マーケティング戦略の基本と女性をターゲットにしたビジネスの考え方

事業成功に欠かせないマーケティング戦略。しかし、弊社ウーマンズに寄せられるご相談で多いのが「マーケティング戦略が曖昧なまま新規製品開発に着手。生産体制は問題ないがこの後、どう動いていけば良いか販路開拓の方法が分からない」「広告出せば売れると思っていたからとりあえず新製品を作ってみた。しかし売れ行きが良くない。どうすれば良いか?」といった内容だ。初期の段階で自社のマーケティング戦略を策定しておけば、このような事態に陥ることを防ぐことは可能だ。

「新たに製品やサービスをつくって、売り出してみよう!」「新規出店しよう!」という時点なら、いきなり開発に着手するのではなくまずはマーケティング戦略の設計から着手し、「既存の製品・サービスの売れ行きがどうもいまいち…」という場合は、広告量を増やしたり広告出稿先を変えるのではなくマーケティング戦略全体の再設計を検討してみよう。

マーケティング戦略はなぜ重要か?

そもそも「マーケテイング戦略」とは何なのか?

マーケティング戦略とは

マーケティング戦略とは「市場を把握して分析し、どのようにアプローチするのか戦略を立てること」で、マーケティング活動を行う上で方針となるもの。具体的には「各種リサーチ」「情報収集」「研究・開発」「各種デザイン化」「各種販売活動」「広報活動」「営業活動」「クレーム対応」など、「一つの製品やサービスを企業が発想し、消費者の手元に届くまで(あるいは届いた後も)の全てのビジネス活動」がマーケティングに含まれる。

マーケティング戦略が重要な理由

マーケティング戦略が重要な理由は主に以下3つ。

  • 消費者インサイトを掘り下げ、消費者が購入したいと思える製品やサービスを的確に提案できる
  • 分析を通して製品やサービスの改善すべきポイントが具体的に見えてくる
  • 余分なコストを削減したり必要な施策に予算をまわせるため、コストパフォーマンスを上げられる

マーケティング戦略を設計することは現状分析でもあるため「限られた経営資源をどこに集中投下すべきか?」「自社の競争優位性は何か?」「ターゲット顧客が何を求めているのか?」「どのようなプロモーションが響きやすいのか?」などが具体的に見えてくる。また消費者ニーズの多様化・細分化が急速に進む市場においては「出せば売れる」市場だったかつてのマスマーケティングで成果を出すことは難しく、緻密なマーケティング戦略設計の重要性はより高まっている。

マーケティング戦略の基本的なポイント

各社の課題や目標、事業規模、予算、認知度、ブランドイメージなどによって設計すべきマーケティング戦略の基本は異なるが、以下5つは押さえておくべき基本的なポイント。(1)~(5)の手順でマーケティング戦略を設計する流れになる。

(1)市場調査

顧客や市場、競合、自社について分析。3C分析やSWOT分析などのフレームワークを用いる。

 (2)STP分析

Segmentation、Targeting、Positioningのことで、それぞれについて分析を行う。

  • Segmentation/市場をグループ化して分ける
  • Targeting/競合に対して優位なセグメントを選定する
  • Positioning/ターゲットとして設定したセグメントにおいて、どのような位置(ポジション)で価値を提供するのか決める

(3)4P分析

4P分析は、企業視点により策定されるもので以下4つの組み合わせを検討する。

  • Product:製品/対象の製品でいかにターゲットのニーズを満たすか
  • Price:価格/価格は適切か
  • Place:流通/どのような方法と経路で製品を流通させるのか
  • Promotion:プロモーション/どうやってターゲット層に認知してもらうのか

(4)4C分析

企業視点の4P分析に対し、顧客視点から4Pを捉え直し新たに提唱されたのが4C分析。以下4つの組み合わせを検討する。

  • Customer Value:顧客価値/4Pのうち、Productに代わる要素
  • Customer Cost:顧客が払う対価/4Pのうち、Priceに代わる要素。顧客がどれくらいの金額や時間を節約し、リスクを避けられるか
  • Convenience:顧客利便性/4Pのうち、Placeに代わる要素。顧客にかかる手間や負担を考慮する
  • Communication:コミュニケーション/4Pのうち、Promotionに代わる要素。顧客と双方向性のあるコミュニケーションを生み出せる手段か

(5)実行と分析

立案した戦略に沿って目標を設定し、実行。そして効果測定を行い改善を図る。いわゆる「PDCA(Plan:計画,Do:実行,Check:効果測定,Action:改善)」と呼ばれる作業。

マーケティング戦略の理解を深める、おすすめ書籍3冊

マーケティングを基礎から学びたい方におすすめなのが、以下の3冊。特に「マーケティング戦略 第5版」は、マーケティングでよく登場する基本のキーワードが分かりやすく解説されており、マーケティング初心者や改めて学びなおしたい人には定番テキストとして役立つ。


