マーケターと母親が描く”母親像” に乖離 産後うつへの社会的関心で今が変革期に(2/3)
育児中の母親を苦しめる “母親像” と “妻像”
理想と現実のギャップの間で苦しむ母親たち
育児ストレスを生み出している要因として、社会が求める“母親像”と“妻像”の影響が大きいことは否めない。ソーシャルリスニングやウーマンズラボ編集部の取材でも、社会や男性が求める“母親像”と“妻像”と実際の自分の乖離に悩み、自分を母親・妻として肯定できない女性を多く見かける。彼女たちを苦しめ追い詰めているのは、例えば次のような「こうあるべき」だ。
女性マーケティングヒント
母親としての「こうあるべき」
- 出産したら、母親は仕事をやめて家庭に入るべき(あるいは、働き方・職場を変えるべき)
- 育児に専念するために、夫ではなく私の方が自分のキャリアを断念・中断すべき
- 母親が育児全体を主導するべき
- 子どもの急な病気・怪我・健康管理は、母親が第一に対応すべき
- 母親として家事を完璧にこなすべき(食事は全て手作り、家は常にきれいに片付いている、など)
- 母親として家族との時間を第一優先にすべき
- 「仕事」「育児・家事」「美容・ファッション」をそつなくこなす、キラキラしたワーママであるべき
- 母親は子どもの人間関係のためにママ友付き合いの維持に努めるべき
- 母親はどんな時でも正しく、強く、元気で、包容力があり、優しくあるべき
- 母親は常に倫理的・道徳的な行動をとり、子どもの手本となるべき
妻としての「こうあるべき」
- 夫は仕事をしているので、専業主婦である妻は育児・家事を全てやるべき
- 妻は夫を支えるべき(夫の決断や行動を常に応援し、夫の身の回りの世話をする、など)
- 「これも仕事だから」と言って頻繁に飲みに出かける夫を、理解ある妻として気持ちよく送り出すべき
- 妻として料理上手であるべき(さらに、夫の食の好みに応え、健康をも考慮するべき)
- 妻として人前では夫を立てるべき
- 妻として夫の人間関係(友人・同僚・親族)と仲良くするべき
- 妻として夫の仕事服には常に気を遣うべき(クリーニングやアイロンがけなど)
- 妻として、そして女性として、夫の前で美しさを維持するべき
こういったたくさんの「こうあるべき」が、母親になった女性たちの心の負担を大きくし疲弊させている。家庭内で求められる女性の役割が大きすぎるのだ。仕事をしている場合はさらに疲労困憊に。
もちろん各家庭によって異なるが、性別役割分業の意識が根強い日本では、やはりまだ「家庭のこと・育児のことは妻が主導するもの」という暗黙の了解のもと生活をしている夫婦が多いのが現状だ。
女性マーケティングヒント
母親たちの育児ストレス、怒り、リアルな声
社会や夫が求める“母親像” や “妻像”に近づこうと努力を重ねるも、思うように自分自身の気持ち・行動・育児をコントロールできずに悩む母親たち。そんな彼女たちの育児ストレスの声に耳を傾けると、育児そのもののストレスや子どもに対する怒りよりも、非協力的な夫へのイライラ、うまく育児ができない自分自身に対するストレス、そして、ストレスと罪悪感の葛藤に苦しむ様子が見えてくる。以下では、産後のストレスについて質問サイトに投稿している3名の女性をピックアップ。
産後2週間「私は母親失格」
産後2週間の女性による投稿。「生まれた我が子はかわいいけれど、子どもが泣き止まないとパニックになる。2人きりになるのがしんどい。産んだのは間違いだったのでは?自分は母親失格」と、母親になった自分を肯定できずに苦しんでいる。産後うつのような症状であることを本人は自覚しているようだが、自分や社会が描く”母親像”とは異なる自分自身を受け入れられずにいる。(yahoo知恵袋)
「専業主婦はどんなに体調が悪くても育児は全てやるべき?」
育児中の専業主婦による投稿。「体調が悪くても何があっても、育児は全て自分がやるべきなのか?」と質問している。経済面で夫に頼っていることから引け目を感じ、「夫に食べさせてもらっているのだから、専業主婦である私はどんな時でも頑張らなくては」といった類の悩みは専業主婦に多く見られる。(yahoo知恵袋)
産後1ヶ月「旦那にイライラ、でもそんな自分を許せない」
産後1ヶ月の女性の夫は、基本的には育児に協力的。けれども“ギャン泣き”の対応や寝かしつけなど、精神的にも時間的にも体力がいる部分については非協力的。睡眠時間が1時間しか取れない日もあるほどの睡眠不足でフラフラになっている彼女を尻目に、夫は読書やDVD鑑賞で趣味の時間をしっかり確保。夫へのストレスを感じつつも、そんな自分を許せずにいる。(yahoo知恵袋)