ヘルスケアマーケティングの事例19選(2026年版)
ヘルスケアマーケティングの事例を見ると、近年は商品・サービスの機能性や有効性だけでなく、「どう届けるか」「健康意識や健康行動をどう支えるか」が競争力を左右する構造が見えてくる。販売経路を工夫したり、生活者の”選ぶ手間”を減らす仕組みを取り入れたり、健康を自分ごと化する体験を設計したり――。各社が、生活者の行動変容や習慣化を後押しする新たな売り方・届け方を模索している。本稿では、その中でも特に有力な戦略を7つの類型に整理した。女性生活者に商品・サービスを届けるためのヒントを探っていこう。
目次
ヘルスケアマーケティングとは?
ヘルスケアマーケティングとは、生活者の健康課題や行動変容を起点に、「商品・サービスの普及」と「顧客の健康成果」の両立を目指すマーケティング活動のこと。一般的な商品・サービスと異なり、マーケティングの目的が「知ってもらう」「購入してもらう」にとどまらない点が特徴だ。健康課題を自分ごととして認識してもらい、行動を起こしてもらい、それを習慣化してもらうことで初めて両立が成立する。よってヘルスケア事業を行う企業には、商品力・サービス力に加え、「どう届けるか」「どう健康を自分ごと化してもらうか」「どう健康行動を後押しするか」という視点までが求められる。
ヘルスケアマーケティングの事例、7類型
ここからは、ヘルスケアマーケティングの事例を7類型で見ていこう。販売経路の工夫や商品開発、認知形成、啓発、購買支援などアプローチはさまざまだが、いずれも根底にあるのは、女性たちの健康行動をいかに自然に後押しするかという視点だ。
販売経路を工夫する(チャネル戦略)
健康課題を抱える女性たちが皆、自ら情報を探し、商品を購入し、行動を起こすとは限らない。そんな中で近年目立つのが、販売経路や接点そのものを見直す動きだ。コンビニや美容室、飲食店など、女性たちが日常的に訪れる場所を新たなタッチポイントに位置付けたり、異業種との共創によって新たな販路を共同で開拓する事例が増えている。健康課題を抱える女性たちが自らこちらへやってくるのを「待つ」のではなく、彼女たちの日々の行動導線の中へと自社が入り込んでいく発想だ。7類型の中でも、特に注目すべき有力な戦略。異業種連携や共創の広がりも背景に、この戦略を取る企業は、今後さらに増えると予測される。
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従来の方法に選択肢をつくる(新カテゴリー戦略)
ヘルスケア市場が成長し、さまざまな商品・サービスが次々に生まれているものの、健康や美容の悩みを既存の方法だけでは十分に解決できないケースは今なお多い。従来品を我慢して使い続けたり、悩みそのものを受け入れている女性たちも少なくない中、既存の選択肢に新たな選択肢を加えるアプローチも注目の戦略だ。例えば、女性に多い手指の不調に特化したマッサージャーは、これまで十分なケア手段がなかった悩みに新たな選択肢を提示した好例。症状の改善を諦めていた女性たちから高い支持を集めている。
また、幅広いラインナップで、個々の悩みや年齢・ライフステージに伴うニーズの変化に対応する美容室専売のヘアケアブランドの戦略も興味深い。髪質や悩みが変化してもブランド内で最適な商品へと乗り換えさせることができるため、顧客離脱を防ぎやすく、結果としてLTVの最大化に寄与する。「客を逃さないマーケティング」として参考になる事例だ。
女性たちのニーズが多様化・細分化する中、既存市場の隙間を埋める新カテゴリー戦略は、今後さらに存在感を高めそうだ。
従来品の不を解消する(商品開発戦略)
ヒット商品の背景をたどると、女性たちが長年感じてきた小さな不満や不便を解消するといった、至って”当たり前”とも言える企業姿勢が源泉になっていたりする。例えば、ショーツ型ナプキンは、「なぜ白やピンクばかりなのか」「おむつっぽくて抵抗がある」といった、これまで見過ごされてきた女性たちの不満に着目。色を変えるというシンプルな発想で、既存ユーザーだけでなく、ショーツ型ナプキン未経験者の取り込みにも成功した。
