケア製品」の取り扱い
では本稿の主題である、クリニックにおける「化粧品」「ボディケア/スキンケア製品」の実態を見ていきましょう。全国20床未満のクリニック「一般内科」「整形外科」「産婦人科」「皮膚科」「耳鼻咽喉科」「精神科」「眼科」「小児科」「歯科」の医師合計1,200人に、12の物品(※)の販売状況を確認しました。(※)「化粧品」「ボディケア/スキンケア製品」 「サプリメント」「サプリメントを除く健康食品」「栄養ドリンク、エナジードリンク」「発毛剤、育毛剤、養毛剤」「医療用装着品」「口腔ケア製品」「アイケア製品」「日用雑貨」「介護用品」「一般用検査薬」
過去・現在ともに、全項目の中で最も販売実績が高いのは「サプリメント」ですが、皮膚科においては、「化粧品」「ボディケア/スキンケア製品」「発毛剤/育毛剤/養毛剤」を販売する割合がサプリメントよりも高くなっています。
皮膚科クリニックで物品を販売している理由・販売しない理由
続いて、調査を実施したクリニックのうち、特に化粧品関連の取り扱いが多い皮膚科クリニックに焦点を当てて見ていきます。皮膚科クリニックの医師に、化粧品やサプリメントなどの物品を「現在販売している理由・きっかけ」と「今後も販売しない理由」を自由回答で聞きました。
<現在物品を販売している理由・きっかけ>
自由回答をまとめると、「患者からのニーズ」「治療/予防/療養の補助」が挙がっています。具体的には以下の意見が見られました。
- 栄養療法や皮膚トラブル改善の一つとして
- 敏感肌などの患者のニーズに合わせて
- 業者が宣伝して自分自身も試したら効果があったため
- 他クリニックでも実施しているため
- 低刺激の化粧品等、入手しにくいものを販売している
<今後も物品を販売しない理由>
自由回答をまとめると、「煩雑/時間がない」「医師本来の業務ではない」「副作用/健康被害を懸念」が挙がっています。具体的には以下の意見が見られました。
- 院長および受付の業務が増える
- 在庫を抱え管理するのが大変だから
- 目先の利益にこだわらず保険診療のみに特化したいので
- 適切な科学的根拠がない製品は推奨できないから
- 健康被害が出た場合など対応が大変そうなので
クリニックで物品を販売してもらうには?
クリニックで過去・現在ともに最も販売実績が高いのは「サプリメント」ですが、皮膚科では「化粧品」「ボディケア/スキンケア製品」がサプリメントの割合を上回っていました。物品販売理由として、「患者からのニーズ」「治療/予防/療養の補助」が挙げられています。本調査対象である20床未満のクリニックにいる医師は基本的に1人であり、最終的に物品販売を決めるのは医師本人となります。
物品の販売について、反対も含めて医師内にもさまざまな考え方があることを念頭に置く必要はありますが、クリニックで物品を販売してもらうためには「患者からのニーズ」「治療/予防/療養の補助」という医師の販売理由・きっかけに合わせて、製品の特性を訴求していくことが重要と思われます。また、「煩雑/時間がない」をフォローする動きも必要となりそうです。
【提供元】 株式会社インテージヘルスケア
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