女性のセルフメンテナンス 心と身体編
ストレスケアへの関心が高まっている近年、自分で気軽に取り組める心と身体の「セルフメンテナンス」に意識的に取り組む女性が増えている。女性は男性と比較して感受性が強く、また、月経・更年期といった女性ホルモンの影響を受ける時期にいる時は心身のコントロールが難しく、女性は何かとストレスや疲れがたまりやすい。家ナカ消費の高まりも後押しし、自宅で取り組めるセルフメンテナンス関連の情報・商品・サービスは女性の心を掴みやすいが、具体的にはどのようなニーズがあるのか?
目次
女性のセルフケアニーズ“セルフメンテナンス”とは
セルフメンテナンスとは
自分自身の心身の状態を点検・ケアし健康な状態を維持すること。「セルフメンテ」「セルフケア」ともいう。
高まるセルフメンテナンスのニーズ
セルフメンテナンスのニーズが高まっているのは主に以下3つの社会トレンドが関係している。
1.ストレス社会の到来
常にSNSで人とつながり、常に情報のシャワーを浴び、仕事や家事・育児・介護との両立で毎日が忙しいー。仕事の悩みや人間関係の悩みなど、ストレス社会の到来で心が疲弊しきっている女性は増えている。実際にストレス社会を反映するように、うつ病患者は増加している。厚生労働省の患者調査(平成29年)によると男性のうつ病患者数は49.5万人なのに対し女性は78.1万人で、男性よりも女性の方が多い。ストレス社会の到来で、女性たちは疲弊した心のメンテナンスに時間とお金をかけるようになっている。
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2.疲労対策・疲労回復ニーズの高まり
働く女性の増加は、疲労対策・疲労回復ニーズを一気に高めた。“イクメン”が広がっているとはいえ、いまだに家事・育児・介護は女性が担うのが現状だ。
会社では「女性活躍推進!」とバリバリ働くことを求められ、家庭でも完璧な妻・母親を求められ、これでは休む暇が全くないのだから女性は疲弊する一方だ。そこで全年代の働く女性たちが求めるのは、単純な「癒し」や「ストレス緩和」ではなく、同時に「回復」までできること。癒された後に回復までできなければ、翌日・翌週から100%の力で頑張れないからだ。癒された後に回復までできる「身体メンテナンス」のニーズは大きい。
3.スポーツ女子の増加
スポーツをする女性が増えたことで、今後は運動後のリカバリーニーズが高まると考えられる。
女性の間では「#筋肉女子」や「たんぱく質」系商材が広く浸透し、男性と比較してスポーツ行動者率が低い女性にとっても運動は身近な存在となってきた。続く2019年は運動後のリカバリーに注目が集まりそう。2020年のオリンピック効果や健康志向の定着で運動を習慣化した女性が増えたことで、ニーズが「運動の習慣化」から「疲れを翌日に残さない」へ移行しているからだ。(引用:ウーマンズラボ「スポーツ関連市場、2019年は『リカバリー』に期待」)
女性が特にセルフメンテナンスをしたくなる時
セルフメンテナンスへの関心が特に高まるのは、生理前・生理中と、更年期症状が出ている時期。この時期は頭痛、腰痛、倦怠感、月経痛、吐き気、気分の落ち込み、肌荒れ、食欲増加など、心身に大きな負担がかかる一方で、日頃の過ごし方次第(=セルフメンテナンス次第)では軽減が可能だからだ。
例えば、1ヵ月の半分はしっかり運動をし半身浴も1ヵ月毎日続けた時は、しなかった月と比べて月経痛やPMSの症状がやわらぐことは多くの女性が実感している。クラシエが運営する情報サイト「Kampoful Life」が生理をラクにする子宮メンテナンス術として、「首、手首、足首、腰は冷やさない」「睡眠」「ストレスケア」を挙げている通り、日々の過ごし方(=セルフメンテナンス)の積み重ねが、生理や更年期症状に良くも悪くも影響を与える。
その他、加齢もセルフメンテナンスのニーズを押し上げる要素だ。加齢とともに疲労回復力が低下するためだ。
「加齢現象」という言葉があるように、我々人間は年齢を重ねていくと、いろいろな機能が変化し、多くは低下するようになっています。(略)疲労の場合は、本来「回復」という現象によって戻っていくわけですが、この回復という現象も、加齢とともに低下してしまうようになります。(引用:「疲労を治す81のワザ+α(著:赤坂溜池クリニック院長 降矢英成, 読売新聞社大手小町編集部)」,p37)
厚労省も推進、「心のメンテナンス」
