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診療報酬、本体3.09%引き上げへ 30年ぶり高水準、医療従事者の賃上げ・物価高に対応

政府は2026年度の診療報酬改定において、医師や看護師らの技術料や人件費にあたる「本体」部分を3.09%引き上げることを決めた。バブル崩壊後の1996年度改定以来、実に30年ぶりに3%を超える大幅なプラス改定となる。薬の公定価格である「薬価」などを0.87%引き下げるものの、全体では2.22%のプラス幅を確保した。新点数は6月に施行される。

今回の改定の最大の狙いは、他の産業と比べて立ち遅れている医療現場の賃上げと、深刻化する物価高騰への対処にある。本体引き上げ分の内訳を見ると、賃上げ対応に1.70%という大きな枠が割かれた。政府はこれにより、看護師や薬剤師などの医療職でプラス3.2%、賃金水準が低い看護補助者や事務職員ではプラス5.7%のベースアップ実現を目指す。また、物価高騰への対応分として0.76%を確保。特に、光熱費や医療機器のコスト増が打撃となっている病院経営に配慮し、病院に0.49%、診療所には0.10%と、医療機能に応じためりはりのある配分をした。さらに、入院時の食事療養費(食費)についても、食材費の高騰を受け、患者負担額を原則1食あたり40円(低所得者は20~30円)引き上げる措置が講じられる。改定率は’25年12月末の予算大臣折衝で合意された。

今回の決定は、医療崩壊を防ぐための「止血」の意味合いが強い。しかし、診療報酬の原資は税金と保険料、そして患者の窓口負担。改定率全体が1%上がれば医療費は約5000億円増えるとされ、現役世代の保険料負担や窓口での支払い増は避けられない。持続可能な医療制度と負担のバランスという重い課題は、今後も残り続ける。

 

改定の要点

’26年度診療報酬改定は、「物価と賃金」という経済情勢に真正面から向き合う異例の内容となった。ポイントは以下の3点に集約される。

  1. 歴史的な「本体」引き上げ
    医師や看護師の人件費などに充当する「本体」部分を3.09%引き上げ。デフレ下での微増改定から脱却し、インフレ経済に対応したコスト構造への転換を図った。
  2. 「病院」重点の配分シフト
    物価高騰の影響を受けやすい高度医療機関(病院)へ配分を傾斜。一方で、利益率が相対的に高いとされる診療所への配分は抑え、医師偏在対策として過剰地域での新規開業に減算措置(ペナルティ)を設けるなど、開業医優遇の是正に踏み込んだ。
  3. 「賃上げ」の使途徹底
    新設される賃上げ向けの加算が、確実に現場職員の給与明細に反映されるよう、実効性を確保する仕組みを構築する。

今回の改定は、医療機関の経営危機という一刻の猶予も許されない状況に対し、高市政権が積極財政的なアプローチで応えた格好だ。しかし、診療報酬の引き上げは、すなわち国民の保険料と税負担の増加を意味する。厚生労働省の試算では、今回の改定は’26年度予算案において、国費ベースで約2348億円の増額要因となる。高齢化で自然増する医療費に加え、インフレ対応コストが上乗せされた構造になっている。

特筆すべきは、’26年度(プラス2.41%)と’27年度(プラス3.77%)で段階的に改定率を変える「2年度平均」の手法を用いた点。これは将来の物価上昇を見越した措置だが、読みが外れた場合の調整弁として、’27年度予算での再調整も示唆されている。良質な医療の確保にはコストがかかる。当たり前の事実を突きつけられた今回の改定。負担増に対する国民の納得を得るためには、医療機関側の経営透明化と、賃上げが確実に実施されたかどうかの厳格な検証が不可欠となる。

 

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