CSRやボランティアとしての参加はNG、認知症×企業で製品を開発 リンナイの事例

当事者のニーズをとらえた製品・サービスを、認知症の当事者と企業が共に開発する「当事者参画型開発」。真にニーズのある製品・サービスを開発することで、認知症増加に対応できる社会の構築や当事者の社会参加促進を目指しているもので、高齢者の増加に伴う認知症の増加が今後加速することから、企業にとっては”新たな商機”にも。今、企業や自治体が関心を寄せている新しい取り組みだ。

その先行事例を紹介する「認知症イノベーション・カンファレンス」の動画が、先月公開された。今年3月に経済産業省がオンラインで実施したもので、当事者参画型開発を進める自治体や企業が、これまでの取り組み内容や開発背景について講演した。

特に参考になるのは、認知症フレンドリーなまちづくりを積極的に進める自治体として注目される福岡市と、福岡市による「認知症フレンドリーシティ・プロジェクト」に参加しているリンナイの取り組み。

福岡市が目指すのは、認知症の当事者やその家族を支援する体制を整備した”サポートシティ”ではなく、当事者が安心して暮らせる環境を整えた”フレンドリーシティ”。2040年に福岡市の認知症の高齢者が今の2倍近くの7万人に上るとの推計から、2018年に「認知症フレンドリーシティ・プロジェクト」を始動し、これまでに、自治体として世界で初めて、コミュニケーションケア技法の「ユマニチュード」を導入したり、認知症の人が安心して外出できるよう、施設や小売、公園、歩道などの空間デザインに関するガイドラインを策定し手引きを制作してきた。認知症の人が活躍できるよう、企業との協働に向けたマッチングの機会も仕組み化。そんな取り組みの中で誕生したのが、リンナイが認知症当事者と協働で開発を進めた、ガスコンロの「セイフルプラス(今年2月に発売開始)」。高齢者・認知症に配慮したガスコンロで、左右のコンロの操作ミスを防ぐカラーリングや、聞き取りやすい音声案内などを採用している。年齢や病気の不安から料理を諦めていた人も、安心して使えるガスコンロだ。同社はガス業界の課題とされている”高齢化によるガスコンロの離脱”を防ぎたい狙いもあることから、参加を決めた。

動画の前半では、福岡市のこれまでの取り組みやプロジェクト背景などを同市が解説。中盤では、リンナイが当事者やその家族などと開発に至った背景、協働の進め方、認知症フレンドリーな製品としての特徴を解説している。

当事者と企業の協働にあたり福岡市は、参加企業に対して「ボランティアやCSRの取り組みという位置付けでは参加しないでほしい」と企業に約束させているといい、認知症当事者は今の顧客でもあり将来の顧客でもあるという視点で取り組みを推進してほしいとしている。”サポートシティ”ではなく”フレンドリーシティ”とは何なのか?未来の持続性ある高齢社会やヘルスケア社会のあり方についても考えを巡らせながら視聴すると、新たな商機が見つかるはず。動画視聴はこちら(YouTube)

 

 

 

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