厚労省は、ストレスを抱えた10〜20代向けに心のメンテを促すポータルサイト「こころもメンテしよう」を公開している。近年よく耳にするようになった「マスク依存症」は、メンタル疾患に起因しているケースもあり、中学生・高校生~20代前半の若い世代の割合が特に高い。心のメンテナンスは若い世代にも必要だ。
女性たちのセルフメンテナンス方法 身体編
身体の歪み、肩こり、腰痛、便秘、ぽっこりお腹、倦怠感、眼精疲労、頭痛など、身体の悩みを解消するのが「身体のメンテナンス」。女性が日常生活の中で実際に行っている代表的な身体のセルフメンテナンス方法は以下の通り。ここでは、疲労回復・ストレスケアに焦点を置いた主なセルフメンテナンス方法をピックアップ。
ヨガ、ストレッチ
女性のダントツ人気はヨガとストレッチ。アプリ、ユーチューブ、インスタグラムなどで無料でプログラムに取り組める。店舗に通わずとも自宅で好きな時間に自分のペースで取り組める。筋トレやジョギングに比べて楽ちんなこと、筋トレやジョギングのような“苦しさ”がなく“心地いい”点が人気の理由。
セルフマッサージ
セルライトケア、むくみ緩和、疲れ改善を目的としたセルフマッサージの方法は多くの女性誌が頻繁に取り上げる定番の人気コンテンツ。主に「頭」「顔(美容目的)」「脚」を対象としているケースが多い。「腸活」の広がりとともに、最近は「腸のセルフマッサージ」に取り組む女性も増えている。就寝前のベッドの上、入浴中、テレビを見ているとき、排便中などに取り組む。
セルフ整体
腰痛・肩こり・首凝り・ぎっくり首などの緩和を期待できるセルフ整体は、疲労度が強かったり、身体の痛みが深刻な女性に人気。書籍や動画を通してノウハウが公開されている。以下はセルフ整体の方法を教えてくれる動画。
入浴
最も手軽に取り組めるのが半身浴。半身浴中にセルフマッサージや、アイケア、口腔ケア、肌ケアを行うなど「ながらセルフケア=時短で多くのケア」ができるのが嬉しいポイント。入浴中にできる浮遊浴も人気。
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お風呂で飲んでもらうことを想定した機能性表示食品「おふろTimeカクテルテイスト」は、まさに入浴中のながらセルフケアニーズをとらえた商品。
アイケア
スマホやPCの使い過ぎで、若年層でもスマホ老眼になる人が増えている。眼精疲労を訴える人の増加に伴い、アイケアニーズは年々高まっている。アイケア用商品「めぐリズム」は定番の人気商品。ただし「めぐリズム」は使い捨てでコスパが良くないのが難点。持ち運ぶ必要性がないのであれば、「あずきのチカラ」など、レンジで温めて繰り返し使える温活商品がコスパ良し。
スマホによる健康被害トピックが度々話題になっていることもあり、アイケアのセルフメンテナンスニーズは今後さらに高まる見込み。特に需要が高まると考えられるのは、「オフィスで働く女性」と「スマホやタブレットを使う子どもにアイケアをさせたいママ」。後者は、スマホやタブレットを使う子どもの増加に伴い新たに生まれたニーズだ。
睡眠環境を整える
睡眠負債が話題になり、睡眠環境を整えることに時間とお金をかけるようになった昨今の女性。睡眠環境を整えるために、寝具の見直し、パジャマの買い替え、加湿器購入の他、就寝前のルーティーンセルフメンテナンスとして取り入れている。具体的には、寝る前にスマホやテレビを見ない、読書をして過ごす、照明をじょじょに落とす、ストレッチで身体をほぐす、リラックスできる音楽を流すなど。以下は、睡眠環境に投資する女性たちのSNS投稿。
拡張したベッドでモーニング娘。のキンブレを振り回す赤ちゃん。大塚家具で買ったマットレス、疲れがとれるし最強。睡眠環境には投資してる。 pic.twitter.com/cjDe29DbYu
— 小沢あや / 編集者・ライター (@hibicoto) 2019年3月10日
骨盤のゆがみ改善
座椅子やストレッチをサポートするマシンで骨盤のゆがみを改善するのもセルフメンテナンスの一つ。骨盤の歪み改善をサポートする商品を販売する店舗は楽天通販で度々ランキング1位を獲得。自宅で気軽に取り組めて、かつ楽チンなのが人気の理由。自宅用に購入し、気に入ったら職場でも使う女性多数。
ベルト着用
産後の骨盤矯正、猫背改善、骨盤のゆがみ改善に手軽に取り組めるのが、ベルトの着用。上記の「椅子、マシン」でも骨盤ケアを行えるが、悩みが深い女性はベルト着用を選択する。産後や仕事による腰痛を予防するために着用するケースも。姿勢が良くなる、歩き方が自然と改善される、腰痛が改善されたといった高評価が並ぶ一方で「ずれる」との不満も。
