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世界29カ国から研究者が参加、エピジェネティクス最前線を議論、女性の健康との関連も 国際学会「ICNIM」

機能性食品等による疾病予防をテーマにした専門学会「統合医療機能性食品国際学会(ICNIM:International Congress on Nutrition and Integrative Medicine)」の第 33 回年会が、11 月 8 日から2日間にわたり、北海道・札幌市で開催されました。当日の内容を、本学会を後援する原料メーカーの株式会社アミノアップがレポートします。

ICNIM(統合医療機能性食品国際学会)とは?

ICNIMは、統合医療と機能性食品に関する研究を通じて、疾病の予防や治療の進歩に貢献することを目的とした国際学会「統合医療機能性食品国際学会」である。主催はICNIM、後援は経済産業省北海道経済産業局、北海道、札幌市、日本統合医療学会、日本未病学会、北海道健康医療フロンティア、株式会社アミノアップだ。

この学会は、1994年に9名の研究者たちが集まり「AHCC研究会」を発足したことに始まる。翌1995年にAHCC研究会第1回研究報告会を開催。「AHCC(エーエイチシーシー)」とは、当社が1989年に開発した担子菌培養抽出物である。開発当時、AHCCはいわゆる健康食品でありながら、大学や病院などの医療現場で有志の研究者や医師によって使用され、免疫、がん、感染症などの分野で次々と新たな知見が出てきた。そこで、研究者や医師が集まり、AHCC研究会が設立されたのである。第1回目の報告会の参加者は、2カ国(日本、中国)の27名だった。2000年代に入り、AHCC研究会は経済産業省北海道経済産業局、北海道、札幌市などが後援する国際学会となり、2016年、その名称を「統合医療機能性食品国際学会(ICNIM)」と変更した。

 

世界29カ国から参加、WHOのがん専門機関が基調講演

基調講演は「がんエピジェネティクス」

今年で33回目を迎えたICNIMの年会には、29カ国から421名が参加した。英語、日本語、中国語、韓国語の4つの言語の同時通訳が入り、2日間に渡って開催された。今年はWHOのがん専門機関である国際がん研究機関(IARC)のエピジェネティクス/メカニズム部門長・Zdenko Herceg博士を基調講演に招き、「がんエピジェネティクス:がん治療と予防の進歩に寄与する分子メカニズムの解明(Cancer Epigenetics: Unraveling Molecular Mechanism to Advance Treatment and Prevention)」と題した講演が行われた。また、同年会の一部を一般市民にも開放した公開シンポジウムも開催された。

【撮影】アミノアップ(WHO国際がん研究機関 Zdenko Herceg博士による基調講演)

【撮影】アミノアップ(WHO国際がん研究機関 Zdenko Herceg博士による基調講演)

 

世界の医学・薬学・栄養学の研究者、統合医療や機能性食品を議論

発表演題数は、過去最多の68演題。世界中の医学、薬学、栄養学の研究者や医師らが集まり、それぞれの視点で取り組んだ最新の研究発表を行った。通常の学会であれば、ある特定分野の研究者が集まるが、ICNIMでは幅広い分野の専門家が集まり、統合医療や機能性食品について横断的な議論が繰り広げられる点が特徴的だ。

【撮影】アミノアップ(参加者の様子)

【撮影】アミノアップ(左:参加者の様子。右:日英中韓の同時通訳で活発な議論が交わされた)

 

エピジェネティクス最前線、遺伝子レベルのがん予防とは?

一般市民にも開放された公開シンポジウムは、「毎日のくらしでできる 遺伝子レベルでがん予防」をテーマに開催された。関西医科大学 胆膵外科学講座 里井壯平教授がファシリテーターとなり、星薬科大学 牛島俊和学長、WHO国際がん研究機関 Zdenko Herceg博士、オタワ大学 Chantal Matar教授が登壇した。がんの原因となる遺伝子があっても、その遺伝子が作動するかどうかは生活習慣でコントロールできることが最近の研究でわかっており、この研究分野は「エピジェネティクス」と呼ばれる。エピジェネティクスは、よくDNAのスイッチに例えられ、DNAの塩基配列の変化を伴わず、食事や運動などによって後天的に遺伝子の発現をオンにしたりオフにしたりする仕組みなどを研究する分野のことを指す。本シンポジウムでは、このエピジェネティクスと「がん」「食」「女性の健康」の関連について各登壇者が紹介した。

【撮影】アミノアップ(一般市民も参加した公開シンポジウムの様子)

【撮影】アミノアップ(一般市民も参加した公開シンポジウムの様子)

エピジェネティクス×がん

牛島学長は、がん化に関する遺伝子には2つあると紹介した。1つはがん遺伝子(=がん細胞を増殖させる遺伝子)で、もう1つはがん抑制遺伝子(=がん細胞の増殖を抑える遺伝子)である。がん遺伝子が活性化したり、がん抑制遺伝子が不活性化したりするメカニズムとしては、突然変異が知られている。しかし、もう一つ別のメカニズムがあると牛島学長は説明した。それは、DNAそのものは変化しないまま、遺伝子スイッチのオン・オフの切り替えががん化を左右するというメカニズム、すなわちエピジェネティクスな変化だとした。

