国際賞「アジア健康長寿イノベーション賞2024」発表、高く評価された各国の取り組み

急速に高齢化が進むアジア地域で、健康長寿の達成や高齢者ケアの向上に資する優れた取り組みを表彰する国際賞「アジア健康長寿イノベーション賞2024」の受賞者が1日、発表された。日本政府による「アジア健康構想」の一環として、東アジア・アセアン経済研究センターと日本国際交流センターが2020年に創設した国際賞で、今回で4回目。日本を含むアジア12カ国・地域から応募があり、「テクノロジー&イノベーション」「コミュニティ」「自立支援」の3分野で7団体を表彰した。

今年の応募傾向としては、生涯学習に焦点を当てた取り組みが増加。高齢者自身が自分の健康と福祉について意思決定できる教育機会や収入向上の機会を提供する取り組みや、デジタル社会における情報格差やデジタルリテラシーに着目した取り組みが目立った。

テクノロジー&イノベーション部門

【大賞】高齢化率70%、僻地での医療介護インフラを整備(日本)

大崎下島(広島)は、人口約1,600人で高齢化率70%の過疎地。少子高齢化や人口流出により、慢性的な医療・介護サービス不足に陥っており、自宅にも介護者がおらず、在宅療養や看取りが難しい環境にあった。Nurse and Craft株式会社(広島・呉)は、そんな大崎下島を“未来の日本の姿”と捉え、健康不安がないまちへ再生することを目指し、訪問看護ステーションの設置、IoTヘルスケアサービスの提供、ヘルスツーリズムなどを実施。地域の課題解決に積極的に取り組んでいる。人口減少が進む過疎地における事例として、僻地での医療介護インフラを整備した点や、地域住民が活動的で充実した生活を送るためのモデルを開発・実装したことが高く評価された。

国際賞「アジア健康長寿イノベーション賞2024」受賞者①

【出典】公益財団法人 日本国際交流センター

 

【準大賞】高齢者の健康状態を見守るタブレットで、社会的孤立を防止(シンガポール)

高齢者の社会的孤立を防ぐため、高齢者が使いやすいタブレットデバイスを開発し、日々の健康状態を見守ることを実現した。ユーザーである高齢者が「I am OK」ボタンを押すことで、自身が無事であることを知らせることができる仕組みで、デバイスへのチェックインがない場合は、家族などに安全確認を促す連絡が届く。タブレットには、娯楽、学習、健康関連の機能も。高齢者のデジタルリテラシーを向上させる事例として評価された(ライオン・ビフレンダ―ス・サービス協会による「アイム・オーケー・プログラム」)

 

コミュニティ部門

【大賞】災害多発地域で高齢者の健康を守る若者バイカー、3.7万人に提供(フィリピン)

災害多発地域であるフィリピンでは、高血圧や糖尿病などの慢性疾患を抱える高齢者が最も脆弱な人々とされ、合併症の早期発見と有事における対処として、日々の健康管理が求められている。地域福祉活動を行うパディアレスキュー(フィリピン・パンガシナン州)が取り組む「ゴー・バイク・プロジェクト」は、そんな課題に着目したもので、高齢者の健康を定期的にモニタリングする若者を育成している。彼らは「ゴー・バイカー」と呼ばれ、自転車に救急キットや医薬品など、基本的なヘルスケアを提供する物品を備え、各地形を走破。遠隔地に暮らす高齢者の血圧や血糖値をチェックし、記録している。災害への備えや減災の知識を共有するための訓練も受けており、これまでに認定されたゴー・バイカーは1,200人超え。3.7万人にサービスを提供してきた。若者たちに健康維持・増進の重要性を意識させる役割も果たしている点も、高く評価された。

国際賞「アジア健康長寿イノベーション賞2024」受賞者①

【出典】公益財団法人 日本国際交流センター

 

【準大賞】元気な高齢者が高齢者を支援する仕組みを開発(シンガポール)

規定のトレーニングを受けた元気な高齢者が、支援を必要とする近所の高齢者をサポートすると報酬を受け取れるいうプログラムを開発。支援内容は食事の配達や服薬のリマインド、病院への付き添いなど、内容は日常生活にまつわる小さなタスクなので、参加のハードルは低い。高齢者の生きがいや収入向上の機会を提供する点が、評価された(タイ・フア・クアン・モラルチャリティ、統合ケア機構による「高齢者のためのマイクロ・ジョブ・プログラム」)

 

自立支援部門

【大賞】国内2,500のスクールで実施、高齢者のデジタル職業スキルを育成(タイ)

労働力人口が減少するなか、タイでは高齢期まで働き続けることを望む人が多いにもかかわらず、デジタル社会で継続的な収入を得るためのスキルやツールをもつ人は多くない。そんな課題を解決しようとチェンマイ大学の生涯教育学部が取り組むのが、高齢者への教育。国内2,500の高齢者スクール、政府、民間、地域機関との協力のもと、オンラインビジネスの立ち上げ方やデジタル技術の使い方などといった職業スキルを教え、高齢者の自立を促す。財務管理や心身の健康に関する教育プログラムもあり、高齢者の教育機会と収入向上の機会を提供する事例として高く評価された。

国際賞「アジア健康長寿イノベーション賞2024③

【出典】公益財団法人 日本国際交流センター

 

【準大賞】エビデンスに基づいた体操をICTを通じて提供(日本・徳島)

口腔や四肢の体操、脳トレ体操、脳トレクイズなど、1万種類以上の組み合わせから、高齢者が運動・体操プログラムをオンラインで受けられるシステムを、産学連携で開発。提供するプログラムはエビデンスに基づいたもので、パーキンソン病患者を対象とした研究では、半年から一年の利用で運動能力や認知能力に改善が認められた。エビデンスに基づいた体操をICTを通じて提供し、利用者のフレイルを予防している点などが評価された(徳島大学大学院医歯薬学研究部先端脳機能研究開発分野、ビューティーライフ株式会社による「産学連携による高齢者のためのオンライン体操サロン」)

 

 

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