「攻めの予防医療」を地域から実装へ、JACDS新体制が描くウェルビーイング戦略
「セルフケアを社会の当たり前にする」。日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)が新体制の発足にあたり、従来の“医薬品を販売する場”という役割を超え、地域住民の健康を支える生活拠点としてのドラッグストア像を打ち出した。今期もJACDS会長に再任した塚本厚志氏(マツキヨココカラ&カンパニー代表取締役副社長)は「売上高13兆円の達成は目的ではない。本当の意味で生活拠点として認められた結果として実現するもの」と強調。医療費48兆円時代を迎える中、治療中心から予防・セルフケア重視へとシフトする社会において、ドラッグストアが担う役割は大きく変わろうとしている。日本医薬品登録販売者会との連携強化も進む今、新体制が掲げる「攻めの予防医療」とは何か。そして、ウェルビーイング社会の実現に向け、地域のドラッグストアはどのような価値を提供していくのだろうか。(記事=笠原亜紀世)
セルフケアが支える“新しい医療のかたち”
先月15日の通常総会後に行われた特別記者会見で繰り返し語られたキーワードが「セルフケア」だった。塚本会長は、「ドラッグストア業界は、セルフケアという分野において生活者の役に立つ存在でありたい」と述べた。背景には、高齢化の進展と医療費の増大がある。日本の医療費は48兆円規模に達し、限られた社会保障財源をどう維持していくかが大きな課題となっている。
こうした状況の中で注目されるのが、OTC医薬品の活用を含めたセルフメディケーションだ。軽度な不調は自ら対処し、健康なうちから生活習慣の改善に取り組む「攻めの予防医療」は、医療機関への依存を減らすだけでなく、一人ひとりの健康寿命の延伸にもつながる。その担い手として期待されるのが、地域に最も身近なヘルスケア拠点であるドラッグストアである。日常的な買い物の延長線上で健康相談ができること、登録販売者や管理栄養士、薬剤師など多職種によるサポートを受けられることは、病気になる前の段階から生活者を支える重要な機能となる。「サクセスフルエイジング」という言葉も会見では紹介された。年齢を重ねても自分らしく、生き生きと暮らし続けること。その実現に向け、ドラッグストアは“モノを売る場所”から、“健康な人生を伴走する場所”へと進化しようとしている。
ウェルビーイングを支える地域インフラへ
JACDSが掲げる「ネクスト25」構想では、25年後を見据えた業界のあり方が議論されている。その中心にあるのは、地域社会に不可欠なインフラとしてのドラッグストアの確立だ。会見では、防災への取り組みも紹介された。災害時の物資供給や自治体との協定締結、ドラッグストアショーでの防災啓発など、平時だけでなく有事における地域支援機能の強化も進められている。また、がん患者への生活支援や在宅医療との連携、管理栄養士による栄養指導など、ウェルビーイングを構成する多面的な課題への対応も視野に入る。さらに、日本医薬品登録販売者会との連携による継続研修の充実は、セルフメディケーションを支える人材育成の面でも大きな意味を持つ。医薬品の適正使用を促しながら、生活者の健康行動を後押しする専門職として、登録販売者への期待はますます高まっている。ドラッグストアは、食品、化粧品、医薬品、調剤をワンストップで提供する業態として成長してきた。しかし、これから求められるのは売場の拡大ではなく、「地域の健康課題を解決できるか」という視点だ。予防、セルフケア、食、栄養、防災、在宅支援――。人々の暮らしに寄り添いながら、健康を支える拠点へ。
新体制のJACDSが示した方向性は、医療と生活の間に存在する“未病”の領域を支える社会システムの構築にほかならない。攻めの予防医療を実装する主役として、ドラッグストア業界の次なる一歩に注目が集まる。
【執筆】ドラッグストアジャーナル
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