日傘に装着できるハンズフリーファンは、「片手に日傘、片手にハンディファンでは両手が塞がる」「これ以上荷物を増やしたくない」といった、夏特有の女性の行動や悩みに応えた商品だ。
新しい価値をゼロから生み出すだけが商品開発ではない。既存商品の“不”を丁寧に拾い上げることも、立派なイノベーションだ。成熟カテゴリーの場合は特に、女性たちが「仕方ない」と受け入れてきた不便や我慢に目を向けてみよう。ヒットの種が眠っているはずだ。
健康意識を高めるきっかけをつくる(認知・啓発戦略)
女性たちが健康課題を認識していなかったり、「自分にはまだ関係ない」と感じていたりすることが、商品・サービスとの接点を遠ざける要因になっているケースは少なくない。その解決策の一つが、商品・サービスを売る前に、まず健康課題を自分ごととして捉えてもらうための取り組みだ。例えば、健康行動を起こすきっかけまでを設計した健康ギフトの戦略や、ウェブサイトや店頭でセルフチェックを行ってもらい、自分の身体の状態を知ってもらう取り組みなどがその代表例だ。
実際に、がんに関する検索行動の分析からは、女性たちが健康を自分ごと化するきっかけは、啓発イベントだけではなく、母の日や家族との時間といった「生活の中のイベント」にもあることがわかっている。予防や未病領域では、「自社の認知を獲得する」だけでなく、「健康を意識するきっかけを提供する」という発想が欠かせない。
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健康行動を後押しする(行動変容戦略)
健康の重要性を理解していても、実際の行動につながるとは限らない。「面倒」「時間がない」「怖い」「続かない」――。こうした行動のハードルをいかに下げるかも、ヘルスケアマーケティングの大きなテーマだ。例えば、サプリメントを「健康のためにがんばって飲み続けるもの」から「水分補給の延長で摂取するもの」へと再設計した商品や、検診に対する「痛そう」「恥ずかしい」「時間がない」といった心理的・時間的負担を軽減する取り組みなどがその代表例だ。
更年期市場では、不調を感じながらも何も対処をしない「物言わぬ消費者」の存在も見えている。健康行動を促すだけでなく、行動を阻む要因そのものを取り除く施策も必要だ。
選ぶ負担を減らす(購買支援戦略)
モノや情報があふれる今の時代、女性たちにとってのストレスは、「買えないこと」よりも「選べないこと」の場合も。特にヘルスケア領域は、商品・サービスの選択肢が多いうえに、成分や効果、自分の体質や症状との相性なども考慮する必要があり、専門知識も求められるため、選択そのものがハードルになりやすい。そこで近年増えているのが、AIによるレコメンドや専門家によるカスタマイズ提案などを通じて、スムーズな意思決定をサポートする取り組みだ。
商品・サービスの選択を女性たちに委ねるのではなく、最適な選択へと導く――。買い物体験のデジタル化やAIの進展も追い風に、こうした購買支援戦略は今後の有望な戦略となるだろう。ただし、年齢や障害の有無、経済環境、デジタルリテラシーの差などによって、かえって新たな「選択格差」が生まれないかという視点も欠かせない。
効果体感までを設計(継続利用戦略)
健康や美容を訴求した商品・サービスは、効果を実感するまでに時間がかかる場合がほとんど。そこで有効なアプローチが、効果そのものだけでなく、効果を”体感”できる体験までを設計することだ。例えば、爽快感や香り、粒々感、刺激といった五感へのアプローチを通じて、女性たちが変化や手応えを感じられるようにする取り組みがその代表例。商品本来の機能的価値が高いことは無論大前提だが、効果を”体感”できる設計は、興味喚起や継続利用、口コミの促進にもつながりやすい。「効果があること」に加え、「効果を“体感”できること」まで設計する――。とりわけ成熟カテゴリーで事業を行っている場合に有効。自社が選ばれるための重要な視点だ。
























