緊急避妊薬の市販化、8割の女性が「今後も利用したい」 試験販売の結果報告
厚労省は10日、緊急避妊薬の市販化に向けた試験販売事業の結果報告書を公表した。同事業は、医師の処方箋無しに薬局で緊急避妊薬の適正な販売が可能かを検証するもので、全国145の薬局が協力した。緊急避妊薬の販売数は2023年11月28日~2024年1月31日までの2カ月間で、2,181件。都道府県別で最多は東京都の266件で、次いで神奈川県231件、大阪169件と都市部での販売数が多かった(厚労省「緊急避妊薬販売に係る環境整備のための調査事業 報告書」)。
薬剤師が販売可能と判断、9割
薬剤師が緊急避妊薬の購入希望者に対し、「販売可能」と判断したのは、解析対象となった1,982件のうち1,836件で約9割に上った(※)。避妊指導が求められたり性感染症の可能性があるとして「販売可とするが受診が必要」と判断したのは118件、妊娠の可能性などから「販売不可」と判断したのは28件だった。※解析対象者は、緊急避妊薬を販売した2,181件のうち、同事業の研究参加への同意撤回者等を除いた1,982件
- 販売可…1,836件(92.6%)
- 販売可とするが受診が必要…118件(6.0%)
- 販売不可…28件(1.4%)
何らかの相談や質問を受けた薬局、約7割
薬局への事後アンケート調査では約7割が、電話・来局時・販売後を問わず購入希望者から質問や相談を受けていた。緊急避妊薬と生理・妊娠に関する相談が多く、最多は「緊急避妊薬の効果について」で55件だった。
■緊急避妊薬に関する相談
- 効果について…55件
- 成分、作用機序、副作用等について…52件
- 相互作用や飲み合わせについて…48件
- 安全性について…35件
■生理や妊娠に関する相談
- 生理について…48件
- 妊娠について…42件
- 妊娠するかもしれない不安に関する相談…27件
- 避妊法や避妊具について…25件
- 妊娠検査薬について …18件
- 服用後に妊娠してしまったことに関する相談…9件
■不同意性交や性暴力に関する相談
- 不同意性交や性暴力 について…10件
今後も処方箋なしに服用したい、8割
緊急避妊薬の服用者に実施したアンケート調査では、「今後、緊急避妊薬の服用が必要になったらどうしたいか」という質問に、82.2%が「医師の診察を受けずに、薬局で薬剤師の面談を受けてから服用したい」と回答した。
- 医師の診察を受けずに、薬局で薬剤師の面談を受けてから服用したい…82.2%
- 対面で医師の診察を受けてから服用したい…8.4%
- オンラインで医師の診察を受けてから服用したい…6.1%
- 上記以外の方法がよい…3.3%
購入に関する満足度
購入に関する満足度を聞いた質問では、「面談した薬剤師の対応」「説明のわかりやすさ」「プライバシーへの配慮」に対して「とても満足」と回答した人は8割以上を占めた。一方、「支払った費用」について「とても満足」と回答した人は38.4%に留まった。薬局で支払った緊急避妊薬は7,000〜9,000円で、費用を負担に感じる人が多いことがわかった。
購入者アンケートの結果、「薬剤師の対応への満足度」は9割を超え、「今後も処方箋なしに服用したい」と回答した人は8割を超えるなど、緊急避妊薬の市販化に対する購入者の満足度は高いことが明らかになった。一方、日本語を理解できない購入希望者からの問合せを受けた薬局が4分の1を占めるなど、日本に住む外国人や訪日外国人への対応に関する課題などが浮彫りとなった。今回の事業を踏まえ厚労省は、今後の適切な運用方法について検討を勧めていく方針。
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