SRHR意識調査、年代で異なる「避妊・中絶」のイメージ(10〜50代女性)

経口中絶薬の承認や緊急避妊薬(アフターピル)の薬局販売に向けた試験運用が始まるなど、今年はSRHRに関するポジティブなニュースが続いている。2020年以降で議論が活発化した女性の健康課題の解決が背景にあり、中絶の選択肢が増えたことと緊急避妊薬のアクセス改善は特に大きな前進だ。一方で、女性ゆえに感じる性・生殖にまつわる理不尽やモヤモヤはそう簡単には消えない。SRHR領域における女性たちの意識を探った調査結果が公表された。

調査概要

オンラインピル「スマルナ」を運営するネクイノ(大阪)が、10〜50代の女性ユーザー511人(10代 4.5%、20代 42.2%、30代 35.4%、40代 15.4%、50代以上 2.4%)を対象に、SRHRに関する意識調査を実施した(2023.5)。今年4月に国内初の経口中絶薬が承認され中絶の選択肢は増えたものの、SRHRの考え方そのものはまだ一般に浸透しているとは言えず、社会に課題が多く残されていることから実施。女性たちのSRHRの認知状況や、SRHRの概念に含まれる「中絶」「妊娠」などについて意識を探った。

 

SRHRについて

調査結果を見る前に、まずはSRHRについておさらい。SRHRとは、Sexual and Reproductive Health/Rights(セクシャル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)の頭字語で、「性と生殖に関する健康と権利」という意味。エジプト・カイロで1994年に開催された国際人口開発会議(ICPD/カイロ会議)で提唱された。「性と生殖に関する健康と権利」のうち「健康」は、性や生殖=子を産むことに関わることにおいて身体的・精神的・社会的に良好な状態であることを指し、「権利」は、自分の意思が尊重され自分の意志で自分の身体に関することを決められる権利のことを指す。

要は、誰もが性・生殖に関して自由に選択できる権利を持ち、誰もが健康的な性的活動と生殖活動ができる社会を実現するための概念で、貧困、医療格差、男性中心主義・男性優越主義による女性差別や性暴力、性感染症、異性愛規範をベースにした性的マイノリティーへの差別など、性・生殖に関する様々な問題を解決するために掲げられた。

【出典】ネクイノ

 

言葉の認知度は2割、10・20代で高め

「SRHR」の言葉の認知について聞いたところ、「聞いたことがあるし意味も知っている」はわずか5.7%だった。残りは「聞いたこともないし意味も知らない」77.3%、「聞いたことはあるが意味は知らない」17%で、約9割はSRHRを知らないという結果に。SRHRは、業界人の間でもようやく知られるようになったばかり。一般に浸透するには、まだまだ時間がかかりそうだ。

【出典】ネクイノ

 

ちなみに、「聞いたことがあるし意味も知っている」と回答した女性の内訳を見ると、10代と20代が多かった。わずか5.7%での内訳となるためこれを全体の傾向と捉えるのは少々厳しいが、認知は若年世代の方が高いようだ。

【出典】ネクイノ

 

女性ゆえに感じる理不尽やモヤモヤ

続いて、SRHRの考え方につながる「性別による理不尽やモヤモヤ」について選択回答で聞いたところ、TOP10は次の結果に。

  • 1位:性に関しての悩みを人に話すべきではない・隠すべきものという風潮を感じる(36.0%)
  • 2位:婚姻関係がある、もしくはパートナーがいたら子どもを産むものだという風潮を感じる(35.0%)
  • 3位:生理についての悩みを人に話すべきではない・隠すべきものという風潮を感じる(33.7%)
  • 4位:生理痛だと言うと「その程度で」「またか」と言われるなど理解されなかった経験がある(26.6%)
  • 5位:親や家族から、「女性なのだから結婚しなさい」「結婚をするな」と言われたことがある(20.5%)
  • 6位:女性からパートナーに避妊を依頼するのは躊躇する(19.8%)
  • 7位:ピルを服用していることで「性に奔放だ」「遊んでいる」などと言われたことがある(16.0%)
  • 8位:自身の性別にとらわれて、自分らしい表現がしづらいと感じたことがある(14.9%)
  • 9位:男性か女性の二択しかないシチュエーションに違和感を感じたことがある(13.5%)
  • 10位:親や家族から「彼氏は?」などパートナーの性別を限定するようなことを言われたことがある(13.3%)

