医師の働き方改革で「勤務時間は減っていない」7割も、タスクシフトの施策は一定の効果あり 医師への調査
「医師の働き方改革」が今年4月に施行され、医師の勤務環境は実際に変化しているのか?医師に聞いた調査で、施策効果は限定的であることが明らかに。実現に向けて課題は山積、現場では未だ模索状態が続いているようだ。
「勤務環境は変わっていない」7割
川野小児医学奨学財団(埼玉・川越市)が、臨床医335人と臨床・研究医100名の計435人を対象に今年9月にアンケート調査を実施。「医師の働き方改革施行前より勤務環境は改善されたか?」という質問に、約7割が「変わらない」と回答した。「改善された(3.4%)」「少し改善された(9.2%)」は計12.6%に留まり、「かえって悪くなった」は14.3%に。施策の逆効果を訴える声が「改善された」を上回る結果となった。
続いて、施行によって良くなった点を聞いたところ、最多は「良くなった点は特にない(74.7%)」で、2位以下に圧倒的な差をつけた。「休暇がとりやすくなった(12.6%)」「プライベートの時間がとりやすくなった(6.7%)」はいずれも1割前後。「自分の健康管理がしやすくなった」についてはわずか3%で、医師のヘルスケアやウェルビーイングは程遠い結果となった。
反対に、施行後に悪くなった点は何なのか?最多は「悪くなった点は特にない」で約5割。次いで「業務の負担がかえって増加した(20.2%)」「医師不足が深刻化した(17.2%)」で、働き方改革によってかえって課題が増大している様子がうかがえる結果となった。
「勤務時間が短縮された」3割、効果のあった施策は?
同様の調査は、症状検索エンジンのユビー(東京・中央)も今年8月に実施している。施行から半年が経過したタイミングで、病床20以上の病院に勤務する医師272人に労働時間について聞いたところ、約7割が「医師の働き方改革で労働時間は短縮されていない」と回答した。
「医師の働き方改革で労働時間は短縮されていない」と回答した医師に、その理由がどこにあるか聞いたところ、最多が「実施された対策が不十分で効果が見られない」で5割超えとなり、働き方改革に向けた施策の効果が十分に表れていない現状が浮き彫りに。一方で、「短縮されたと感じる」「多少短縮されたが、まだ改善の余地がある」と回答した医師に、どのような施策で労働時間の短縮を実現できたか尋ねたところ、「タスクシフト、タスクシェア」が上位に入った。
以下は、労働時間の短縮に貢献したと思う施策のランキング。( )内は「施策の効果大」「施策の効果小」の計。
- 1位:医師事務作業補助者へのタスクシフト、タスクシェア…(58.7%)
- 1位:医師の夜間業務の見直し…(58.7%)
- 3位:薬剤師へのタスクシフト、タスクシェア…(49.4%)
- 3位:その他職種へのタスクシフト、タスクシェア…(49.4%)
- 5位:看護師・助産師へのタスクシフト、タスクシェア…(46.0%)
- 6位:医師の主治医制の見直し…(41.4%)
- 6位:教育カンファレンスや回診の効率化…(41.4%)
- 8位:医師の外来業務の見直し…(40.2%)
- 9位:ICTなどの導入…(33.4%)
- 10位:副業・兼業先との勤務シフトの調整、労働時間短縮の協力要請…(32.2%)
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