2050年には16.9兆円へ、注目市場の「患者のQOL支援」で製品・サービス開発が続々 

少子高齢化や長寿化を背景に需要の拡大が見込まれている、不調者・有疾患者・要介護者のQOLをサポートする製品・サービス。経産省の推計では、患者・要介護者・要支援者を支援する市場は、2020年の6.4兆円から2050年の16.9兆円にまで成長するとされ(※1)、何かしらの不調を抱える人の日常生活をサポートする製品・サービスも含めれば、市場はさらに大きくなる。特に早期の充実化が期待できるのが、女性向け製品・サービス。女性の有訴者・有疾患者・要介護者の数はいずれも男性を上回っている上に(※2)、女性の健康行動者率は男性よりも高く需要を掴みやすいからだ。医療技術の進展や人生100年時代の到来で、不調・病気・障害と共生する人が増えている今、「重症化や再発のリスクに怯えることなく、より安心・快適に生きたい」「今の健康度を少しでも長く維持させたい」「できる範囲で通常の生活を送りたい」といったニーズは、今後さらに市場で顕著になっていくだろう。そんなニーズに応えようと、3次予防領域に焦点を当てた製品・サービスの開発が各社から相次いでいる。(※1)令和5年度ヘルスケア産業基盤高度化推進事業 ヘルスケアサービス市場等に係る調査事業(※2)女性の有訴者・有疾患者・要介護者の数は、女性ヘルスケア白書2024内のp.43〜47に掲載

がん患者のQOL向上に徹底特化、治療生活をサポートするアプリ(DUMSC0)

がん患者の治療生活をサポートする「ハカルテ」は、体調や服薬状況を測定・記録する患者向けアプリ(DUMSC0/ダムスコ)。治療中の痛みや痺れ、不眠、だるさといった患者の訴えは医師が過小評価することが様々な研究で報告されていることから、患者が自分の状態を記録して医療者とスムーズにコミュニケーションできるよう、京都大学・京大病院と共同研究のもとアプリ開発に至った。患者は自分の状態を知ることで、より主体的に治療やケアに関われるようになり、より良い治療の選択ができる。患者の自己効力感を高めることを目指し、QOL向上のサポートに徹底特化しているのが特徴。昨年7月にローンチし、4ヶ月で2,000ダウンロードを突破。12月には、抗がん剤などの薬剤に応じて重篤な副作用につながる可能性がある症状を個別に知らせる機能を追加した。

ハカルテ

【出典】DUMSCO

 

 

効果的な治療法がない領域に着目、脳卒中による麻痺を改善するリハビリロボット(桜十字グループ)

脳卒中などにより手指に不自由を抱えるようになった人のQOL向上をサポートする製品も登場。「人生100年時代の生きるを満たす」の実現に向けた取り組みを進める桜十字グループが、北九州市立大学と共同で、脳卒中や脊髄損傷などによる手指の麻痺を改善するリハビリ支援ロボット「Narem/ナレム」を開発した。

 

手指の麻痺を改善するリハビリテーション支援ロボット

【出典】桜十字

 

細かな動きを要する手指麻痺は、これまで効果的な治療法が確立されていなかったが、ナレムでは手指特有の関節ごとの細微な動きまでを再現できるため、従来の治療法を上回る効果が得られる。リハビリに要する時間の大幅な短縮にも成功。従来の手指リハビリ療法では1回につき6時間かかるところ、ナレムは、短時間で一人でもリハビリができるという。検証の結果、1回30分、週2回程度の使用でも効果が認められた。

 

手指の麻痺を改善するリハビリテーション支援ロボットイラスト

【出典】桜十字

 

ナレムの利用者からは改善効果に喜ぶ声が寄せられているという。

・脳卒中で約8年ほど思うように手指が動かせなかったが、1回30分、週2回程度のNaremリハビリ療法を3ヶ月続けた結果、手指が動かせるようになりました(76歳/女性)

・日常の家事が難しく介護をお願いしていたが、Naremリハビリ療法を行った結果、お茶碗を洗ったり、洗濯物をたたむ等の日常的な家事ができるようになり、家族の介護の負担が減ったと喜んでもらえました(53歳/女性)

・手指麻痺の回復を諦めきれずに様々な情報を探していたところ、Naremをみつけリハビリを受けることになりました。約3か月のNaremリハビリ療法により、麻痺した手指を使って食事したり、料理ができるようになりました(70歳/女性)

 

 

日本初、がん患者に特化した運動支援センター(ルネサンス)

フィットネスクラブのルネサンスも、がん患者のQOL向上に寄り添った運動サービスを提供。大阪国際がんセンターの敷地内に2019年にオープンした施設「ルネサンス運動支援センター」で、がん患者の運動指導や各種測定を行っている。センターにはがん専門運動指導士が常駐し、体の痛みや動きづらさに応じた1回60分の運動プログラムを提供する。仕事の復帰に向けた体づくりもサポート。治療中でも利用可能で、施設での直接指導だけでなく、オンラインでも受けられる。

がんの罹患や治療中に起こる不調により、「思うように日常生活が送れない」「趣味ができなくなってしまった」など、QOLが低下するケースは多い。その不調の多くは運動で軽減・改善することが期待できるものの、適切に運動を指導できる人材は少なく、安心して運動できる環境も国内にはほとんどないのが現状。そこで同社は、がん患者に特化した運動支援センターを日本で初めて開設した。以下はサービス紹介動画。

 

 

 

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