代替医療の種類・利用実態・メリット、デメリット
西洋医学に並行して代替医療を行う人は少なくない。代替医療や民間療法は必ずしもエビデンスがあるものばかりではなく、それだけで治療することは完治のタイミングを逃す危険性もあるが、一方で現代医学から取りこぼされた患者の医療・ケアの選択肢を増やすことにもつながっている。ヘルスケアニーズの拡大やセルフメディケーションの流れから見ても、代替医療へのニーズは今後さらに高まる気配だ。
代替医療とは?
「代替医療」「補完医療」「統合医療」、それぞれどんな医療?
- 代替医療…現代西洋医学に取って変わる医療
- 補完医療…西洋医学を補完する医療
- 補完代替医療…代替医療と補完医療の総称(CAM:complementary and alternative medicine)。代替医療と補完医療は同じようなものが多く区分が困難な場合もあるので、両者をまとめて補完代替医療と呼ぶことが多い
- 統合医療…補完代替医療と現代西洋医療を組み合わせることによって身体的および精神的に総合して行う医療
代替医療(補完代替医療)の種類
代替医療(補完代替医療)の範囲は非常に広く、哲学的なものからサプリメント、鍼灸などの施術まで多方面にわたる。アメリカでも代替医療の研究は進んでおり、米国の国立補完代替医療センターでは下表のように分類している。
| 分類と名称 | 内 容 |
| 天然産物 (Natural Products) |
ハーブ、ビタミン、ミネラル、栄養補助食品、プロバイオティクスなど |
| 心身医療 (Mind and Body Medicine) |
瞑想、ヨガ、鍼灸、深呼吸訓練、催眠療法、 イメージ療法、漸進的弛緩法、気功、太極拳 など ※アーユルベーダ医療(インド伝統医学)や 中国伝統医学の概念が背景にある |
| 手技療法と身体技法 (Manipulative and Body-Based Practices) |
脊椎の徒手整復術(マニピュレーション)、 マッサージ療法など ※カイロプラクティックやオステオパシー医学 の概念が背景にある |
| その他 (Other CAM practice) |
運動療法(ピラティス、ロルフィングなど)、 エネルギー療法(レイキ、ヒーリングタッチな ど)、ホメオパシーなど |
表:補完代替医療(CAM)の分類(米国NCCAMによる:2012.2.1時点)
米国における代替医療
90年代から代替医療が注目されるようになり、1992年には国立補完代替医療センター(NCCAM)が設置された
代替医療に関する注意点
Webサイトや書籍など代替医療に関する情報はたくさんあるが、「なんとか病気(や不調)を治したい」「助かりたい」という患者やその家族の気持ちにつけ込み、金儲けのためにエビデンスが不明な商品・サービスを販売する悪質な業者もいる。代替医療の利用を考えるなら、患者は利用前に担当医師に相談するのが良い。ただし医師によっては代替医療に懐疑的あるいは否定的見方をする者もいるので、まともに取り合ってもらえず相談にならない場合もある。そうなると自身で最終判断せざるをえない状況になり、間違った方向へ行ってしまうこともある。代替医療を利用するならば、正しい情報を取得して冷静に判断するリテラシーが必要だ。政府機関が運営するWebサイトは、信頼できるWenサイトとして挙げられる。
がん(癌)治療における代替医療の利用実態・メリット・効果
代替医療(補完代替医療)の利用経験があるがん患者の割合
国内の医療現場における補完代替医療の利用実態調査(※)では、44.6%のがん患者が何かしらの代替医療(補完代替医療)を使っている。また、利用頻度が高いがん患者と低い患者では以下のような違いも明らかになっている。男性よりも女性の方が代替医療に頼る傾向があるようだ。(※)厚生労働省がん研究助成金による研究班「我が国におけるがんの代替療法に関する研究」班:主任研究者・兵頭一之介,2005
- 【利用頻度が高いがん患者の特徴】
・60歳以下
・女性
・一日の半分以上を床上安静
・高学歴(大卒以上)
・日常生活に変化あり
・化学療法を受けた患者
・緩和ケア病棟患者
・肺がん、乳がん、肝胆道がん - 【利用頻度が低いがん患者の特徴】
・60歳以上・男性
・活動制限ほとんどなし
・低学歴
・日常生活に変化なし
・化学療法を受けていない患者
・がんセンター患者
・頭頚部がん、消化管がん、泌尿生殖器がん
がんの補完代替医療ガイドブック(※)によると、利用している代替医療(補完代替医療)で最も多かったのは、「健康食品・サプリ」で96.2%。代替医療(補完代替医療)にかけている費用の平均は57,000円/月。約2人に1人のがん患者が代替医療(補完代替医療)に頼っているが、効果を実感している人は2割程度と少ないのが現状だ。(※)編集・制作:厚生労働省がん研究助成金「がんの代替療法の科学的検証と臨床応用に関する研究」班,独立行政法人国立がん研究センターがん研究開発費「がんの代替医療の科学的検証に関する研究」班
意識調査から見えてくる代替医療(補完代替医療)のメリットとデメリット
代替医療のアンケート調査(※)では、利用の恩恵として最も多かったのは「体力・免疫力が高まる」ことで、逆にデメリットとして最も多く挙げられたのが「副作用が気になる」だった。そのほか、回答概要は以下の通り。(※)編集・制作:厚生労働省がん研究助成金「がんの代替療法の科学的検証と臨床応用に関する研究」班,独立行政法人国立がん研究センターがん研究開発費「がんの代替医療の科学的検証に関する研究」班
