性差で見る自殺の動機と、治療中のがん患者のリスク(自殺対策強化月間)
\3月は自殺対策強化月間/
3月は「自殺対策強化月間」。2024年の全国の自殺者数は暫定値で女性6,505人、男性13,763人で、計20,268人。前年から女性は470人減少、男性は1,099人減少し、人数がこのまま確定した場合、統計が始まった1978年以降で2番目に少ない数となる。一方で小中高生の自殺者数は前年比で14人の増加となり、暫定値で527人に。このまま人数が確定すれば過去最多となる。特に女子が深刻で、女子は2年連続の増加となり288人、男子は2年連続で減少し239人。
編集部では、女性特有の自殺の動機や健康問題を理由とした自殺の実態を捉えられるよう、統計のビジュアライズや研究論文のリサーチを定期的に実施している。本稿では、これまでに公開した記事の中から、性差に焦点をあてたものと、治療中の自殺リスクに焦点をあてたものをピックアップしてお届け。女性の自殺対策やメンタルヘルス対策の参考に。
目次
女性の自殺はなぜ起こる? 動機別の内訳68項目をグラフ化
男女ともに自殺の動機で最多は「健康問題」だが、2位以降のランキングや動機の詳細は、性差があることがわかっている。女性の動機を大項目で見ると、トップ3は「1位:健康」「2位:家庭」「3位:経済・生活」「4位:勤務」「5位:交際」、男性は「1位:健康」「2位:経済・生活」「3位:家庭」「4位:勤務」「5位:交際」。具体的には、どんな健康問題や家庭問題、経済・生活問題、勤務問題、交際問題が動機となったのか?記事では、自殺の動機を小項目68項目で性別にビジュアライズした。
自殺の理由、顕著な性差は高校生から 小中高生の男女別の動機
大人の場合、健康や経済状況、仕事などが動機として多いが、小中高生の子どもの場合は、「家庭(家族からの躾や親子関係の不和など)」と「学校問題(学友との不和や学業不振など)」が多くを占める。動機のランキングは、中学生までは男女ともにほぼ同じだが、高校生になると性差が見られ、男子の最多が「学校問題」に対し、女子は「健康問題」が最多に。さらに女子の小項目の動機を見ると、トップ3はメンタル疾患が占める。女子のメンタルケアは喫緊の課題。
がん患者の自殺リスクは診断後1ヶ月で4.4倍、107万人の追跡調査で 診断後の早期対策を
自殺の動機の最多が、男女ともに常に「健康問題」であることからもわかるとおり、健康問題を抱えることは自殺リスクを高めることになる。それを実際に明らかにしたのが、厚労省研究班による調査。がんと診断された患者107万876人を追跡調査したところ、診断から2年以内に660人が自殺で死亡し、自殺リスクは一般と比べて1.84倍高く、また、がん診断後から期間が短いほどリスクが上がることがわかった。年齢・性別による有意な差は認められなかったが、部位による差は見られ、食道がん患者の自殺リスクが高かった。また、がんが進行しているほとリスクが高いこともわかった。
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