東南アジア新興国で盛り上がる医療ツーリズム、各国の最新動向

東南アジアの新興国で、医療ツーリズム市場が活況を呈している。各国間で市場成長率に差はあるものの、いずれの国も、言語・伝統文化・医療水準など自国の強みを活かし、政策レベルでインバウンドの取り込みを強化している。東南アジの新興国では、人口増加や高齢化に伴い医療・介護・健康などヘルスケア市場の急成長が見込まれており、日本はこういったヘルスケア市場の需要に対応できるだけのポテンシャルがあるものの、アウトバウンド・インバウンド共に十分に事業展開ができているとは言い難いのが現状だ。そこでトーマツが、日本事業者の国際展開を目的に、医療インバウンドの先進国の取組や、日本への医療インバウンドのターゲットとなる国々の基礎情報や医療インバウンドの取組を調査し、レポートにまとめた。各国の医療ツーリズムの状況は以下経産省「令和5年度「ヘルスケア産業国際展開推進事業報告書」

■中国

中国では国内・国外で医療ツーリズムをする人が増えており、市場規模が年々拡大。最多の目的は「重い病気の治療」。渡航先のトップは日本(2016年)。だが国外の医療ツーリズムならではの課題も顕在化しており、「帰国後の体調管理」が懸念事項として指摘されている。

■ベトナム

ベトナム人による医療渡航消費額は約20億ドルに達しており(2017年)、ベトナム国内の医療供給力が、需要に対し不足していることが背景にあると考えられている。主な渡航先はシンガポール、マレーシア、韓国、タイだが、これらの国と比べ日本の病床数・医師数は上位にあることから、日本はベトナムからの医療需要に対応できる可能性がある

■インドネシア

インドネシアの富裕層のほとんどは、外国の医療サービスを利用することを好む傾向にあり、ケアのためにシンガポールやマレーシア等に渡航する人は年間約100万人いたが、インドネシア政府は国内でのケアと外国人観光客の誘致に向けた政策に着手している

■フィリピン

フィリピンは医療渡航を推進するプログラムを策定しているが(2016年)、政府の取組が断片的かつ競合国と差別化する医療サービスが確立できておらず、発展途上にある

■インド

インドの医療渡航市場は、外国人入国者数の増加で拡大。市場成長の要因は、欧州や北米、東南アジアなどと比較し医療費が割安であることや、政府が積極的に患者の誘致を進めていること。ウェルネスツーリズムも発展しており、ヨガやアーユルヴェーダなどの伝統的医療を活用している

■バングラデシュ

バングラデシュでは自国の医療水準に不満を抱える人が多く、自国では受けられない先進医療や質の高い医療サービス、衛生的で安全な治療環境を求め渡航している。人気の渡航先はインド、タイ、マレーシア、シンガポール

■ミャンマー

急速な経済発展により、経済的に豊かな患者や外国人駐在員を中心に、自国では受けられない質の高い医療を目的に、医療渡航者が増えている。主な渡航先はタイ、インド、マレーシア、シンガポール

■シンガポール

シンガポールの物価・医療費は近隣国と比べ高いが、医療や医療機関のホスピタリティの質の高さから特にインドネシアから患者が訪れている。シンガポールの健康水準・医療水準はマレーシア・インドネシアと比べて高く、アメリカ・日本と比べても遜色はない

■マレーシア

マレーシア政府が医療渡航の推進に取り組んでおり、メディカルツーリズム専門機関の設立やヘルスケアトラベルブランドの開発を進めている。年間約120万人の外国人がマレーシアに医療渡航しており、市場規模は拡大。マレーシアへの医療渡航の目的は、健康診断(45%)、次いで消化器系疾患(10%)。インドネシアからの渡航が全体の約65%を占める

■タイ

タイ政府は2004年以降、医療渡航の推進に注力しており、タイへ医療渡航する外国人は急速に増加。市場は急速に成長している

 

女性ヘルスケア白書2024 市場動向予測レポート

 

 

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