女性ヘルスケアマーケの最新手法、4選
女性ヘルスケアマーケティングで最も大事なのは、女性特有の健康問題を年齢、ライフステージ、ライフコースの視点から設計することだが、言うまでもなくもう一つ重要なのが、その時々の時代の潮流に合わせた表現やアプローチをすること。特にここ最近はジェンダー、男女格差、女性特有の健康問題といった女性を取り巻く社会課題が表面化し女性たち自らが声を上げるようになったため、この感覚はきちんと理解しておきたい。また女性特有の課題に限らず、社会の様々な技術トレンドによって新たに生まれた健康問題に配慮することも、ヘルスケアマーケティングでは欠かせない。
ステレオタイプに陥ることのないよう、定期的に今時の感覚に頭をアップデートしよう。今回は女性ヘルスケアマーケティングの最新トレンドとして4つの概念をご紹介。今マーケティングに悩んでいるのなら、いずれかを早速取り入れてみては?
今後の必須概念1「ウェルビーイング×デジタル」
今年は「ウェルネス」「ウェルビーイング」が一大ブーム。COVID-19による影響から人々や社会がより幸福を追求する動きが加速したことも背景として大きいが、モノ・コト・情報が溢れ返った現代人にとって、「ウェルネス」「ウェルビーイング」の追求はこの先しばらく止むことはないだろう。
さて、ここまでは業界人ならすでに理解している話。では「デジタル領域でのウェルビーイング」については考えを巡らせたことはあるだろうか?「デジタルウェルビーイング」とは、デジタルを適切に使いこなすことでデジタルのメリットを最大限に享受し、それにより心身の健康・幸福度を高めることを指す言葉。SNSを発端としたいじめ・自殺・うつ病、スマホ老眼、スマホ中毒、不眠など、デジタル利用による心身への悪影響が問題視されるようになったことで、グーグルが「デジタルと良好な関係を築いていこう」と呼びかけるためにこの言葉を2018年に提唱した。日本ではまだ広がりが見られないが、「ウェルネス」「ウェルビーイング」のブームが拡大している今、この概念をマーケティングに組み込む企業は増えていくと考えられる。
デジタル利用による健康問題は、現代ならではの新しい社会課題。ヘルスケア企業ならなおさら、この課題には配慮をしなくてはいけない。アプリ、AI、ネットショッピング、ライブコマース、SNSマーケティング、ネット広告、DX推進など、オンラインをマーケティングの主戦場にしている企業は必須の概念だ。以下の記事では、デジタルウェルビーイングの解説と、デジタルウェルビーイングを取り入れた企業の事例を紹介。(事例:Google/Yahoo!Japan/講談社)
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今後の必須概念2「ボディポジティブ」
世界的なダイバーシティとインクルージョンの流れで、人々の美の基準は近年急速に変化している。「ボディポジティブ」はその概念を的確に言語化したもので、欧米でのムーブメントから始まった。
ボディポジティブというとプラスサイズモデルと呼ばれるぽっちゃり体型の人を連想する人も多いが、広義では「様々なルックス」を定義しており、例えば「障害があり脚がない人」「歯並びが悪い人」「肌が黒い・黄色い人」「エイジングサインが出現している人・顔・肌・身体」「病気や薬の副作用により外見的変化が起きた人」など多様な人を含む。
特にこの考えが広く浸透しているのは、すでに多様なルックスの人が存在する多民族国家。一方、単一民族国家の状態に近く、横並び意識が強く、ルッキズム・エイジズム・セクシズムが蔓延る日本では、まだまだボディポジティブを採用する勇気ある大手企業は圧倒的少数。若手が率いるスタートアップの中には、ボディポジティブに則ったモデルの起用やプロモーションをしているところも出てきているが、やはり日本全体の空気を変えるには、大手による取り組みが欠かせない。遅かれ早かれこの潮流は日本でも当たり前になる。またボディポジティブを採用するほうが「トレンド感」は抜群に上がる。ぜひ今すぐ検討してみては?以下の記事では、画像付きで企業事例を紹介している(事例:資生堂/GUCCHI/ELLE/Victoria’s Secret/他)。
条件合えばトライする価値あり「ジェンダーニュートラル」
自社商品が厳密な性差ヘルスケア・性差医療に基づいたものではない、あるいは性差研究が進んでいない領域のものなのであれば、ジェンダーニュートラルを導入したマーケティングもおすすめ。「ジェンダーニュートラル」とは男女のいずれにも偏らないことを意味し、わかりやすく言うなら、男女いずれも、そしてあらゆるジェンダーが使える商品のことを指す。ファッション業界では以前から、男女どちらもが使えるいわゆる「ユニセックス」のアパレル商品が数多く上市されてきたが、ジェンダーに関する社会問題化やダイバーシティの浸透から、最近は航空業界、テーマパーク、そして健康・美容業界でも導入が進んでいる。ただし健康・美容商品においては、ジェンダーニュートラル導入の相性に良し悪しがあるので、検討は慎重に。
以下の全3回の連載では、ジェンダーニュートラルの解説に始まり、ヘルスケア業界のジェンダーニュートラル商品事例、ジェンダーニュートラルと相性の良いヘルスケア商品についてまとめた。(事例:TOTO/日本メナード化粧品/LINE/主要女性誌、他)
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健康課題に着目した新習慣を提唱
最後に新トレンドとしてご紹介したいのは、「健康課題に着目した新習慣を提唱する」マーケティング手法。各社が自社商品をPRするために新しい概念や新習慣を提唱するのはよくある話だが、最近は、社会課題として表面化した女性特有の健康問題に着目した新概念・新習慣の提唱が目立っている。中でも特に編集部の目に止まった企業の事例を、以下の記事にまとめた。女性のどんな健康課題を起点にして、新概念・新習慣へとつなげているのか?その視点でぜひ読み進めてほしい。女性のヘルスケアニーズを的確に捉えた提唱であれば、注目度はかなり上げられる。事例を参考に検討してみては?(事例:大塚製薬/SOMPOひまわり生命/アディダス)
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