販路開拓の多様化で新たな健康支援、生活導線を活かした顧客接点作り 〜アデランス・カーブス・ルネサンスの事例〜
生活者との接点作りが、店舗・ウェブサイト・SNS・広告・イベントと固定化する中、従来の枠を越え、“これまでにない場所”を活用する事例が増えている。例えば個室トイレ、エレベーター、店内、タクシー、駅のホーム、フィットネス施設、理美容室、学校、病室など、活用される場所はさまざま。他社との差別化はもちろん、生活者の生活導線上で接点を作ることで、自然な形でアプローチできる点が魅力で、生活者の利便性向上や心理的ハードルの低減だけでなく、行動変容や健康の習慣化にも貢献。単なる “顧客接点の拡張” ではなく、「どこで、どんな状態の人に、どう寄り添うか」という視点の丁寧な発想は、ヘルスケア領域ならでは。女性たちの身近な環境で、ヘルスケアのきっかけを提供する事例を集めた。
目次
全国の理美容室を活用、潜在層との接点拡大に(アデランス)
アデランスが新たなチャネルに選んだのは、理美容室。同社が提携する理美容室を通じてオーダーメイドウィッグを購入できるというサービスで、今年9月に全国で開始した。医療用ウィッグにも対応する。これまでは、同社が運営する店舗や百貨店の催事を活用して販売していたが、来店・来場にハードルを感じている潜在層との接点を広げようと、女性たちにとって身近な存在である理美容室の活用を決めた。サービスの特性上、利用者にとって理美容室は髪の悩みを打ち明けやすい場所。自然な導線でアプローチできるため、相性はバッチリだ。全国15万件の理美容室との提携を目指しており、「ウィッグは理美容室で購入する」という新たな消費行動が、今後女性たちの間で広がるかもしれない。
自社店舗を活用、がん患者の運動習慣をサポート(カーブス×がんセンター)
女性専用フィットネス施設を展開するカーブスと埼玉県立がんセンターは、カーブスが運営する店舗に着目。2者が連携して提供するのはがん患者に向けたサービスで、医師が発行する運動処方に基づき、カーブスのインストラクターが店舗内で個々の運動をサポートする。両者で体調や運動履歴を共有することで、退院後も無理なく運動を続けられる仕組みも構築した。まずは埼玉県で開始し、全国展開を目指す。がん患者の新たな支援のあり方として、ロールモデルとなりそうだ。
病室のテレビを活用、患者の体力維持をサポート(ルネサンス×がんセンター)
スポーツクラブを全国展開するルネサンスと大阪国際がんセンターが着目したのは、入院患者の病室。椅子やベッドに座ったまま実践できる簡単な運動プログラムを映像化し、病室のテレビで放映を始めた。入院患者の体力低下を防ぎつつ退院後の運動習慣につなげるのが狙いで、リハビリ科医師や理学療法士、看護師らがプログラム制作に携わった。入院中の時間を健康づくりのきっかけに変える、医療×運動の新しい試みだ。
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