エストロゲン曝露期間が短いほど認知症になりやすい?

初経年齢が遅い、あるいは閉経年齢が早いなどでエストロゲンに曝露する期間が短いほど、女性は認知症を発症するリスクが高まる可能性があることが、米カイザー・パーマネンテ研究部門のPaola Gilsanz氏らが行った研究から明らかになった。研究の詳細は「Neurology」3月27日オンライン版に発表された。

この研究では、米カイザー・ヘルスケアシステムに1964~1973年の診療録データがあり、1996年に登録されていた女性1万5,754人を対象に、エストロゲン曝露期間と認知症リスクとの関連を調べた。対象女性には、中年期(平均年齢で51.1歳)の時点で、初経年齢と閉経年齢、子宮摘出術の施行歴について尋ねた。また、認知症の診断歴については、1996年から2017年までの診療録から抽出した。

追跡期間中に、対象女性の42%が認知症と診断されていた。解析の結果、初経年齢が平均で13歳だった女性と比べて、16歳以降だった女性では認知症リスクは23%高いことが分かった。同様に、自然閉経を迎えた年齢が47.4歳未満だった女性では、それ以降だった女性と比べて認知症リスクは19%高いことも明らかになった。さらに、妊娠可能な期間が34.4年未満だと認知症リスクは20%上昇し、子宮摘出術を受けるとそのリスクは8%上昇したという。

Gilsanz氏らは、この研究結果は、一生のうち、女性ホルモンのエストロゲンに曝露する期間が短いほど認知症になりやすいとする説を裏付けるものだとしている。例えば、基礎研究では、エストロゲンが脳細胞の回復や修復に働く可能性が示唆されているという。

一方、Gilsanz氏らの研究では、妊娠歴や経口避妊薬の服用歴、ホルモン療法歴など、女性のエストロゲン曝露に影響を与える他の因子については情報を収集していなかった。また、今回の研究は観察研究にすぎないことからも、同氏は「エストロゲンへの曝露またはその欠乏が、認知症リスクと関連することを証明するものではない」と説明している。

この研究には関与していない米バーモント大学医学部准教授Julie Dumas氏は「Gilsanz氏らの研究はよくデザインされたもので、生涯のエストロゲン曝露期間が長いほど、脳機能に良い影響を与える可能性を示す過去の研究結果と一致する」と指摘している。しかし、同氏は、Gilsanz氏と同様に、この研究結果は因果関係を証明するものではないことを強調し、「認知機能を保つために、女性にホルモン療法を行うべきという意味ではない」と付け加えている。

Gilsanz氏によれば、女性は男性よりも認知症リスクが高いとされ、例えば、65歳時点の認知症の発症率は女性の25%に対して男性では15%とされている。そうした事実を踏まえると、“エストロゲンが脳を保護する可能性があれば、なぜ女性は男性よりも認知症リスクが高いのか?”という疑問が生じるが、その理由を説明する一つの可能性として、同氏は「閉経後の急激なエストロゲンの欠乏が、数年後の女性の認知症リスクに影響しているのではないか」との見方を示している。Copyright © 2019 HealthDay. All rights reserved.

 

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