拡大する世界のモバイルヘルス市場 国内事例と参考情報(1/3)
ヘルスケア産業の中でも急速に拡大しているのがモバイル端末を活用したモバイルヘルス市場。各種疾患の改善や、健康状態の改善だけでなく、ヘルスケア産業を取り巻くさまざまな社会問題も解決できる可能性が高いことから、注目度が高い。モバイルヘルス市場の平均年成長率は33.7%との予測もある。
モバイルヘルスとは
モバイルヘルスの定義
スマホやタブレットなどのモバイル端末を医療に活用し、医療行為や診療サポートを行うことを「モバイルヘルス」と言い、世界的に注目が高まっている。海外では略語でmHealthと表現されることから、日本でもエム・ヘルスとも呼ばれている。WHOでは「スマホ、モニタリングデバイス、携帯情報端末、その他のワイヤレスデバイスなどのモバイルデバイスによって支えられる医療・公衆衛生の実践」をモバイルヘルスケアと定義している。
「モバイルヘルス」においては、患者のモバイル端末と様々なヘルスケア機器をデータ連携しモバイル端末およびクラウド上でデータを管理、医療者と情報をやり取りする方法があるが、近年ではヘルスケア機器に携帯モジュールを組み込み、携帯回線を経由してクラウド上にデータを送信するといったサービスも出始めている。
(略)医療機器という「ハードウェア」と、モバイル端末やクラウドを活用した「ソフトウェア」が融合し、新たな付加価値をもたらす「モバイルヘルス」という市場は、Google社の「Google Fit」やApple社の「Health」といった健康管理プラットフォームが提供されることや、Apple社の「Apple iWatch」などに代表されるウェアラブル端末の登場により、さらなる拡大が予想される。(引用:mediaid「モバイルヘルス」)
医療機器では、次のようなものがコネクテッドデバイス(インターネットに接続されたデバイス)としてモバイルヘルスに活用される。
- 血圧計
- 血糖値計
- 心電図、心拍計
- 睡眠時無呼吸モニター
- 神経モニタリング装置
- 胎児監視装置
- マルチパラメータートラッカー
- 神経モニタリング装置
など
(参考:ResearchStation,LLC「モバイルヘルス・ソリューションの世界市場」)
モバイルヘルス市場が急速に拡大している要因は、IoT技術の進展。例えば、
- スマホ利用者の増加
- 遠隔技術の進化
- ウェアラブル技術の高度化
- 医療情報のビッグデータ化
- クラウドによる医療情報一元化
- ネットワークの高速化
など
生活者に実際に浸透しているモバイルヘルスの例としては、次のヘルスケア関連アプリやサービスがある。
- 遠隔診療(オンライン診療アプリ)
- ダイエット管理、アドバイス
- 食事管理、アドバイス
- 月経管理アプリ
- 妊活管理アプリ
- お薬手帳アプリ
- フィットネスアプリ
など
モバイルヘルスに期待されていること
モバイルヘルスは各種疾患の改善や健康状態の改善だけでなく、社会問題の解決も期待されている。
- 医師不足問題の解消
- 移動困難者や、へき地在住者に対する遠隔診療
- 個々が健康維持・増進に努めることによる医療費削減
- 医療情報データ化(エビデンスやログの蓄積)による医療の質向上
- 患者、ユーザーの行動変容促進
- PHR(※)の普及促進
など
(※)PHRとは「パーソナルヘルスレコード」のことで、患者自らが医療・健康情報を収集・保存することを指す。PHRを医療機関に提供することで、医師はスムーズな診察、適格なアドバイスが可能になる。また医師の業務効率化にも貢献する。PHRにより、どこの医療機関を使っても今までの病歴や経過を正確に・即座に医師と共有できるため患者のメリットは大きい。患者の医療・健康情報には、年齢、性別、身長・体重、血液型、アレルギーや副作用歴、医療機関で受けた検査データ、薬の処方履歴、日々の歩数、脈拍などが含まれる。