「女性の健康」と「食によるエピジェネティクス」の関係を紐解く、最新の研究から見えたサプリの新たな役割

生活習慣や環境、食事によって、遺伝子情報の働き方が変わる可能性を研究する「エピジェネティクス」。近年は、女性の健康との関係にも注目が集まっています。思春期の炎症や腸内環境の乱れは、将来の乳がんリスクにどう影響するのか。妊娠中の母体環境は、子どもの免疫機能や健康にどのような影響を残すのか。最新の研究からは、食品やサプリメントが遺伝子の働きを調整し、長期的な健康リスクを抑える可能性も示され始めています。女性のライフステージと食によるエピジェネティクスの関係について、エピジェネティクス研究を進める原料メーカーのアミノアップが解説します。

エピジェネティクスと健康

エピジェネティクスは遺伝子の働きを調整する仕組み

私たちの体の中には「DNA」という設計図があり、そこに遺伝情報が書き込まれています。DNAはお父さんから半分、お母さんから半分を受け継いで生まれるので、あなたの意志では選べません。しかし、DNAに書かれた遺伝子情報の働き方(スイッチのオン・オフ)は、あなた自身でコントロールできる可能性があります。一般的には、環境、運動、食事などによってコントロールできると言われています。

このように、「どの遺伝子情報をオンにするか?オフにするか?」という仕組みを研究するのが、エピジェネティクスという研究分野です。エピジェネティクス研究にはWHOや国内外の大学も注目しています。なぜならば、エピジェネティクス研究が、がんの予防や早期診断へ応用されることが期待されているからです。

 

 

WHOの国際がん研究機関(IARC)においてエピジェネティクス・メカニズム部門長を務めたZdenko Herceg氏は「エピジェネティックな変化は、発がん初期に生じるだけでなく、早期診断や、進行・治療状況の客観的な評価指標にもなり得る」と語り、エピジェネティックな変化を追いかけることで、戦略的にがんと向き合えると期待します。

 

 

遺伝子と向き合い、自分の健康を考える

米国の人気女優、アンジェリーナ・ジョリーさんは30代の時に、将来の乳がんを予防するための乳房切除・再建を行ったことを発表しました。がん抑制遺伝子に変異があることから、将来的に乳がんになるリスクが高いと判断したからです。このような予防的切除は、「将来がんになる確率を下げる」という見方がある一方で、「(がんになる確率はある程度あるものの)必ず発症するとは限らない」という見方もあるので、個人の考え方によって判断は分かれます。

同じ遺伝子をもって生まれた双子でも、ひとりが乳がんになっても、もうひとりはならないケースもあります。正しい答えは一つではありません。だからこそ、一人ひとりが自分の健康について学び、考え、自分なりの価値観を持って自分の体を大切にすることがますます重要になってくるのかもしれません。

自分の体を守るための選択肢も多様です。健康状態に影響を与える遺伝子情報の働き方(スイッチのオン・オフ)は、一般的には、環境、運動、食事などによってコントロールできると言われています。女性の健康に関わる遺伝子スイッチのオン・オフについて、食の果たす役割を示唆する興味深い研究が、カナダで行われました。

 

女性の健康とエピジェネティクス

思春期の炎症と将来の健康

思春期(=成長期)は、心身だけでなく、免疫機能や腸内環境なども大きく変化する重要な時期です。近年、この時期に受けた炎症などのストレスが、成長後の健康にまで長期的な影響を及ぼす可能性が注目されています。そこで、Ottawa大学(カナダ)のChantal Matar氏らは、マウスを用いて、思春期の炎症が成長後の腸内環境や免疫機能、遺伝子の働きにどのような影響を及ぼすのかを調べました。研究では、成長期にあるメスのマウスを次の5つのグループに分けて比較しました。

  1. 何もしない
  2. 炎症を起こす細菌成分を与える
  3. サプリメント(AHCC)を与える
  4. 細菌成分とサプリメントを一緒に与える
  5. 細菌成分と腸内環境を整えるプロバイオティクスを一緒に与える