マーケティング戦略 第5版


ビジュアル マーケティングの基本〈第4版〉


マーケティング用語図鑑

大手企業と、中小企業で異なるマーケティング戦略立案の課題

大手企業と中小企業ではマーケティング戦略立案の課題が異なるので、マーケティング担当者は自社の企業規模にあわせて以下を考慮しよう。

大手企業のマーケティング戦略立案の課題

一つの製品・サービスを販売するにあたり、「リサーチ専門部署」「研究開発部署」「販売部署」「営業部署」「電話対応部署」「広報部署」など多くの部署や人がマーケティングに関与するため、全員・全部署が同じゴール(マーケティング戦略)”を見て、各業務を実行していくことが困難になる。また、部署ごとの連携のとりづらさもネックになりやすい。立案したマーケティング戦略を確実に実行に移して成果につなげるためには、その製品・サービスに関わる全ての人・部署が常に同じ“ゴール”を見続けるための「全体統制」を図り続けることが、最も重要な作業となる。マーケティング戦略は「点」ではなく「線と面」で取り組んでこそ成果につながるからだ。いかに関連部署・関連担当者全体を巻き込めるかがカギになる。

中小企業のマーケティング戦略立案の課題

中小企業は大手企業ほど部署が細分化されておらず、また社内の人と人との距離が近いため、マーケティング戦略全体をコントロールしやすいのが大手企業と比較した場合のメリット。そのような理由から中小企業の方が実は競争優位性が高かったり、コンセプトが明確な製品・サービスが生まれやすいとも言える。ただしネックは大手企業のように潤沢な予算があるわけではないので、「販売したら、大規模な予算でマス広告出稿、大規模な流通戦略実行」が難しいこと。中小企業はアイディア発想重視型のマーケティング戦略がカギだ。

「女性をターゲットにしたマーケティング戦略の考え方」

上記でご紹介したマーケティング戦略の基本は、ビジネスパーソンの基本知識として広く知られている定番の内容だが、ここからは女性消費者をターゲットに絞ったマーケティング戦略の考え方についてご紹介。コスメ、健康食品、消費財、食品スーパー、ドラッグストア、女性向け下着、女性専用フィットネスなど女性消費者をメインとした製品・サービス展開をしている企業様はチェックを。

女性マーケティング 5つの基本

女性消費者をターゲットにしたマーケティング戦略には数多くのノウハウがあり、また各社の課題や目標、事業規模、予算、認知度、ブランドイメージ、製品・サービス特性などによって適切なマーケティング戦略は異なるが、基礎知識としてまずは押さえておきたいのは以下5点。

1.ターゲット策定はライフコースで考える

ターゲットを策定する際、「30代女性」「40代働くママ」「20代シングル」「60代アクティブシニア」など年齢でくくるケースがいまだに多いが、今の女性の生き方は多様化しており、同じ30代女性でも、「シングル(独身)」もいれば、「子どもを育てる専業主婦」「DINKS(子なし・共働き夫婦)」「パート復職」などが存在する。それぞれ異なるお金の使い方、生活行動、価値観を持っているため、彼女たちを同じ括りにしてマーケティング戦略を設計するべきではない。「どのライフコースを歩む女性か?」の視点でターゲット策定を行おう。

女性のライフコースについて理解を深める記事

2.ライフイベントを迎えるごとに女性の消費傾向、生活行動は大きく変化

女性は「妊娠」「出産」「夫の転勤」「介護」「離職」「復職」「離婚」「夫との死別」などライフイベントを迎えるごとに消費傾向や生活行動が大きく変化する。コーヒー好きの女性を例に考えてみよう。コーヒーが大好きで1日3杯飲み休日は必ずカフェに通っていた女性が、突然ある日を境に一切コーヒーを飲まなくなった。理由は妊娠したからだ。彼女は安心・安全な妊娠出産のためにコーヒーを絶つことにしたのだ。他にも子どもが産まれたことをきっかけに自分優先消費(主に美容ゴトや被服が該当)から家族優先消費(子どもの教育費、家のローン、夫の被服、親戚へのギフトなど)へシフトする傾向も見られる。このように、女性をターゲットにする場合はライフイベントごとに変化する消費傾向や生活行動を常に想定しておく必要がある。

3.予算は2種類

女性にとって予算は「お金」だけではない。男性と比較して一日の生活行動タスク(※)が多い女性にとっては「お金予算」+「時間予算」も「買う・買わない」を左右する重要項目だ。デジタルカメラを購入しようと家電量販店に買い物に来た女性を例に考えてみたい。

要望にかなう予算内のカメラを見つけたが、彼女は結局購入せずに帰ってしまった。なぜか?「時間予算」をクリアできなかったからだ。「購入しても、毎日忙しいからそもそもカメラを持って外に出かける時間がないかも…」「セットアップとか、データ転送とかすごく難しそう…。仕事で忙しいから時間を割く余裕はないかな…」と考えた結果、「時間予算」をクリアできなかった彼女は買わない選択をした。このとき、店員が「カメラは自宅内でも活躍しますよ!お料理やペットを撮影するなど楽しみ方はいろいろです」「セットアップは本日当店で無料にて行いますからご安心ください」といった声掛けをしていれば、彼女は時間予算をクリアでき購入したかもしれない。女性をターゲットにしている場合は、製品・サービス本体のお金予算(価格決め)と合わせて、「時間予算」も考慮したマーケティング戦略が求められる。(※)美容ゴト、家事、育児、親戚づきあい、自身や家族の健康管理など

