トレンドは逆転、「美容のために健康」から「健康のために美容」へ、美容企業の取組み 資生堂・ポーラ・ホーユー

美容のためにはバランスの良い食事や適度な運動、入浴、質の良い睡眠など、日々の健康的な生活が大切ーー。「美容」と「健康」が切っても切り離せない関係にあることは、今や女性たちにとって常識だ。そんな意識に応えようと、美容ニーズの高い女性たちの間で「美容」と「健康」がセットで捉えられるようになった10年ちょっと前から、美容や健食、フィットネス系商材を扱う企業などが、こぞって「美容のために健康的な生活を」と語るようになった。だが最近は「美容」と「健康」の関係が逆転し、「健康のために美容」という視点で事業化やPR強化を図る動きが目立ってきた。背景にあるのは急速に進む高齢社会への対応やウェルビーイングニーズの高まりで、特に美容企業の取り組みが顕著だ。資生堂、ポーラ、ホーユー、各社の事例を見ていこう。美容行動が心身の健康に与える影響は、未知数だ。

化粧療法で健康寿命延伸(資生堂)

資生堂が提供するのは、「化粧療法」をベースに高齢者施設などで開催する美容教室。同社が定義する「化粧療法」とは、スキンケアやメイクを通じて心身の機能やQOLの維持向上を図る療法で、介護予防や健康寿命の延伸を目的にしている。実際に化粧療法により、認知機能低下の抑制や握力向上、唾液分泌増加による口腔ケアの効果を明らかにしており、美容行動促進による高齢者の健康維持・増進に貢献している。

同社は70年代に高齢者向けの美容サービスを開始し、90年代から、化粧が高齢者にもたらす好影響について研究を始めた。そして2013年に、ソーシャルビジネスとして美容教室を事業化。教室は約1時間の構成で、専門スタッフによる指導のもとストレッチから始まり、スキンケアとメイクアップを行う。以下動画は美容教室の様子。

 

幸福度を上げる美容行動を研究(ポーラ)

ポーラが近年強化しているのは、「幸せ研究」。幸せのメカニズムを科学的・多角的に分析し、幸福度を高めるための意識や美容行動の条件を突き止めている。これまでに明らかにしてきたのは例えば、

  • エイジングをポジティブに捉える人は、幸福度が高い
  • 美容習慣のある人の方が幸福度が高い
  • 幸せになるための美容ルーティンを解明
  • 幸福感を高めるための入浴法を解明

 

化粧品メーカーとして美容効果を高めるための健康行動を提案するのではなく、心の健康のために必要な行動やマインドを提案するスタンスは、資生堂と同様。あくまでゴールは”健康”で、”美容”はその手段に過ぎない。

この幸せ研究を行うのは、2021年に同社が創設した「幸せ研究所」。創設にあたり同社社長の及川美紀氏は、「少子高齢化によるマーケット縮小、人手不足、環境問題など、社会がさまざまな課題を抱えている今だからこそ、幸せを研究する」と語っている。以下は研究成果の公開動画。

 

ヘアカラーの実施有無による健康状況の違いを解明(ホーユー)

頭髪化粧品のホーユーも、美容行動による健康効果を解明している。20〜69歳の女性1,040名を対象に髪と心の関係について調査を実施し、ヘアカラーが心理的・社会的な健康や幸福度を高めることを明らかにした。

調査対象者のうちヘアカラーをしている女性に、ヘアカラー前後の気持ちの変化として以下4項目を聞いたところ、満足度や意欲が「高くなる」と回答したのは、いずれも6〜8割に上った。

  • 自分の外見への満足度
  • 外出への意欲
  • 人と会うことへの意欲
  • 生活の満足度

【出典】ホーユー

 

興味深いのは、「ヘアカラーを実施しているグループ」と「実施していないグループ」の現在の心理状態の差を明らかにした点で、「普段の気分」「健康状態への満足度」「生活の充実度」「気持ちの穏やかさ」など心理的健康に関する項目においても、「人間関係の満足度」「社交性」「外出回数」「旅行頻度」などといった社会的健康に関する項目においても、スコアは総じて、ヘアカラー実施者が非実施者を上回る結果となった。これらのことから、ヘアカラーをしている人はポジティブかつアクティブで、より幸福度が高いことが示唆された。

【出典】ホーユー

 

 

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