その結果、細菌成分を与えたマウス(2)の体内では、炎症が起きていることを示すIL-17A、IL-6、IL-1βなどの物質が増えていました。また、腸内細菌が乱れて、BacteroidesやParabacteroidesなど炎症に関連する細菌が増えていました。炎症を進める免疫スイッチであるSTAT3も増えて、免疫システムが「炎症モード」になっていました。さらに、成長期に起こった炎症の影響が、成長してからも確認されました。一方で、サプリメント(AHCC)やプロバイオティクスを一緒に与えたマウス(3、4、5)の体内では、以下が観察されました。

  • 炎症物質(IL-17A、IL-6、IL-1β)が増えていなかった
  • 炎症を抑える方向に働く免疫因子(IGF-βやIL-10)が働いていた
  • 腸内細菌のバランスが保たれていた
  • 炎症抑制スイッチ(FOXO1)が増えて、免疫システムが<調整モード>になっていた
  • 遺伝子を微調整するマイクロRNA(miR-145:炎症を抑える)が増えていた
  • 遺伝子の働きを調整する目印(DNAメチル化)に変化があった

これらの結果からわかったことは、思春期(成長期)に強い炎症が起きると、免疫システムに影響が起き、成長してもその影響が残ってしまうということです。しかし、そのような炎症を起こす要因があっても、サプリメントやプロバイオティクスなどの食品によって遺伝子のスイッチを調整し(=エピジェネティックな変化)、悪影響を和らげることができる可能性があることもわかりました。

思春期の炎症と乳がんのリスク

思春期(=成長期)は、乳房が発達する乳腺形成の重要な時期です。この時期に起こる炎症は、乳腺の発達に影響を与え、将来的な乳がんリスクにも関わる可能性があることが近年の研究で示唆されています。炎症の背景には、腸内環境の変化も関係しています。私たちの腸には多くの腸内細菌が住んでいますが、炎症が起こると腸内環境が乱れ、腸のバリア機能が低下することがあります。腸のバリア機能が低下すると、細菌由来の物質などが体内へ入りやすくなり、全身の炎症を助長すると考えられています。また、脂肪や糖が多い西洋型の食事は、このような炎症状態を慢性化させ、がんが育ちやすい環境をつくることが知られています。一方で、発酵食品などを取り入れた伝統的な食事や栄養バランスの良い和食は、遺伝子の働きを調節するエピジェネティックな仕組みにも良い影響を与える可能性が報告されています。こうした背景を踏まえ、Chantal Matar氏らは、思春期の炎症が将来の乳がんリスクにどのような影響を及ぼすのかを調べるため、成長期にあるメスのマウスを4つのグループに分けて研究を行いました。

  1. 何もしない
  2. 炎症を起こす細菌成分を与える
  3. サプリメント(AHCC)を与える
  4. 細菌成分とサプリメントを一緒に与える

その後、それぞれのグループのマウスに乳がん細胞を移植しました。研究の結果、細菌成分で炎症を起こしたマウス(2)では、成長してからできた乳がんの腫瘍が大きくなる傾向が見られました。一方で、サプリメントを与えたマウス(3)では、以下の結果が見られました。

  • 炎症物質(IL-6、I-1β、IL-17、IL-23)が抑えられていた
  • がんを進めるスイッチとなるマイクロRNA(miR-21、miR-92、miR-155)の増加が抑えられていた
  • がんを抑えたり、正常な乳腺発達に関与したりするスイッチとなるマイクロRNA(Let-7a、Let-7c、miR-184、miR-145)が増えていた

この研究で、思春期の強い炎症は乳腺の発達や将来の乳がんリスクに影響する可能性が示されましたが、同時に、同じようにリスクがあってもサプリメントなどの食品でエピジェネティックに遺伝子の働きをコントロールすれば、がんを防ぐことができるかもしれないという可能性も示されました。

