サルコペニアの新しい国際診断モデル「GLISモデル」、有用性を明らかに 順天堂大学
順天堂大学循環器内科学の中出泰輔氏らの研究グループは、国際的に提唱された新しいサルコペニア診断モデルである「GLISモデル」の有用性を明らかにした。研究成果は今年10月、『European Journal of Preventive Cardiology誌』に掲載された。
高齢化に伴い心不全患者が増加する中、その予後の悪さが社会的に大きな課題となっている。特に筋肉量や筋力の低下=サルコペニアは、心不全患者の身体機能の低下や死亡リスクの上昇などの予後に、深く関与するとされている。これまでアジアにおいては、筋肉量・筋力・身体パフォーマンスを組み合わせてサルコペニアを診断する「AWGS2019基準」が用いられてきた。しか、欧米では異なる診断基準が用いられ、統一性に欠けていた。そこで、国際的なサルコペニア診断基準の統一を目指して、「GLISモデル」が生まれた。このモデルでは、「筋肉量」「筋力」「単位筋量あたりの筋力」の3つを診断要素にしている。これまで診断に使われていた「身体パフォーマンス(歩行速度や立ち上がり動作など)」は、サルコペニアによって起こる“結果”に位置付け、診断基準からは外した。しかし、この新基準であるGLISモデルで診断されたサルコペニアが、実際に身体パフォーマンスの低下や予後と関連するかは検証されていなかった。
研究は、2016〜2018年に国内15施設で急性非代償性心不全で入院し、独歩退院が可能となった65歳以上の患者891人を対象に行った。GLISモデルによるサルコペニア診断と、身体パフォーマンス(歩行速度、椅子立ち上がり試験、6分間歩行距離など)、2年間の全死亡との関連を検証した。
その結果、GLISモデルに基づいて「サルコペニア疑い」または「サルコペニア」と診断された患者は、非サルコペニア患者に比べて、歩行速度の低下、5回椅子立ち上がり試験の延長、6分間歩行距離の短縮といった身体パフォーマンスの低下を示した。年齢・性別・併存疾患などを調整した解析でも、「サルコペニア疑い」と「サルコペニア」は、独立して身体パフォーマンス低下と関連していた。また、2年間の追跡調査では159名(17.8%)が死亡し、サルコペニアの進行に伴って死亡率が段階的に上昇したことも確認した。さらに、従来のサルコペニア診断基準である AWGS2019基準と比較しても、GLISモデルを組み込んだ予測モデルの方が有意に優れており、リスク分類もより適切に改善された。
研究グループは、「GLISモデルが高齢心不全患者の身体パフォーマンス低下や予後不良を的確に反映することが初めて明らかになった。GLISモデルは、診断に従来必要だった身体パフォーマンスの測定は必要とせず、握力や筋肉量測定などシンプルな測定で構成され、診療に導入しやすい。今後は、このモデルを用いたリスク層別化をもとに、栄養療法や運動療法などの早期介入で長期予後の改善が期待される」としている。
【編集部おすすめ記事】
■フレイル予防のために何をしている?性別・年代で行動者率と認知率に差
■サルコペニア・フレイルのヘルスケアサービス、指針を公開 日本サルコペニア学会
■サルコペニア・フレイルに関する栄養管理ガイドライン2025
■ルネサンス×大阪国際がんセンター「運動チャンネル」開始 がん患者のフレイル予防
■女性ヘルスケアビジネス戦略ハンドブック2025 市場全体像とマーケティング基本施策






