自由回答には、職場の同僚やパートナーの言動で感じたモヤモヤや生きづらさに関する意見が寄せられた。

  • コンドームをしない彼に勝手だなと思った。避妊することをもっと義務教育から「当たり前」だという認識を植え込んで欲しい(20代)
  • 自分以外男性の職場で、自分のいる場であっても女性軽視や男尊女卑の発言がある(30代)
  • 職場で当たり前なことのように既婚で子どもがいないことを不思議がられる(30代)
  • 母親が家事育児メイン担当、父親はできたらやるという責任感のない立場。母親の生きにくさは常に感じる(30代)
  • 中学の時、生理のせいでプールの授業を休む事になり、男子から「ズル休み」などと言われた。プールは大好きだったので、「私は入りたいけど生理が酷いから仕方ないじゃん、世の中理不尽だ」と思った(30代)
  • 行きすぎた男女平等ばかりが進み、女性特有の事情が考慮されていないと感じることが多い。特別扱いをして欲しいわけではないが、実際生理痛などがあることは考慮して欲しいと思う(30代)
  • 20代後半〜30代半ばくらいで就職しようと思うと、必ずと言っていいほど「結婚してるなら近々子どもの予定があるでしょう」ということを言われ、そのことが不採用に繋がっていると感じることがとても多い(30代)
  • いつ子どもができてもいいと思ってはいるものの、仕事を代わってくれる人がいないため、今自分が妊娠したら無責任になるんじゃないかと思ってしまい、なかなかタイミングが掴めずにいる(30代)
  • 出産をすることが女性の幸せだと夫が言っていたこと(40代)
  • 私はバツイチだが、今のパートナーが女性。パートナーは初婚だが、再婚するならこの人と決めていても同性婚は認められていないため、交わすのはパートナーシップのみ…愛した人が同性というだけで、切ない思いばかりする(40代)

 

避妊について

避妊のイメージ

続いて、SRHRの中でもリプロダクティブ・ライツの考え方に関わる「避妊」についてのイメージを聞いたところ、次の結果に。注目したいのは、「避妊は女性主体で行うもの(ピルや避妊リング等を含む子宮内避妊具など)」と回答した女性よりも、「避妊は男性主体で行うもの(コンドームなど)」と回答した女性が多い点。避妊は「自身のライフプランを形成する上で必要でパートナーと話し合って行うものだ」という考えを持ちつつも、実際は男性任せになっている女性が多いことがわかった。

【出典】ネクイノ

  • 1位:自身のライフプランを形成する上で必要なもの(92.3%)
  • 2位:パートナーと二人で話し合って行うもの(90.6%)
  • 3位:男性主体で行うもの(コンドームなど)(69.8%)
  • 4位:女性主体で行うもの(ピルや避妊リング等を含む子宮内避妊具など)(51.5%)
  • 5位:必要だができればしたくないもの(22%)
  • 6位:避妊はするべきではない(6.6%)

自由回答には、女性にとって避妊は人生や健康のために必要である一方で、男性との間に意識差があるなどの意見が上げられた。

  • 望まない妊娠をしてしまった場合、身体的・精神的・(経済的)負担を強いられるのは女性側であるからこそ、避妊はお互いがしっかりするべきで、お互いにしっかり意思表示が出来ることが重要であると思う(20代)
  • 女性が自分の将来を選択するために欠かせない手段(30代)
  • 私自身、小4くらいの時から母親から「彼氏が出来たら必ずコンドームしてもらいなさい!」とよく言われていたので、特に悪いイメージはない(30代)
  • 多くの人に必要で大切な行為のはずなのに、話題にすること自体が恥ずかしい、いかがわしいことのようにされており、日本では学校などであまりきちんと教えられていないように思う(20代)
  • 妊娠を望まないなら絶対に必要だと思う。性病も心配なので男性主体で避妊して欲しいが、快楽優先や妊娠を安易に思ってる男性が多い(30代)
  • 自分らしく生きる為に必要なこと。でも、人によっては遊ぶ為の行為と思われる(40代)

