女性ヘルスケアビジネス専門のニュースレター登録
女性ヘルスケアビジネス専門のニュースレター登録

不妊治療に新知見、ネオセルフ抗体測定と血流改善の投薬がカギに 山梨大学

山梨大学の小野洋輔臨床助教らの研究グループは、不妊症女性のうちネオセルフ抗体陽性患者に対し血液の流れを良くする投薬治療を行うことで、妊娠率や出産率を上げられることを発見した。研究成果は今年11月に国際学術誌「Frontiers in Immunology」に掲載された。

少子化が加速する日本において、不妊症に対する治療法の向上は必須課題であり、不妊症治療の一つである体外受精・胚移植では、良好な受精卵を繰り返し移植しても妊娠しない「反復着床不全」が課題となっている。ネオセルフ抗体は2015年に発見された新しい自己抗体で、流産や妊娠高血圧症候群の原因となることがわかっていた。これまでの研究で、体外受精・胚移植を受けている不妊症患者の約15%、反復着床不全患者の約28%に、ネオセルフ抗体が見つかることが報告されている。しかし、この抗体の陽性者の、その後の妊娠予後や治療法は明らかになっていなかった。

そこで研究グループは、ネオセルフ抗体陽性で体外受精・胚移植を受ける患者における妊娠の結果や、妊娠率の改善に関連する治療法について調べた。研究は、2020〜2023年に山梨大学医学部附属病院と手稲渓仁会病院で体外受精・胚移植を予定した不妊女性153人を対象に実施。血液中のネオセルフ抗体を測定し、陽性群と陰性群に分けて妊娠成績を比較した。ネオセルフ抗体陽性群(30人)では、着床率や妊娠率がネオセルフ抗体陰性群(123人)より低い傾向が確認された。

一方、ネオセルフ抗体陽性患者において、低用量アスピリンやヘパリン投与の治療を行った場合、これらの治療をしなかった症例と比較して、妊娠率や出産率が有意に高いことがわかった。さらに、低用量アスピリンやヘパリンによる治療と妊娠率との関係を調べるため、年齢やBMI、反復着床不全の既往などの要因を同時に考慮し分析した。その結果、治療を受けたネオセルフ抗体陽性患者では、妊娠率が3.3倍高いことが示された。

研究グループは、「ネオセルフ抗体の測定が、着床不全患者の治療においてより良い成果につながる可能性を示した」とした一方で、今回の研究は観察研究であり因果関係の解明には至っていないことから、「より大規模な研究が必要」と指摘。また、「ネオセルフ抗体陽性患者に妊娠前から抗血小板・抗凝固療法を行うことで妊娠率や出産率を改善できる可能性があり、将来的には不妊症治療の個別化やプレコンセプションケアに活用できる可能性が広がった」とコメントしている。

 

【編集部おすすめ記事】
不妊治療と仕事の両立、どうやって職場で支援している? 25社の事例と支援のコツ
政策レベルで進むプレコンセプションケア、企業に求められる役割と健康経営の考え方
プレコンセプションケアとは? 医師が事業者に解説する基礎知識と国内動向
フェルマータ、妊活支援デバイス「kegg」を日本で一般販売 年内に開始予定
売れるフェムテックの「開発」と「販売戦略」 17の障壁と対策

PAGE TOP
×