日本のドラッグストア業界はこうして産業化を果たした、JACDSの前身・DMSの30周年式典に主要企業の経営陣が集結
マーチャンダイジング(MD)の学びの場として業態の構築と産業化に貢献してきたドラッグストアMD研究会(DMS、石田岳彦会長)。今年9月21日に設立30年の節目を迎えるこの団体は、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS、塚本厚志会長)の前身でもあり、その存在無くして今の業界の発展はない。DMSは先ごろ30周年を記念したセミナーを開催した。本稿ではDMSとJACDSの成り立ちや現在の役割を紹介するとともに、ともに歩んできたお歴々の発言をまとめた。(文責=八島 充)
MDの研究で安売り店のイメージ払拭へ
DMSは1995年、「DgSを流通業の主役に押し上げたい」とする有志による「ドラッグストア&ノンフード商品開発研究会」を前身として組織された。「価値ある店づくり」というテーマはやがて「マーチャンダイジング」という研究課題に辿り着き、1996年に現名称に変更している。30年前にDgSの定義はなく、生活者も「医薬品や化粧品、紙製品や洗剤の安売り店」と理解する程度だった。DMSはそのイメージを払拭すべく、「日本版DgSの確立と産業化」並びに「真のMD研究機関の構築」を目的に各種活動を進めてきた。記念セミナーで事務局責任者として挨拶した椎名敏也氏は、DMS創設とその後の原動力となった人物として、初代会長を12年務めた明神正雄氏(当時はドラッグストアバイゴー社長)と、顧問の故・宗像守氏(日本リテイル研究所前代表、日本チェーンドラッグストア協会初代事務総長)の存在に触れ、「明神・宗像両氏の出会いが無ければDgS業界の景色も今と変わっていただろう」と語っている。そのDMSは1997年、経産省の「DgS商慣行実態調査」に協力し、その後「DgSシンポジウム」の開催を経て「DgS産業化推進センター」を立ち上げている。同センターで「DgS運営ガイドライン」の制作ほか、業態や市場に関する各種調査を公表している。
時同じく「薬剤師の不在・偏在問題」が取り沙汰された際もDMSが対応したが、研究会としての活動には限界もあり、業界を束ねる団体の必要性が叫ばれるようになった。そうしてDMSの機能を分離・発展させ1999年に創設されたのが、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)である。その後のJACDSの活動は読者もご存知の通り。2001年に第1回JAPANドラッグストアショーを開催し、2002年にはDMSの悲願でもあった経産省の商業統計にDgS業態の掲載を実現する。さらに2007年に総務省の「日本標準産業分類」にも掲載され、DgSは日本の新たな業態、新たな産業として公的に認められた。一方のDMSはビジネスの成長に特化した活動に舵を切り、新市場の創造、商環境への変化対応、さらに異業態等の情報収集活動に邁進する。政策セミナー(年2回)、「食と健康」と「成長戦略」をテーマにしたオンラインセミナー(各年12回)、海外流通視察セミナー(年1回)などを実施して現在に至る。
先の記念セミナーは、元大阪府知事の橋下徹氏による特別講演に続き、マツキヨココカラ&カンパニーの松田崇取締役、スギホールディングスの杉浦伸哉副社長、新生堂薬局の水田怜社長による座談会(進行はニューフォーマット研究所の日野眞克代表)が催された。当日は予定を上回る来場者が会場を埋め、次代を担う経営陣の言葉に熱心に聞き入っていた。
顧客や患者の拠り所であり続ける/石田会長
開会に先立ち挨拶した石田会長(ウエルシア薬局取締役)は、DMSのこれまでと今後について、「初めてDMSに参加したのは2001年、高知県の店舗視察だった。宗像先生、明神会長以下、参加した経営陣の熱い想いを感じたのを覚えている。JACDSは先のドラッグストアショーの中で「NEXT25」をテーマに業界の方向性を語ったが、創設30年を迎えるDMSの課題もDgSの未来を描くことにある。衰退する米国のDgS業態を反面教師として、顧客や患者の拠り所であり続けるための研究に製配販一体で取り組みたい」と語った。
創設時からDMSに参加する清水政弘副会長(麻友社長)はセミナー後の懇親会で、「宗像先生は『少子高齢化が進む中でDgSが成長発展するにはセルフメディケーションの実現が不可欠。そのためにも経産省の商業統計に記載される必要がある』と力説していた。それを成し遂げた彼に祝意を示すと、『課題が残った』と返された。DgSが掲載された代わりに薬局・薬店が削除されたことを悲しんでおり、実に懐の深い方だと改めて感心させられた」と思い出を語った。
40年、50年はともに「未来を作ろう」/JACDS塚本会長
懇親会に駆けつけたJACDSの塚本会長(マツキヨココカラ&カンパニー副社長)は、「JACDSの生みの親であり、30年の長きに渡り業界に貢献してきたDMSに敬意を表する」「現在DMSはMDを軸にした勉強組織として、一方のJACDSは規制等に物申す業界団体として、互いが両輪となって業界の成長と参画企業の発展を支えている」「『10年偉大なり、20年畏るべし、30年歴史になる』という中国の格言に倣えば、DMSはすでに歴史になった。この先の40、50年はJACDSとともに『未来をつくる』作業に邁進していただきたい」と要望した。
続いて乾杯の挨拶に立った大木ヘルスケアホールディングスの松井秀正社長は、「本日の座談会で、若手経営者が互いの戦略・戦術を惜しみなく公開していたが、業界の発展に向け知恵を出し合うこの姿勢こそがDMSの本質と感銘を受けた」「米国のウォルグリーンは、自らを『完成された業態だ』『業態の中核だ』と認識したことで衰退の道を歩んだが、座談会の内容を聞いて、日本のDgSはさらにステップアップできると確信した。橋本元府知事は、戦略のスケジューリングと実行チームの編成が重要だと言ったが、DMSがそのチームとして戦略を形にしていくことを期待している」と締めた。
【執筆】ドラッグストアジャーナル
ドラッグストア・薬局業界に特化した日刊メディア『ドラッグストアジャーナル』は、トップ・幹部のインタビューや店舗・イベントレポート、産官学への提言など、ここでしか読めない記事を掲載。ウェブメディア『Hoitto!』は、ヘルスケア関連の商品・サービスやトレンドを紹介。業界記者で培った製配販とのネットワークを武器に、ビジネスのヒントになる、かつ正しく選択された情報をお届けし、社会全体のヘルスリテラシー向上を目指します。この記事の無許可での転載・複製・データ使用は厳禁とさせていただきます(運営:ヘルスケアワークスデザイン株式会社)。
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