ビジネスケアラー発生による経済損失、2030年に9兆円へ

今月、ネット上の検索ボリュームが急上昇している「ビジネスケアラー」。NHKなどによる報道の影響が大きくNHK クローズアップ現代「仕事と介護に挟まれて ビジネスケアラー318万人時代の現実」2023.11.13、SNS上には「他人事ではない」「番組内に登場する男性に共感する」「ビジネスケアラーにもっと注目してほしい」「やっとこの問題について報道してもらえた」など、共感の声が投稿されている。

ビジネスケアラーとは、仕事をしながら家族の介護をしている人のこと。今年3月に経産省が、ビジネスケアラー発生による経済損失額を発表したことで、仕事と介護の両立に対する社会の関心がこれまで以上に高まるきっかけとなった。

推計によると2025年以降の介護離職者は年間で10万人を超え、2030年にはケアラーのうち4割にあたる318万人がビジネスケアラーとなる。ボリューム層は2020年時点で45〜49歳の人たちで、2030年には17.9%にあたる171万人がビジネスケアラーになると見られる「令和4年度ヘルスケアサービス社会実装事業報告書」 2023.3.24

ビジネスケアラーの発生による経済損失額は2030年で約9.1兆円に上る見込みで、内訳を見ると「仕事と介護の両立困難による労働生産性損失額」が占める割合が極めて大きい。

  • 仕事と介護の両立困難による労働生産性損失額…79,163億円
  • 介護離職による労働損失額…10,178億円
  • 介護離職による育成費用損失額…1,289億円
  • 介護離職による代替人員採用に係るコスト…1,162億円

従業員がビジネスケアラーになることで、本人と企業それぞれにどのような影響が出るのか?従業員に突発的な介護が発生したり、介護と仕事の両立が困難になることで身体的・精神的負担がかかり、業務効率の低下や目標の未達、従業員満足度が低下するといった影響が出てくる。これにより企業側では、労働生産性の低下、業績目標の未達リスク増、事故・労災のリスク増、離職の発生、代替人員の補充にかかるコストなどが発生する。

仕事と介護の両立に関してはこれまでも社会課題として取り上げられてきたが、2025年に団塊世代(1947年〜1949年生まれ)である800万人が後期高齢者となるのを目前に、企業の両立支援が進んでいない現状に国は危機感を強めており、プロジェクトの発足や企業向けのガイドライン策定に乗り出している。

経産省が主導するプロジェクト「OPEN CARE PROJECT」は、介護を「個人の課題」から「みんなの話題」へ転換することを目的としたもので、介護当事者や介護従事者、メディア、クリエイター、企業などが横断的に介護について議論し、課題解決に向けたアクションの推進や社会機運の醸成を図る。今年3月に立ち上げ、趣旨に賛同する個人・法人に向けてロゴマークの提供なども行っている。プロジェクト内では、「仕事と介護」に関するマスメディアによる報道数が「仕事と育児」に比べて1/3であることも指摘し、当事者の数と比べ社会的関心が低いことを問題提起している。

他、経産省は今月6日に、企業によるビジネスケアラーの両立支援に向け「企業経営と介護両立支援に関する検討会」の第1回会合を開催した。

 

 

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