女性客の取りこぼしを防ぐ、ル・クルーゼのカラー戦略が参考になる
(2016年8月の記事を更新)
長い間女性に支持され続け、その人気が衰えることのない調理器具ブランドのル・クルーゼ。その人気の秘密の一つに「女性の複数の好みに応えているデザイン戦略」が関係しているようだ。
目次
一つの商品で、複数のカラー(世界観)を用意している
商品種類は多くはないのだが、一つの商品に複数のカラーバリエーションを用意している。一つの商品をカラー展開している商品はよくあるが(例えば車だったら、同一モデルでも色だけを変えた黒・白・赤・紺などを用意している)、よくある同一商品の複数カラー展開とは少々異なる。ル・クレーゼはカラーを変えると同時に「そのカラーに合った世界観」を一緒に提案しているのだ。
(A)子育てママの日常をワクワクに~ピンク色の「ルクルーゼ ベビー」~
子育てママは毎日が楽しくバラ色なワケではない。多くのママは時には大きな育児ストレスを抱え、一時的に社会とのつながりが希薄になり孤独を感じることもある。そんなママたちは、子育てに関するグッズや子育て環境を可愛らしく演出することで、赤ちゃん自身はもちろんママも「ママの役割」を楽しみたいと考える。ルクルーゼベビーはそれを叶えてくれる世界観だ。ツマミがクマの形をしており、商品本体の色や、背景の世界観は優しいパステルカラーで統一されている。
赤ちゃん・幼児用グッズはママのためのグッズともいえる。
(B)DINKsやキャリア女性のニーズに応えた世界観~ルクルーゼ ブラック~
夫婦共働きで子を持たないDINKsやキャリア女性は、世帯収入・年収が高く、都会的な街中の高層マンションで静かな暮らしを送る。仕事で日頃バリバリ忙しく過ごしているからこそ自宅での時間や空間はシンプルで落ち着いた雰囲気を好む。インテリアもシックでモダンなものを好む彼女たちが選ぶのはこちらのカラー。
DINKsやキャリア女性だけではなく、一人暮らしで週末は友人を招いて自宅で男飯を披露するという男性にも好まれるだろう。
(C)ハウスワイフやロハスを好む女性のニーズに応えた世界観~グリーン~
※こちらの記事中ではあくまで想定ペルソナとして記載している。読者の皆さんがイメージしやすいようにするための仮設なのでその点をご了承いただき、参考までにご覧頂きたい。
ハウスワイフ(高学歴・高キャリアの職を捨て、家庭に入り、家庭で今までのキャリアを活かす専業主婦層のこと)やロハスな生活を好む女性は仕事よりも日々の食事や生活、家族との時間に重点を置く。そのため一つ一つの家事に(食事づくり・掃除・子供の雑巾縫い・夫の衣服の用意など)時間や労力をかけることを惜しまない。
またこの層は都会で人混みや時間に追われストレスを抱えながら生きていくことを嫌い、自然の近くに暮らすことを好む。海の見える丘の上、森や川など自然に囲まれた場所、ビーチ沿いなどを居住場所として選ぶ傾向にある。窓からは緑や海、青空が見え、その景色を大切にした暮らし方をしている彼女たちが選ぶのはこちらのカラー(世界観)。
(D)女子であることをとことん楽しみたい女性のニーズに応えた世界観~ピンク~
※こちらの記事中ではあくまで想定ペルソナとして記載している。読者の皆さんがイメージしやすいようにするための仮設なのでその点をご了承いただき、参考までにご覧頂きたい。
同じ女性でも選択するライフコースや育ってきた環境などで性格や好み、価値観は大きく変わる。サバサバした人間関係を好み自分を「おっさん」と呼び「趣味はプロレス観戦」という男性的キャラクターの女性もいれば(キャリア女性や自立した女性に見られがち)、恋活や婚活を重視し「結婚するなら男性の条件は経済力」と、男性に人生を依存することに抵抗を感じない(つまり自活の人生より、男性の経済力に依存する人生を選択する)キャラクターの女性もいる。
どちらかというと後者の女性の場合は「カッコよさ」「自立した女性」よりも「かわいらしさ」「女子らしさ」を好む。そんな彼女たちが選ぶのはこちらのカラー。
世界観を好むペルソナをイメージする
以上、4つを比較してみると一つの商品でこれだけの様々なターゲットを設定できていることに驚く読者も多いのではないだろうか。上記は弊社ウーマンズがセグメントする20のライフコースの女性とすり合わせた上で仮説を立ててみたのだが、いずれも各ターゲットが好む世界観がしっかりと表現されている。
ユニクロやコンビニ、ドラッグストアのようにオールジャンルの客層をターゲットにしたビジネスを除いては、たいていは商品は絞られたターゲットへの訴求が行われる。しかし、ル・クルーゼの場合は、一つの商品でも様々なタイプの女性の好みやライフスタイルに合わせたカラー戦略(世界観戦略)が展開されており、それが多くの女性に支持され続けている要因の一つとなっているのだろう。
カラー戦略で見込み客の取りこぼしを防ぐ
女性はスペックだけでは満足しない。「そのフライパンをキッチンに並べたとき、私の部屋全体のインテリアを壊したりしないかしら?」「そのキッチングッズを置いておくと料理したくなるような、そんなカワイイデザインかしら」と様々な視点から商品を検討する。
(D)の女性がル・クルーゼの商品を購入したいと思ったとき、(B)のブラックバージョンしかなかったら(D)の女性は購入するだろうか?その女性はインテリアに徹底したピンクのこだわりを持っているのだ。機能面の魅力からル・クルーゼを「欲しい」と思っていても、他のピンクの商品を探しに行ってしまうかもしれない。
徹底したカラー戦略で「見込み客の取りこぼし」を防ぐ戦略事例として参考になる。一つの商品でも複数の見込み客を開拓したい、あるいは見込み客の取りこぼしを防ぎたいという場合は、ル・クルーゼのカラー戦略は参考になるだろう。
【編集部おすすめ記事】
■時短コスメブランドが爆発的ヒット!発想もデザインもカワイイ!
■シニア女性の顔の悩みとは?シニアの心を掴む資生堂のデザイン
■ママ美容師が主役の美容室がオープン、差別化が明確!
■家事代行、管理栄養士による健康ご飯でママニーズを掴む