健康食品の摂取控えは起きるのか?紅麹サプリ問題がもたらした消費基準の変化と本音(20〜70代)

小林製薬の紅麹サプリを巡る問題で、機能性表示食品にとどまらず、健康食品そのものへの不信感や動揺が消費者の間で広がっている。先月末には、紅麹製品との関連が疑われる死者数が、それまでに報告されていた5件から大幅に増加し76件に及んでいることが発覚し、再び露呈された同社の後手の対応に、ネット上では非難や失望の声が相次いでいる。

同社の信頼はもとより、健康食品に対する信頼回復はさらに遠のいた可能性があり、健康食品業界では各社が顧客との今後のコミュニケーションや販促のあり方について対応を迫られている。実際に、機能性表示食品のサプリ市場が縮小しているとの調査結果も出ていることから、市場の行方は各社が気になるところだ。特に男性よりも健康意識・健康行動者率が高い女性による “健康食品の摂取控え” が懸念される。女性たちの健食需要はどうなるのか?編集部が調査した詳細「紅麹サプリ問題で、健康食品の選択基準はどうなった? 女性消費者動向分析でわかった88のキーワード」

健康食品の摂取控えは小規模に、2割

普段から健康食品を摂取していて、かつ、紅麹サプリ問題を知っている20〜70代の女性を対象に今後の摂取意向を聞いたところ、健康食品の摂取控えが起きる可能性のある「健康食品そのものの摂取をやめる」または「健康食品そのものの摂取をやめて、生活習慣を改善して健康づくりをする」と回答した女性は、全体で2割程度にとどまった。一方で最多は「今後も引き続き同じ商品を摂取する」で約7割に上った。

 

「今後も引き続き同じ商品を摂取する」がマジョリティとなったのは少々意外な結果だったが、そう回答した女性たちの理由に耳を傾けると、合点。「今まで数年摂取しているが、体に悪い影響は出ていないので」「長い間使っていて、大丈夫だと思うから」など、これまで継続摂取していて問題がなかった安心感を根拠に、長年接触している企業や商品については全幅の信頼を寄せている様子がうかがえた自由記述回答より。その傾向は、年齢的に消費経験や健食利用歴の長い高齢層で顕著だった。一方で、年齢的な若さから健康食品を必ずしも必要としない若年層は、「健康被害や死のリスクを抱えてまで健康食品を摂る必要ってある?」と、健康食品に対する関心は薄れた様子。「健康食品そのものの摂取をやめて、生活習慣を改善して健康づくりをする」と回答した人の割合は、全年代の中で20代が最も高かった詳細はレポート「紅麹サプリ問題で、女性の消費基準はどうなった?」内の15〜20ページに掲載

 

健康食品を選択する際の、今後の新基準

「今後の健康食品を購入する際の選択基準(自由記述回答)」を聞いた質問では、今後の健食マーケティングのあり方を考えさせられる多様な声が寄せられた。編集部が全回答に出現したワードを集計しテキストマイニングしたところ、88のキーワードが浮かび上がった。印象的だったのは「安心・安全」が「効果・効能」を上回った点。これまで、健康食品を利用している女性たちは「効果・効能」を重視する傾向が強かったが、今後は「安心・安全」と「効果・ 効能」の両方を等しく徹底追求した商品が支持されるようになることを感じさせる結果となった。

とは言え、「安心・安全」と「効果・効能」の両立が重視されるようになるのは、誰しも想定内だろう。発見が大きいのはそれ以外のキーワードで、詳細はレポート「紅麹サプリ問題で、女性の消費基準はどうなった?」内の22〜23ページに掲載しているのでそちらをご覧いただきたい。女性たちの今後の新たな消費基準として全ワードに目を通すと、マーケティング戦略の明確なピースが見えてくる。

 

どうなる?今後の健食マーケティング

当調査では他、「今回の問題で健康食品に対するイメージがどうなったのか?」「健康食品を製造・販売する企業に今後求めること」「普段摂取している健康食品」「普段行っている健康行動」などを聞いた。

ネットニュースやSNSなどには、小林製薬に対してのみならず、健康食品そのものに対する懸念や批判が溢れているが、一方で、「今回の問題で健康食品に対するイメージは特に変わらない」と回答した女性は46%に上った。この問題を「一企業の問題」と捉えていたり、健康食品を普段摂取してはいるものの、さほど健康に関心がないことなどが背景にあり、こういった属性においては、今回の問題による極端な摂取控えは起きないと考えられる。

とは言え、年代別の集計では顕著な意識差が表れた点や、「今、摂取している健康食品は信用しているが、別の商品を新たに試したい」という意識は極めて薄れた点については、しかと心に留める必要がある。年齢やヘルスリテラシー、健康への関心度合いなど、自社がターゲットとしている属性の特徴や、商品が対象としている不調・疾患領域にもよるが、今は見込み客の新規獲得を強化するよりも、現在抱えている顧客と真摯なコミュニケーションを重ね信頼回復に努める方が、良策かもしれない。

レポートでは、本調査の結果と合わせ考察を掲載。ローデータでは各回答者の全自由回答を閲覧できるほか、年代別や今後の摂取意向別、今回の問題で変化した健康食品に対するイメージ別にクロス集計も可。この2点に掲載している調査結果を参考に、ぜひ、各社でさらなる調査やマーケティング戦略設計のヒントに繋げていただきたい。

紅麴サプリ問題 女性消費者動向分析

 

 

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