エピジェネティクス×食

Herceg博士は、エピジェネティクスの分かりやすい例として、女王バチを挙げ説明した。働きバチと女王バチの幼虫は、生まれた時は同じ遺伝子をもっているが、ローヤルゼリーを食べた幼虫だけが女王バチになる。つまり、”生まれ”ではなく”育ち”が成長に影響するということである。人間も同様に、同じDNAを持つ双子であっても、病気の発生は必ずしも同じではない。生まれてくるときのDNAは選べないが、毎日の暮らしの中で食事や運動を工夫すれば、後天的に病気を引き起こす遺伝子のスイッチをコントロールして、病気を予防できる可能性がある。

エピジェネティクス×女性の健康

Chantal Matar教授は自身の研究で、母親の遺伝子スイッチのオン・オフが子どもの健康の形成にも影響を与えることを明らかにしている。過去の研究では、妊娠中のマウスがAHCCを摂ると、生まれた仔マウスの遺伝子のはたらきに影響を与えることを見つけた。つまり、親がAHCCを食べることにより、子どもの発がんを予防できる可能性があるかもしれない、という研究である。さらにMatar教授は最新の研究で、妊娠中の母親マウスがプロバイオティクス摂取によって腸内細菌叢を整えると、仔マウスの免疫や発がんリスクに影響を与える可能性を示している。

【撮影】アミノアップ(公開シンポジウム パネルディスカッションの様子)

【撮影】アミノアップ 左:公開シンポジウム パネルディスカッションの様子 右:公開シンポジウムはオンラインでも同時中継された

 

公開シンポジウムに参加した一般市民からは、「専門的な内容が多かったが、一般の私でも理解できることも多くとても勉強になった。国際的な叡智に触れ、とても刺激的でもあった」という声が聞かれた。

今年のICNM年会ではエピジェネティクスが注目を集めたが、同領域では日本医科大学・吉田博士による自然免疫記憶(訓練免疫)の発表も重要だった。AHCCがマクロファージなどの自然免疫細胞を一度活性化させると、追加刺激がなくても一定期間その状態が維持されるという現象で、自然免疫にも”記憶”が生じ得ること(=訓練免疫)を示唆したものである。加えて、切除可能膵がん230例・切除不能130例の臨床試験の進捗、免疫チェックポイント阻害剤や抗がん剤とAHCCを併用することでQOL(生活の質)が改善したといった症例報告も共有された。さらに、ポリフェノールの分子を小さくした機能性食品「Olgionol(オリゴノール)」による月経前症候群改善や筋力増強、アスパラガスの茎を原料にした機能性食品「ETAS(イータス)」の軽度認知障害に対する臨床試験結果も示され、今後の研究のさらなる広がりが期待される。

 

予防医学の最前線として世界が注目、食と健康の研究

世界的に予防医学に注目が集まるなか、より高度な食と健康に関する研究が進んでいる。病気になってから薬で治すよりも、食生活で病気を予防する健康づくりだ。医薬品は、特定の症状を治療したり緩和したりするための特定の成分である。一方で、食品の中には天然由来の様々な成分が複雑に絡み合って存在し、それぞれの成分が疾病予防や治療補助においてどのようなメカニズムで役立っているのか、未知な部分も多い。

近年、世界中の医師や科学者たちによる食と健康の研究が急速に進んでいる背景には、診断・分析技術の進化や、AI技術の発達による探索スピードの圧倒的な向上がある。例えば、食の科学的研究が進んでいるアメリカなどでは、炭水化物を網羅的に分析して糖尿病の栄養療法に活用したりするなどの試みが始まっている。食と健康の最先端の研究では、医学や薬学だけでなく、栄養学や工学といった分野横断的な取り組みが不可欠になっている。世界各国から多分野の研究者や臨床現場の医師たちが集まる統合医療機能性食品国際学会は、まさに予防医学の最前線の議論が交わされる場として世界中から注目が集まっている。

【提供元】 株式会社アミノアップ

 

1984 年設立以来、北海道を拠点に機能性食品と農業資材を研究開発し、世界47カ国に展開するメーカーです。「AHCC®」や、バイオスティミュラント「Dr. アミノアップ」などの独自素材を開発し、特許取得と論文発表を重視しています。社内に医学・薬学・農学・理学・獣医学など多分野の研究員を擁し、世界 100 以上の医療機関・大学との共同研究にも取り組んでいます。ICNIMを通じた国際的な研究ネットワーク形成に加え、環境負荷削減にも注力し、製品の製造 1トン当たりの製造時 CO2 排出量を 10 年前比40%削減。2025年にはEcoVadisのサステナビリティ調査で、世界各国の評価対象13万社の上位15%にあたるシルバー評価を獲得しました。

 

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