- <メリット>
1位:体力・免疫力が高まる(53.1%)
2位:病気の治療につながる(50.9%)
3位:病院の治療に比べて副作用が少ない(46.2%)
4位:病気の進行を抑えられる(46.0%) - <デメリット>
1位:副作用が気になる(37.9%)
2位:依存してしまいそうな気がする(27.4%)
3位:病院での治療に悪い影響を与える(13.0%)
4位:病気の悪化につながる(5.9%)
代替医療(補完代替医療)の効果・有効性
実際のところ、代替医療の効果・有効性はどうなのか?がん治療における代替医療の効果・有効性をまとめた。(参考:がんの補完代替医療ガイドブック第3版)
健康食品・サプリメント
健康食品・サプリメントはがんの治療、再発予防において確固たる科学的な裏付けはないとされている。「科学的な裏付けがない」というのは、「効果がない」という意味ではなく、現段階では効果があるといえるだけの根拠がなく、「効果があるのかないのか分からない」というのが正しい解釈。
健康食品に関連する記事
漢方
漢方医学は日本では医療用として保険適用も認められている。ただ現時点では、がん細胞を直接殺傷するようなものはなく、西洋医学的に有効な手段があれば、まずそれを考慮すべきだとされている。すなわち漢方薬は、がんの治療に関しては西洋医学に対する補完的な位置付けとして考えるのが妥当ということだ。
漢方に関連する記事
プロバイオティクス
膵臓がん手術後の合併症(感染症)予防効果や表在性膀胱がん手術後の抗がん剤との併用による再発予防効果など、ヒト臨床試験によって効果が直接証明されつつある数少ない食品。
アロマセラピー
緩和療法中の進行がんの患者で、精神症状や身体症状の改善効果を比較したところ、アロママッサージの方がマッサージのみよりも改善効果を認めたとの報告がある。また乳がん手術後の患者において、アロママッサージによって不安感が軽減したとの結果もある。
香りに関連する記事
鍼灸
がん治療において、がんを縮小させたり消失させたりする効果はない。がん患者において痛みや息切れ、苦痛の軽減のほか、化学療法の副作用である吐気や嘔吐の軽減として取り入れられている。臨床試験でも嘔気や嘔吐などの副作用軽減が報告されている。
運動
適度な運動は、がんの再発予防に良い影響を与えることが分かってきている。がんの診断後に積極的に運動している人の方が、がんの再発抑制、生存延長に好影響があることが明らかとなった。具体的な運動量の目安は、1週間に3~5時間のウォーキング。
代替医療(補完代替医療)を提供するクリニック
アーユルヴェーダを実施(ハタイクリニック/東京)
統合医療で患者を診るハタイクリニック(東京・目黒)は、心療内科・内科・漢方の保険診療のほか、自由診療で代替医療を提供している。アーユルヴェーダ(インド伝承医学)、超高濃度ビタミンC点滴、マイヤーズカクテル、脱糖栄養療法、免疫置換療法などを提供。創設者の故幡井勉院長は日本アーユルヴェーダ学会の元理事長。オンライン診療も行っている。
オンライン診療に関連する記事
多彩な補完代替医療を組み合わせ(みうらクリニック/大阪)
みうらクリニック(大阪市)は、薬に頼らずに自然療法・食事療法を主体に治療することを診療方針に掲げている。食事療法・栄養療法、心理療法、手技療法、運動療法、温熱療法、エネルギーヒーリング、ハーブ療法・波動療法、色彩療法や芳香療法など多彩な補完代替療法を通常医療と組み合わせた統合医療を行っている。
代替医療に関する情報
統合医療情報発信サイト(厚生労働省)
統合医療について信頼できる情報を紹介しているサイト。患者や家族、医師などの医療専門家など向けに情報を提供している。
- 統合医療情報発信サイト
日本補完代替医療学会
代替医学の研究の促進を目的とする学会。学会誌の発行やセミナーの開催などの活動をしている。
書籍:代替医療のトリック
治療を支える利用の位置づけ啓発を
西洋医学では完治・寛解を見込めない患者やその家族にとって、代替医療は最後の心の拠り所だ。代替医療にかける平均費用が57,000円/月であることからも、その気持ちの強さがわかる。個人差はあれど実際にポジティブな効果を感じている患者もいるので、代替医療市場の拡大を期待したいものだが、実際は悪質な業者やエビデンスのない治療法が広まっていたり、代替医療に難色を示す西洋医学の医師が多いのが現状だ。ヘルスケア企業の立場としては、「代替医療単独は危険」との啓発を十分に行った上で、現代医学だけでは完治・寛解できない患者の心理に寄り添った商品開発・情報提供を行う姿勢が求められる。
【編集部おすすめ記事】
■フェムケアトレンドで女性の漢方市場が伸長、新発想の製品・サービスも続々
■女性特有の不調にアプリ・運動 根拠はあるのか? 非薬物療法57項目のエビデンスレベル
■PMS・更年期・不眠・冷え・肌のハリなど25の悩み別、効果実感のある精油ランキング
■日本調剤、漢方ブランドを法人向け販売 更年期・ストレス・虚弱カテゴリーで15品目
■女性の不定愁訴 年代別ランキングTOP20(10〜80代)
























