スマホ認知行動療法、うつ病発症リスクを最大約5割低減 50週間の追跡で確認

オンラインによるメンタルヘルス支援の実用化が進む中、スマートフォンを活用した認知行動療法が広がっている。最新の研究では、スマホ認知行動療法がうつ病の発症リスクを最大約5割低減することを確認した。時間や場所を選ばず利用できる特性から、今後さらなる普及が期待されており、今回の研究は、その有効性を裏付ける新たなエビデンスとなった。

スマホを使った認知行動療法、うつ病の長期予防効果を検証

名古屋市立大学と京都大学などの研究グループは、抑うつ症状がある成人を対象とした臨床試験で、スマートフォンを使った認知行動療法により50週間後までのうつ病発症リスクが低下することを確認した。研究成果は今年、国際学術誌『British Journal of Psychiatry』に掲載された。

うつ病になる前の状態に着目

うつ病の診断基準を満たしていないものの、抑うつ気分や意欲低下などの症状が続く「閾値下うつ状態」は、うつ病を発症する重要なリスク因子で、人口の約11%が該当するとされている。閾値下うつ状態は労働生産性の低下や死亡リスクの上昇などにつながることがあり、社会的・経済的負担が大きい一方、医療資源の限界から支援の手が届きにくいという課題があった。

認知行動療法は、うつや不安などに関係する「思考」や「行動」に働きかける心理療法の一つ。近年は、スマートフォンやオンラインを活用した認知行動療法が、時間や場所を問わず利用できる心理的支援として注目されている。研究グループはこれまで、スマホ認知行動療法で、抑うつ症状が26週間にわたり改善することを確認していた。今回は、その効果がより長期にわたって続くのかを検証した。

研究には、日本国内から募集した18歳以上の成人3280人が参加。参加者は、以下の9つの認知行動療法介入群とセルフチェックのみを行う対照群に分かれた。介入はスマホアプリを用いて実施し、50週間にわたり完全オンラインで追跡調査を行った。

  • 行動活性化(楽しさや達成感を感じられる行動を増やす)
  • 認知再構成(考え方の偏りを見直す)
  • 問題解決(問題への対処法を身につける)
  • アサーショントレーニング(自分の気持ちや考えを適切に伝える)
  • 不眠に対する行動療法
  • 行動活性化+認知再構成
  • 行動活性化+問題解決
  • 行動活性化+アサーショントレーニング
  • 行動活性化+不眠に対する行動療法

スマホ認知行動療法でうつ病発症リスクを最大約5割低下

その結果、50週間後までにうつ病を発症した人は、9つの介入群ではそれぞれ17〜20人だったのに対し、対照群では31人だった。9つの介入群をまとめて比較すると、うつ病発症リスクは対照群より34%低下した。介入ごとに見ると、特に「行動活性化+アサーショントレーニング」では、うつ病発症リスクが約48%低下し、発症予防効果が最も大きかった。また、「不眠に対する行動療法」「行動活性化+不眠に対する行動療法」、考え方の偏りを見直す「認知再構成」などでも、うつ病発症リスク低下との関連が認められた。

一方で、50週間を通じた抑うつ症状の程度を示す「うつ病総負荷」では、すべての認知行動両方介入群で対照群より低下がみられた。なかでも「行動活性化+認知再構成」で改善が大きく、50週時点の抑うつ症状についても最も大きな改善が確認された。

スマホ認知行動療法、うつ病の一次予防として社会実装に期待

研究グループは、「認知行動療法を一度にすべて提供するのではなく、個人の状態に応じて効果的なスキルを選択・組み合わせることで、うつ病の予防につなげられる可能性を示した。また、スマホ認知行動療法は、短時間で取り組め、場所を選ばず利用できることから、うつ病の一次予防への活用が期待できる」とコメント。今後については、「今回確認された予防効果が50週間を超えて持続するか、また、長期的な予防効果を維持するために必要な条件を検証する必要がある」としている。

 

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