トレーニングマシンの利用
容姿改善目的で購入する女性が中心だが、「疲れにくい身体づくりのため」という購入理由も多いのがトレーニングマシン。特に以下2商品のように小ぶりのマシンは場所を取らず、室内での持ち運びが楽なため人気。
マッサージ機器
低周波治療器、マッサージチェア、マッサージロールなど全身をケアできるマッサージ機器は、値が張ること、パットを定期的に買い替える必要があること(低周波治療器)、場所をとること(マッサージチェア)などが不満としてよく挙がるが、本格的にケアできる点はやはり評価が高い。以下商品は、安価で小ぶりにも関わらず高い効果を実感できると人気。
ウォーキング、ジョギング、自転車
お金も手間もかからず、思い立ったらどこでもすぐに取り組める手軽さがやはり人気の理由。ウォーキング、ジョギング、自転車は、ダイエットや健康づくりを目的に取り組むイメージが強いが、慢性疲労体質を抜け出すために、あるいはリフレッシュを目的にしている女性もいる。習慣化したことで「疲れない身体づくりができた!」と実感する女性は多い。ハマると、本格的なジョギングやスポーツバイクに移行したり、スポーツファッションを揃えるなどの行動に移る。
女性たちのセルフメンテナンス方法 心編
イライラ、不安、憂鬱など心の悩みを解消するのが「心のメンテナンス」。女性が実際に行っている代表的な主な心のメンテナンス方法は以下。
マインドフルネス
世界的トレンドとなったマインドフルネスは日本でも浸透。主に就寝前や入浴中、自宅で1人で過ごしている時間帯に実施する。
森林浴
フィトンチットを浴び心の疲れを癒すのも、女性に人気のセルフメンテナンス法。Instagramには「#森林浴」の投稿が209,368件(2019年5月現在)。「森林浴、癒される」「リフレッシュできた」「すがすがしい」との声が。トレッキングにハマる女性の中には、単純に運動が目的ではなく、森林浴による癒し効果を求めている人もいる。
大人の遊び(趣味の時間)
コロリアージュ、スクラッチアート、ソープカービングは子どもの図画工作のように見えるが、大人も楽しめる遊びだ。「こんなに集中することが楽しいなんて!」「ストレス発散になる」「癒される」「嫌なことを忘れられる時間」と、大人女性の心を掴んでいる。以下はコロリアージュ。
【 #大人の塗り絵 】No.300
記念すべき300枚目の塗り絵!#コロリアージュ #coloriage #色鉛筆 #パステルペンシル #世界一美しい花のぬり絵book #レイラデュリー #leiladuly pic.twitter.com/TfPhsNzLlS
— みき茶 (@Howantyo_Miki) 2017年6月28日
デジタルデトックス
SNS断ち、スマホ断ち、パソコン断ちのこと。デジタルデトックスを身体験できる旅行・宿泊プランもあるが、自宅でも簡単に取り組める。SNS・スマホ依存度が高い若年層も、近年は、SNS疲れ・スマホ疲れを感じている。週末限定・数時間限定でスマホの電源を落とし、「他者」「情報」「いいね!」に振り回されることなく静かに自分と向き合う時間を意図的につくることに価値を見出す人はじわり増えている。最も簡単に取り組め、かつ実感しやすい心のセルフメンテナンスの一つだ。以下はデジタルデトックスによる効果を実感している女性の声。
この2月ほどデジタルデトックスして、なんだかとってもすっきりしました。マイナスのなかで積み上げてきたものを、すべてリセットできたような感じ。ようやくなにかをゼロに戻せて、またもう一度、新しく始めていきたくなりました🍀
— Sayu FUJINO (@sayudiary) 2019年5月1日
旅行
ご朱印ガール、仏閣巡り女子、宿坊などが幅広い年代の女性の心を掴んでいる。理由は新しい体験による心のデトックス効果の高さ。心のセルフメンテナンスを求めている女性はミーハーな場所への旅行よりも「ヘルスツーリズム(ヘルスケア×ツーリズム)」「ボランツーリズム(ボランティア×ツーリズム)」「体験型ツーリズム」のようなテーマ型の旅行を選択する傾向にある。
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占い
占いサイトの利用者は断然女性に多いのは周知の事実。占いを敬遠・毛嫌いする男性は多いが、占いはれっきとした統計学。”占いの館” に通うまではいかなくても、占いサイトをこっそり日常使いしている女性は多い。何かに悩んでいるときの心の支えになっていることも。