4.理論より感情

女性は感覚や感情で「好き・嫌い」「買う・買わない」を決めることが多い。男性は清潔感に欠ける店でさらに愛想の悪い店主がいるラーメン屋でも味が抜群なら行列に並んででもラーメンを食べに行くが、女性の場合は例え日本一の味を誇るラーメン屋であっても、「店内が汚いから嫌…」「店主の対応が悪いから行きたくない」と拒絶する。女性は理屈ではなく感情が消費行動に大きな影響を与える。

健康食品を女性に販売するケースで考えてみよう。男性主体の企業のマーケティング戦略に見られがちなのが「エビデンス重視」の戦略だ。パンフレットやHP、パッケージには大学教授の推薦の言葉や研究結果のグラフを記載し、その健康食品の優れた機能性を前面に打ち出す。しかし、理屈や数字・小難しい専門用語よりも感覚的に商品を理解したい女性には、その商品が魅力的には見えない。そのような健康食品よりも、ライザップのCMのように感覚的にベネフィットを理解させ、「私もそうなりたい!」と感情をゆさぶる販売戦略の方がはるかに女性の関心を惹きやすい。特に販売戦略設計の際には、「理論より感情訴求」を意識したい。

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5.女性市場特有のトレンド

3C分析や前述のSTP分析では「顧客を理解する」作業を行うが、女性をターゲットにしている場合に気を付けるべきは、女性市場特有のトレンドを押さえた上で「顧客を理解する」作業を進めることだ。女性市場特有のトレンドを見誤ると、3C分析やSTP分析をどんなに緻密に行っても的外れになってしまう。

ここで指す「トレンド」とは、「チアシードがこの冬ははやっている」「今年のリップのトレンドカラーはレッド」といった短期的トレンドではなく、「働く女性は今後増加し続ける」「女性の未婚率は2030年に向けて上昇傾向にある」などの長期的トレンドを指す。例えば、日本社会全体でこれまで一般的とされていた以下の価値観が変化していることをご存知だろうか。

  • 男性軸より、自分軸へ
    男性から「かわいいね」と見られることよりも、自分軸で「かわいい」と思うスタイル(服装、メイクなど)を重視するのが昨今の女性トレンド。若者の恋愛離れや働く女性の増加で、男性に依存せずとも自立した生き方ができる女性の増加が影響している。
  • いつまでも美しく若くいたい、から「自然体」へ
    永遠の美しさや若さを追い求め過度なエイジングケアを行って加齢に抗うよりも、自然体の美しさを重視するのが昨今の女性トレンド。実際に、「脱アンチエイジング」宣言をする女性誌は増えており、多くの女性に支持されている。外見よりも生き方を重視するという人生100年時代における女性の新しい価値基準の確立が影響している。

上記は一例に過ぎないが、このような女性市場特有の長期トレンドを押えずに顧客分析を行うと、女性の価値観から大幅にずれた状態でマーケティング戦略を設計することになりかねない。女性市場特有のトレンドや価値観変化、消費傾向の変化は常に把握し続けよう。

マーケティング戦略設計の策定プロセス

女性を対象にしたマーケティング戦略設計は、以下の策定プロセスで進めてみよう。ポイントは2つ。1~5の作業を何度も繰り返しながらズレや矛盾を修正していくことと、女性トレンドや消費傾向を常にマーケティング戦略に反映させること。

  • 【1】市場調査
  • 【2】STP分析
  • 【3】4P分析
  • 【4】4C分析
  • 【5】上記内容を「女性マーケティング5つの基本」と照らし合わせ、戦略の修正などを行う
    ※女性市場の「トレンド」「消費傾向」と、自社で策定したマーケティング戦略にズレがないか?の確認作業は必須。マーケティング戦略設計で取り入れるべき「トレンド」「消費傾向」は、どのライフコースをターゲットにするか?や上市のタイミングに依存して異なるため、ウーマンズラボで常にトレンド、消費傾向をチェックしておこう
  • 【6】1~4を再度設計し5を実施(この流れを数回繰り返すことで、より明確なマーケティング戦略設計が可)
  • 【7】PDCA

【補足】女性マーケティング関連のセミナー・講演もぜひご参加ください!

各地で女性マーケティングに関する講演・セミナーに登壇させて頂いております。他社様主催ですので不定期開催となりますが、ぜひご参加ください。各回「分かりやすい」「事例が豊富で現場にすぐ活かせる内容が多い」といったお声を頂いております。最新情報は随時こちらに掲載しています。

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