フェムテック・フェムケア、次のポテンシャルは「対処市場」「予防市場」の両輪 25年間の時系列調査から考察
本稿は、医療・ヘルスケアに特化した市場調査会社の株式会社インテージヘルスケア(東京・千代田)による寄稿記事です。フェムテック・フェムケア市場における女性の受容性や今後のポテンシャルを、2000年から2025年までの25年間にわたる時系列調査の視点から予測していきます。
目次
長期収集したアンケートを元に市場分析
女性特有の健康課題にスポットライトがあたり、「フェムケア」や「フェムテック」という言葉が登場してからしばらく経ちました。これらの分野は近年ではその熱気もやや落ち着きを見せているようです。しかし、女性特有の症状に悩む女性が減ったわけではありません。株式会社インテージヘルスケアでは、長期的に収集したアンケートデータをもとに、女性の健康に関する悩みの変遷や、今後の関連市場の成長ポテンシャルについて分析しました。
<この記事のポイント>
・生理痛や更年期障害は多くの女性が経験しており、時代が変わっても変わらない悩み
・女性のお悩みの対処率は増加傾向。背景には有職率の増加があり、今後も比例して伸びていくだろう
・症状に対する関心がある層に潜在的なニーズあり。対処だけでなく、予防市場にもポテンシャルあり(更年期障害を例に)
生理痛や更年期障害は多くの女性が経験、時代が変わっても変わらない悩み
インテージヘルスケアが2024年4月に京浜・京阪神の生活者を対象に行ったアンケート調査の結果によると、最近1年間に「生理痛」を経験した女性は10〜30歳代のうち5割前後、「更年期障害」を経験した女性は50歳代のうち約3割、「月経不順」については女性20歳代と40歳代において約2割いることがわかりました。これらの症状経験者は一定のボリュームを占めていると言えます。
次に、症状経験率のトレンドデータを見ていきます。下記に示しているのは16〜65歳女性全体における経験率の推移です。「月経不順」「更年期障害」については2000年度から直近の2024年度まで、「生理痛」については聴取を開始した2018年度から2024年度まで、大きな変化はなく推移しています。時代が変わっても、こういった女性特有の症状のお悩みを抱える女性は変わらずに存在していることがわかりました。
女性のお悩み対処率は増加傾向、背景には有職率の増加 今後も比例して伸長
症状の経験率は変わらない一方で、症状の対処率は増加傾向にあります。1年以内症状経験者が、何かしらの方法で症状を対処したと回答した割合の推移を見ていくと、「更年期障害」は2000年度から2024年度にかけて35%から61%に26pt.増加、「月経不順」も同じ期間で23%から51%に28pt.増加しています。
対処率が増加した要因としては、女性特有のお悩みに対する意識やリテラシーの向上や、対処するための商品・サービスが充実してきたことなど、様々な仮説が考えられますが、そのひとつとして有職率の増加が挙げられます。2000年度から2024年度にかけて、女性の有職率(パートタイムも含む)は、46%から75%まで、29pt.増加しました。女性が働くにあたって、我慢して症状が落ち着くのを待つのではなく、能動的に対処する必要性が高まったのではないかと考えられます。また、近年でも社会保険制度の改革に関する「103時間の壁」や育児休業制度の整備についての話題が多く聞こえてくるように、社会全体としても女性の就業を後押しする流れはますます強まっていくと考えられます。働く女性が増えることで、今後もこういった女性特有の健康課題を積極的に対処しようとする人の割合は増えていくことが見込まれます。
症状に対する関心がある層に潜在的なニーズあり、対処だけでなく予防市場にもポテンシャル
ここまでは症状を経験した方々の対処についてお話ししてきましたが、最後に、症状がまだ出ていない方々も含めた市場のポテンシャルについて、「更年期障害(更年期症状)」を例にご紹介いたします。冒頭で示したチャートの通り、女性50歳代における更年期障害の1年以内の経験率は26%である一方で、「更年期の諸症状に関心がある、または気になっている」と回答した割合は43%に上ります。この中には、現在症状は出ていないものの、将来的に現れるであろう更年期症状に対して不安を抱えている方や、「これから迎える更年期を快適に過ごすために、今からできることがあれば実践したい」と考えている方も含まれていると考えられます。今後は、こうした潜在的な予防(または早期の対策)に対するニーズにも目を向けることで、更年期対策市場のターゲットが広がり、市場の成長に繋がると期待されます。そのためには、生活者の意識改革やリテラシーの向上が重要です。具体的には、更年期を迎える前に準備をすることの重要性や、それに対応した商品・サービスが存在すること、さらにはそれらを活用することで更年期症状による健康への影響を最小限に抑え、日常生活を健康的に過ごせることを生活者にしっかりと伝えていくことが求められます。
【提供】株式会社インテージヘルスケア
幅広い疾患領域における実績、医療やヘルスケアに特化した専門性の高さ、豊富なアセットを活かし、お客様の意思決定につながるインサイトをご提供します。
「生活健康基礎調査」は、生活者の健康状態、健康意識、OTC薬の使用実態を捉えた調査です。1991年より毎年実施しており、本サービスではその調査結果を提供します。本調査結果を活用することで、生活者の健康実態と意識について理解が深まり、より戦略的な意思決定をしていただけます。詳細はこちら。画面右の申込画面からサンプルレポートを無償ダウンロードいただけます。他にも様々なサンプルレポートをご用意しております。インテージヘルスケアのHPホーム画面>メニュー>資料ダウンロード
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