「遠慮しなくていいですよ」、がん患者・家族が綴る心に残る医療者からのひと言
がん患者や家族にとって、医療者の何気ないひと言が大きな支えになることがあります。肺がんサバイバーであり、がんサロン運営者でもある吉森公恵さんが、入院中に体験した看護師とのエピソードを振り返ります。
気持ちを汲み取ってくれた看護師
「遠慮しなくていいですよ」ーー。2014年、退院が近くなったある日、私はベッドに横たわっていました。そこへ、一人の看護師さんが来られ「ベッドマットが柔らかすぎるから交換します」と、硬いマットに交換して行かれました。そのマットに横たわってみると、私の身体を押し返すような硬さ。術後、痩せてしまった身体にはしんどい硬さです。「交換しないほうが寝心地はよかったなぁ」「このままでいいです、という選択肢はなかったのかなぁ」「あのマットは誰かが使うのかなぁ」と、横になりながらマットを撫で思いを巡らせていました。
すると、しばらくして、別の二人の看護師さんが来られ、笑顔と張りのある声で「寝心地はどうですか? しんどくないですか?」「硬くないですか?」と、様子を見に来てくださったのです。
私は咄嗟に「大丈夫です」と答えました。しかし、心のなかでは「そうそう、硬いんです。でも、あと二日もすれば退院。忙しい看護師さんたちに、また交換の手間をかけさせる訳にはいかない」と、口に出せずにいました。すると、「遠慮しなくていいですよ」と言ってくださるのです。返事ができずに二人の笑顔を見ていました。私の沈黙に確信を得たように「硬いですね、交換しましょうね」と、さっさと寝心地のよいものにしてくださったのです。言えない気持ちを読み取ってくださったのです。寝ている時間が長いので、あと二日とはいえ本当にありがたかったです。
看護師さんにあえて言ってもらえた「遠慮しなくていいですよ」は、弱っている心と身体にとても心強い言葉でした。それは、飲み込んだ思いを汲み取ってもらえたからだと思います。あのときのひと言の響きを、今も大切にしています。
【執筆】吉森公恵
NPO法人愛媛がんサポートおれんじの会。1961年愛媛県生まれ。2014年、肺がんが見つかり、手術。患者としての経験が誰かの役に立つかも知れないとピアサポーター、がん教育に携わる。2024年、肺がん再発。強⽪症など基礎疾患があるなか、治療した。NPO法人愛媛がんサポートおれんじの会は、2008年に誕生した、主に愛媛県内のがん患者と家族、遺族などが集う会。毎月の例会の他、松山市内中心部で常設の語り合いの場「町なかサロン」を運営している。
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