興味深いことに、Chantal Matar氏の研究では、DNAや免疫レベルでは大きな変化が見られたものの、「乳腺の枝分かれの数」「乳管の長さ」「全体構造」では、大きな違いは見られませんでした。つまり、見た目は同じように正常であっても、細胞レベル、遺伝子スイッチのレベルでは変化が起きているということです。

現代社会に生きる私たちは、様々な環境要因やストレスの影響を受けています。全てを避けることはできませんが、それらが悪さをするかどうかは、私たちがコントロールできるかもしれないのです。食品の効果は一日で目に見えるものではありません。しかし、日々の積み重ねが遺伝子のスイッチのオン・オフを調整し、病気を予防する体づくりをサポートしてくれることが分かってきています。

母体環境が赤ちゃんの将来の健康に与える影響

Chantal Matar氏の研究は、思春期(成長期)からさらに上流へ移り、妊娠中や授乳中の影響も調べました。赤ちゃんのころの腸内細菌は、免疫を育てる大事な役割を持っています。しかし、妊娠中のお母さんの影響を受ける可能性があります。研究では、妊娠中のマウスに抗生物質を与え、4つのグループに分けました。

  1. 何もしない
  2. 抗生物質(ペニシリン)を与える
  3. サプリメント(AHCC)を与える
  4. 抗生物質とサプリメントを一緒に与える

そして、生まれた子どもマウスを大人になるまで育て、腸内細菌や免疫の状態を調べました。妊娠中に抗生物質を与えたマウスのグループ(2)では、腸内環境のバランスが大きく乱れました。また、妊娠中にお腹の中にいた子どもマウスは、成長後も炎症に関わる物質が増えており、赤ちゃんのころの腸内細菌が、一生の健康に影響を与える可能性があることが示唆されました。一方で、サプリメントを与えたマウス(3)では、以下の変化が見られました。

  • 炎症物質(IL-6、IL-15、IL-21)が抑えられていた
  • 炎症を引き起こすスイッチ(NF-κB)が抑えられていた
  • がんを進めるスイッチとなるマイクロRNA(miR-221)が抑えられていた
  • がんを抑えるスイッチとなるマイクロRNA(miR-145)が増えていた

赤ちゃんのころの腸内細菌が乱れると、将来の免疫システムに影響が残る可能性があります。しかし、食品などでその影響をコントロールすることができるかもしれないことが、Chantal Matar氏の研究から示唆されました。

 

まとめ

本記事で紹介した研究はいずれもマウスを対象に行ったため、人でも同じ結果になるかどうかはまだ研究の余地がありますが、食品がエピジェネティックに遺伝子の働きをコントロールすることが示唆されており、あらためて私たちに食生活の重要性を問いかける画期的な研究報告です。

  • 思春期や幼少期の強い炎症や腸内環境の乱れは、免疫機能や遺伝子の働きに長期的な影響を与え、将来のがんリスクを高める可能性がある
  • 日々の食品の摂取によってエピジェネティックに遺伝子の働きを整え、がんや病気の発生リスクを軽減できる可能性がある

引用文献
統合医療機能性食品国際学会 統合医療機能性食品国際学会 Annual Report 2025./International Journal of Molecular Sciences (2023) 24,14610Scientific Reports (2026) 16:3200The BreastJournal (2026) 2026:2122220

【提供元】 株式会社アミノアップ

 

1984 年設立以来、北海道を拠点に機能性食品と農業資材を研究開発し、世界47カ国に展開するメーカーです。「AHCC®」や、バイオスティミュラント「Dr. アミノアップ」などの独自素材を開発し、特許取得と論文発表を重視しています。社内に医学・薬学・農学・理学・獣医学など多分野の研究員を擁し、世界 100 以上の医療機関・大学との共同研究にも取り組んでいます。ICNIMを通じた国際的な研究ネットワーク形成に加え、環境負荷削減にも注力し、製品の製造 1トン当たりの製造時 CO2 排出量を 10 年前比40%削減。2025年にはEcoVadisのサステナビリティ調査で、世界各国の評価対象13万社の上位15%にあたるシルバー評価を獲得しました。

 

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