ヘルスケア市場で参入企業が少ない有望の4領域、編集部が2024年を振り返って厳選

2024年も多様なヘルスケア製品・サービスが各社から生まれ、女性の健康を推進する政策として、国による健康目標やガイドラインの策定女性の健康総合センター開設など、女性ヘルスケア市場が大きく前進する1年となった。昨年から今年にかけては、美容業界の主要企業によるヘルスケア市場参入も相次ぎ、美容・健康の境界が曖昧になる中、デジタルテクノロジー系企業による参入やヘルスケアソリューションの高度化・複雑化も影響し、業界構造の地殻変動は必至だ。企業や事業の短命化も相まって、自社事業の軸を改めて再定義する動きも顕著に。そんな市場環境で、短期的・中期的目線で注目すべき領域とはー?

女性ヘルスケア市場における行政動向や企業動向を日々ウォッチしているウーマンズラボ編集部が、2024年を振り返って4領域を厳選。いずれも、まだ参入者が少なく競争は激化していない注目領域だ。2025年のヘルスケアビジネスの参考に。

ロンジェビティ

日本語では「長寿」「不老長寿」「健康長寿」と訳されるロンジェビティ(Longevity)。今年は国内外での話題が急速に高まった。背景にあるのは、ライフサイエンスやバイオテクノロジーの急速な進展。老化のメカニズムを解明し、老化のスピードを遅らせたり寿命を延ばす技術開発を行う研究やプロジェクトが活発化している。美容・健康・医療・介護の文脈で語られ、国内でも主要メディアの報道を機に認知は徐々に向上。「ロンジェビティ」は、先進性に富んだ研究力と技術力が物を言う領域のイメージがあるが、世界に先がけて超高齢社会を迎えた日本が有する豊富な知見とデータを活用すれば、ビジネスの着想を得ることはそう難しくはないだろう。「健康寿命延伸」と捉えてみるだけでも、自社の強み・リソースを活かした新規事業を発想できるかもしれない。

人生100年時代に突入した近年は、経済面や身体面から長生きに対する否定的な見方が広がっていたが、ライフサイエンスとバイオテクロノジーの進展を背景にした「ロンジェビティ」には、人々をワクワクせる魅力を秘めている。長生きに対する見方やイメージも、今後急速に変化するかもしれない。ロンジェビティブームに備え、今からぜひ準備を。

 

不調者・有疾患者・要介護者のQOL

「実直な成長が期待される領域」という視点から、編集部が一押しするのが「不調者・有疾患者・要介護者のQOL」。不調・病気・障害・身体の不自由と共生する人は、人口の高齢化と長寿化により増加しているにもかかわらず、アンメットニーズだらけのホワイトスペースだ。「不調・病気・障害・身体の不自由を理由に何かを諦めるのは嫌だ、心地よく生きていきたい、自己肯定感を下げたくない」、という生活者のウェルビーイングニーズも背景に、今後の需要増が見込まれる期待の領域だ。

不調者・有疾患者・要介護者を対象にしたQOL領域は、「嗜好的活動の支援」「生活機能(ADL/IADL)の支援」「療養生活の支援」の3つに分類される。

  • 嗜好的活動の支援
    不調・病気・障害がある人の嗜好的活動(スポーツ、学習、趣味、レジャー、メイク、ファッションなど)をサポートする製品・サービス
  • 生活機能(ADL/IADL)の支援
    不調・病気・障害がある人の日常生活(室内外での移動、排泄、入浴、衣服の着脱、服薬管理、整容、家事、外出、買い物、人とのコミュニケーション)をサポートする製品・サービス
  • 療養生活の支援
    不調・病気・障害がある人の重症化・再発・後遺症・機能低下をサポートする製品・サービス

なお、この領域への参入方法は、自社のリソースや強みを基点に上記3つのいずれかを選択し開発するケースと、すでに健常者向けに展開する製品・サービスをカスタマイズして参入するケースの2タイプに大別できる。

ところで、実際にこの領域はどれくらいのポテンシャルを秘めているのか?市場性を見る参考データとして、「女性ヘルスケア白書2024」では、女性の人口推計、女性の要支援者・要介護者数、女性の不調者数ランキングトップ42、女性の有疾患者数ランキングトップ43を統計からグラフ化して紹介しているので、そちらを参考にしてほしい(pp.41-55)

 

「医師の働き方改革」を支援

医師の働き方改革」が今年4月に施行されたものの、医師の勤務環境改善はまだまだ。現場の課題は山積だ。医師に聞いた調査では、7割が「医師の働き方改革施行前と今で、勤務環境は変わっていない」と回答している。タスクシフト・タスクシェアは、医師の勤務時間減少に一定の効果をもたらしているようだが、それも限定的。現場では未だ模索状態だ。医師の働き方改革を実現する”現実的な支援”が求められている。

 

旅行市場に6,700億円の拡大効果をもたらす「UT」

前述した「不調者・有疾患者・要介護者のQOL領域」の一部分を取り出す形にはなるが、今後の成長が期待されるため、注目市場としてピックアップ。UT(ユニバーサルツーリズム)とは、高齢者、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、アレルギーや難病、知的障害や精神障害など、さまざまな心身の状態であっても楽しめる旅行のこと。心身の状態に関わらず誰もが楽しめる旅行の商品化が、宿泊旅行市場で近年注目されている。身体状況に配慮したサービスを宿泊施設などが提供できれば、2050年には旅行市場に6,700億円の拡大効果をもたらすとの試算も出ているから、魅力あるマーケットだ。

UTへの参入というと、宿泊施設や旅行業界に限られた商機のように見えるが、自社を”ユニバーサルツーリズムを支援する側”と定義すれば、自社がすでに持っている製品・サービスを宿泊施設に向けて提供するという発想につながるはずだ。近年は、コンシューマー向けに売り出した製品・サービスを、健康経営ソリューションとして企業向けの販売に切り替える事例が目立つが、健康経営市場は、各社が狙っているため競争環境は激しい。ユニバーサルツーリズムソリューションとして旅行市場に参入する方が、実はスムーズに新規販路を開拓できるかもしれない。

 

 

女性ヘルスケア市場の最新動向2024

ヘルスケア領域の女性トレンドと業界トレンドを、今年度も徹底分析!最新動向を全103ページのレポート「女性ヘルスケア白書 市場動向予測2024 〜健康トレンド・業界動向・女性ニーズ〜」にまとめています。昨年は2,300社にご利用いただいた、毎年人気のアニュアルレポート。ぜひご活用ください!

 

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