 

 

中絶について

中絶のイメージ

続いて「中絶」のイメージについて質問。最多は「女性側だけの問題とされているように感じる」で約9割に上った。また、身体的理由・経済的理由に関わらず「どういう理由であれ中絶は女性の権利として認められるべきだ」と回答した人は78.1%に上った。

【出典】ネクイノ

  • 1位:女性だけの問題とされているように感じる(89.6%)
  • 2位:母体が危機にさらされる場合は認められるべきだ(84.5%)
  • 3位:どういう理由であれ中絶は女性の権利として認められるべきだ(78.1%)
  • 4位:中絶という言葉に抵抗感がある(69.7%)
  • 5位:経済的に厳しい場合は認められるべきだ(67.7%)
  • 6位:妊娠した以上産むべきだ(13.1%)

 

自由回答には、中絶の選択肢があることの重要性を訴える声が目立ち、若い女性の妊娠や中絶に対して社会や周囲の目が厳しすぎることを批判する声も。

 

  • 母体のためにも子どものためにもできるだけしないことが望ましいと思うが、望まない妊娠をしてしまう人がいる事実に対する世間の理解がもっとあると良いと感じる(20代)
  • 性教育がなされていない子がするというように思えるが、学校(義務教育)でそもそも性についてしっかり教わってこなかったし、性は恥ずかしいこと、性に詳しい=変態という勝手なイメージで、性教育がしっかりできていないことが中絶を責められることに繋がっていると思う(20代)
  • 中絶はだめだ、中絶したら子どもが可哀想だ、などいろいろな意見があるが、産んだ以上ちゃんと育てる義務が発生するし、タダで育てれる訳でもないから、経済力が必要。いろんなことを考慮した結果、生まれた子どもが幸せになる環境を作れる確証がないなら、中絶は必要な選択肢だと思う(20代)
  • 女性の権利として認められるべきものという考え方に賛成しているが、自分の中で中絶に対して否定的な感情があり、考えることが苦しく感じる。若い子が性行為をして妊娠してしまうと社会から弾かれてしまうような現状も問題だと思う(20代)
  • 個人的に中絶は女性の大切な権利の一つだと考えるが、日本では中絶=母親の身勝手・無責任だと捉えられているように感じる(30代)
  • 中絶同意書にパートナーのサインが必要であるのはおかしいと感じている。自分の体の事は自分で決めたい(30代)
  • 性被害に合って、願ってもいない妊娠をしてしまったとき、自分の人生を他人の欲望のせいで奪われてほしくないと思う。中絶する事で罪悪感を持つような世の中にはなってほしくない(30代)
  • 避妊は男女共に各々が選択することができるのに、中絶はすごくハードルが高いものに感じる。むやみやたらとするべきでないことは理解できるけれど、理由があって中絶したいと思うのだから、妊娠した女性自身が望む場合はできるようにするべきではないかと思う。(30代)

 

中絶にネガティブなイメージを持っているのは、10代

前述の結果で「妊娠した以上産むべきだ(13.1%)」と回答した女性の内訳を見ると最多は10代で、「中絶という言葉に抵抗感がある」も10代に多かった。理由までは調査されていないが、「産む・産まない」の自己決定権をまだ十分に理解できていなかったり、周囲からの非難や排斥を避けたいといった意識や倫理観などから抵抗を感じやすいのかもしれない。育児・子育てにおける経済的負担やキャリアへの影響など、出産による人生の変化を明確にイメージできないことも関係しているだろう。この結果を踏まえ同社は、「特に若い年代に対してはSRHRの考え方を含めた包括的性教育(人権尊重を基盤とした性教育)が必要とされていることを感じさせる結果だ」とコメントしている。

【出典】ネクイノ

 

 

中絶する場合、「手術」「経口中絶薬」どちらを選ぶ?

続いて、「中絶を選ぶことになったとしたら、経口中絶薬と中絶手術、どちらを選択するか?」と聞いたところ、半数以上が「経口中絶薬」と回答した。今後の中絶の選択肢として、手術派はかなり少数になると読み取れる結果となった。

【出典】ネクイノ

 

 

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