インテリアを楽しむ
心が疲弊してしまったときの対策として女性がよく取り組むのが「部屋の掃除」「アロマディフューザーで部屋を良い香りにする」「キャンドルを焚く」「模様替え」。
甘い物を食べる
女性のストレス発散行動として上位に挙がることが多いのが「食事」。特に甘いものはリラックス効果が高く、ほっと一息入れたい時のお供として女性の心を癒している。一方で、ストレスがたまったり心が疲れたときについ甘い物に手が何度も伸びてしまい、体重が増えたりそんな自分に罪悪感を感じて悩む女性も。女性たちが取り組む、ストレス発散のための具体的な方法は以下。
- 食事(15.2%)
- 知人とのコミュニケーション(12.9%)
- 趣味(10.6%)
- 運動(8.3%)
- 映画・ゲーム等の娯楽(7.6%)
- 酒・たばこ等の嗜好品(6.8%)、買い物(6.8%)
- 旅行(5.3%)、カラオケ等で大声を出す(5.3%)
- 寝る(4.5%)
- ペット(1.5%)、アロマ等のリラクゼーション(1.5%)
- ギャンブル(0.8%)
(引用:ウーマンズラボ「ストレス発散消費が活発なのは男?女?」)
検索や投稿
「自分と同じ悩みやストレスを抱えている女性はいないかな?そういう女性はどうやって解決してるの?」。「発言小町」「ガールズチャンネル」「ヤフー知恵袋」「ウィメンズパーク」などのコミュニティサイトを検索・閲覧・投稿することで、同じ境遇にいる女性に共感したり、自身の解決策に役立てるのも、女性にとっては大切なセルフメンテナンス。「検索・閲覧派(傍観者)」と「投稿派(参加者)」とに分かれる。リアルな人間関係では相談できないような内容でも、ネット上のコミュニケーションなら気兼ねなく心を開くことができる。心強いツールだ。
運動
美容・健康目的ではなく、リフレッシュやリラックスを目的に運動をするのは、特に働き盛りの女性によく見られる。「心がムシャクシャしてる」「ストレスがたまっている」「心が疲れた」「(失恋、仕事の失敗、夫と喧嘩など)ショックなことがあった」など、ネガティブな出来事をきっかけにジョギングを始めたり、ホットヨガや暗闇フィットネスなど新しい運動に挑戦する。癒し効果・リフレッシュ効果の高さから、運動行動が定着するケースも。実際うつ病患者の治療法の一つに運動がある。
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おこもり美容
美容そのもののために行うこともあるが、心が疲れ切って外出するのも家事をこなす気力も起きないときに取り組めるのが「おこもり美容」。週末1~2日間、一切外出せず美容に良いことだけをする。例えば「朝食は果物たっぷりスムージー」→「朝食後は動画を見ながらヨガ」→「オーガニック素材のみのランチ」→「ランチ後は、2時間かけて入浴」→「お風呂上りは、デジタルデトックスを兼ねた読書タイムで静かに過ごす」といった具合。美容雑誌や女性誌も「おこもり美容」を積極的に提案する。
昨日で仕事納めだったので、今日からおこもり美容しています🐹🏠
インナーケアをしようとnatohaの黒人参茶を購入したのですが、飲みやすくてとても気に入りました☺️(色のインパクト強め)
鉄分・βカロテン・ビタミンCが豊富な黒人参がベース🥕
10包入りで1400円です☺️ pic.twitter.com/pXy6xyziv1
— あやんぬ (@yannu61) 2018年12月29日
おこもり美容のお供に最適な、おすすめボディケアアイテム。2018年クリスマスコフレ傑作集。 https://t.co/Rn8Sx2VhYw pic.twitter.com/P7COUtG4tM
— VOGUE JAPAN (@voguejp) 2018年12月3日
他、読書やショッピング、女友だちとのコミュニケーション(女子会や電話、ライン)も、心のセルフメンテナンスの王道。
セルフメンテナンスのマーケティングヒント
女性が取り組むセルフメンテナンスには「お金がかからない」「気軽・簡単に取り組める」「新しい体験や感情を提供してくれる」といった共通点がある。セルフメンテナンス関連の商品・サービス・情報で女性の心をつかみたいなら、この要素のいずれかは入れ込みたい。
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