健康・美容業界で増える「リブランディング」 企業事例・ブランド事例を交えて有効性を考える(2/5)
リブランディング実施の主なタイミング(事例を交えて解説)
1.企業が変化するとき
周年記念
何かしらの変化が起きる時がリブランディングのタイミングになるケースは多い。例えば「周年記念」をきっかけに企業のミッションやビジョンなどコーポレートブランディングを刷新するのはわかりやすい事例。創業時の理念やブランドの持つ歴史的な価値などを伝えるのに適したタイミングだ。
この時、必ずしも完全な刷新が必要なわけではない。もともと企業が持っていた企業理念やコンセプトをその時代に合わせた言葉で再定義するだけでも十分に意義はある。創業時の強さを呼び戻す手段として使える。
例えばキューサイ株式会社。2019年10月に創業55周年を迎えた同社は、それまでの「青汁だけの会社」「まず〜い、もう一杯!」というイメージを刷新すべく、ロゴとコーポレートスローガンを大きく変更した。
サプリメントやスキンケア商品の販売など、美容と健康全般に力を入れている中(ラインナップは80商品,2019年10月時点)、時代の変化や事業内容に合わせて自社を再定義する必要があったと言う。時代遅れ感を否めない印象のあった丸っこいロゴは一新され、シンプルなロゴへと生まれ変わった。
そして同社は、リブランディングのタイミングに合わせ、青汁の象徴でもあるケールの成分を入れた新スキンケアブランド「スキンケールド」を発売した(2019年10月)。
これまで“キューサイ”や“青汁”とは無縁だったミレニアル世代やZ世代が振り向くような世界観で、シンプルなパッケージデザインとボタニカルな雰囲気に今時感があり目をひく。
発売以降はSNSマーケティングに力を入れており、インスタ映えする写真が女性たちから投稿されている。投稿写真を見て「韓国コスメだと思った!」という声も上がったほど(※)。同社はこの化粧品を「塗るケール」と表現しており、これも、ナチュラル派志向の女性を振り向かせる作戦だ。インスタには「スーパーフードは『塗る』時代へ」と表現する投稿も見れら、キャッチーな言葉作りにも成功している様子。
(※)「韓国コスメだと思った!」は企業にとっては褒め言葉。10〜20代の若い女性たちにとって今や韓国はコスメ、メイク、ファッションの先進国。おしゃれなパッケージデザインを採用するヘルスケア商品が多いことも、韓国製の商品が日本で人気を誇る理由。話は戻るが、つまり韓国コスメに勘違いされるということは、言い換えれば「インスタ映えに成功している」「デザインで女性を惹きつけられている」ということ。
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グローバル展開
グローバル展開を機にリブランディングするケースもある。海外の人でも発音しやすい・覚えやすいブランド名や表記に変更したり、日本らしさをアピールできるロゴデザインに変更することが多い。
最近だと国内で最も人気のドクターズコスメブランド「ドクターシーラボ」が、ブランド誕生20周年を機にグローバルブランドを目指したリブランディングを実施した(2020年5月に発表)。
主な施策は、化粧品のパッケージデザイン変更、ロゴデザインの変更、ドクターシーラボ初のブランドアンバサダーの採用(初代アンバサダーは、世界で活躍する栗山千明さん)。現在は海外4カ国で販売中(台湾、香港、シンガポール、韓国)。
社名変更、合併・統合
より大胆な企業変化を伝えたい場合には「社名変更」を選択するのも手だ。社名もロゴも一気に変えるので、インパクトがある。
また、このタイミングに合わせて経営理念そのものの見直しを行う企業も多い。同じ「社名変更」でも合併や統合で、社内の事情として、新企業としてのブランド再定義が必要になることもある。
その場合は、リブランディングというよりも “新たな企業ブランディングの構築” に近い。その分割くべき労力は大きくなるが、イメージの大胆な刷新を狙える。なおその際は、単なる過去のブランディング分析だけではなく、目指すべき将来像や合併・統合によるシナジーなどを明確に伝えられるようにすることが大切だ。
企業が変化した時に実施するリブランディングは、顧客など対外的に大きなインパクトを与えると同時に、リブランディングの機会を活用して社員全体の目線を合わせるインナーブランディングにも役立つ。