マイページに記事を保存睡眠不足が続くと健康への悪影響が借金のように積み重なる「 睡眠負債」を抱えてしまい、 身体や精神に不調を来すと考えられている。 平日は忙しくて十分な睡眠が取れなくても、 週末に寝だめをすれば睡眠負債は解消されるのだろうか?今回、米コロラド大学教授のKenneth Wright 氏らが行った研究から、 週末に寝だめしても代謝への悪影響は解消できず、 かえって悪い結果になる可能性があることが分かった。詳細は「C urrent Biology 」2 月28 日オンライン版に掲載された。
この研究は、36 人の健康な若年成人(平均年齢25.5 歳) を対象としたもの。参加者を睡眠パターンで3 つの群にランダムに 割り付けて、研究室で9 日間観察した。一つ目のグループでは、 対照群として毎晩9 時間までの睡眠を取ってもらい、2 番目のグル ープでは睡眠時間を5 時間に制限してもらった。3 番目のグループ では、まず5 日間にわたり睡眠時間を5 時間に制限してもらった後 、週末には好きなだけ遅くまで寝てもらい、再び、睡眠時間を5 時 間に戻して2 日間過ごしてもらった。なお、3 番目のグループでは 、研究開始時と比べて週末に約1 時間多い睡眠を取っていた。
その結果、睡眠不足だった2 つのグループでは、 血糖値の調節に働くインスリンの感受性が低下し( インスリン抵抗性が高まり)、 夕食後のエネルギー摂取量と体重が増えていた。
また、 週末に睡眠時間を多く取ると夕食後のエネルギー摂取量は減少した が、再び5 時間睡眠に戻るとエネルギー摂取量は増え、 インスリン感受性が低下した状態が続いていた。さらに、 このグループでは、 特に肝臓と筋肉のインスリン抵抗性が高まっていたが、 週末に寝だめをしなかったグループではこうした変化は認められな かった。
インスリン抵抗性が高い状態が長く続くと、2 型糖尿病の発症につ ながり得る。これまで多くの研究で、 慢性的な睡眠不足は糖尿病と肥満のリスクの増大と関連することが 示されている。こうしたことからも、Wright 氏は、 健康には習慣的に十分な睡眠を取ることが肝要であり、「 健康的な生活習慣には、良い睡眠習慣が必要だ」と述べている。
専門家によると、成人は健康のために1 日7 時間以上の睡眠を取る ことが推奨されている。しかし、ある研究では、米国成人の3 分の 1 以上がこの基準を満たしていないことが報告されている。
今回の研究には関与していない米ノースウェスタン大学医学部教授 のPhyllis Zee 氏は「私たちは、週末に長く眠れば、 平日の睡眠不足を帳消しにできると信じがちだ。しかし、 今回の研究結果によれば、これは神話に過ぎないことが分かった」 と述べている。
Wright 氏は、就寝前にテレビを視聴したり、 パソコンの画面に向かったりするのは、 睡眠時間を奪うだけではなく、 ブルーライトを浴びることで入眠が妨げられる可能性があると指摘 する。また、睡眠は糖代謝だけでなく、 生命の維持に必須のものであり、Zee 氏は「 慢性的な睡眠不足には注意力の低下や精神面にも悪影響が及び、2 ~3 日の寝だめでは、こうした問題は解消できない」としている。 そのため、同氏は「 睡眠を取るタイミングと睡眠時間の長さの両方を規則正しくするこ とが、脳と体の健康にとって重要だ」と付け加えている。(Hea lthDay News 2019 年2 月28 日) Copyright © 2019 HealthDay . All rights reserved.
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