女性の肥満解消に適切な運動法・食事法・医薬品とは?(1/5)

「ダイエット」は広く認知されている言葉だが、意外と正しい知識では知られていない。単純に「外見を良くしたいから」とダイエットに取り組むダイエッターが多いが、本来は肥満による疾病リスクも重視すべきだ。肥満者はそうでない人に比べ、糖尿病で5倍、高血圧症で3.5倍、心疾患で2倍の発病率となり、また肥満者は乳がんや大腸がんが多いことがわかっている。肥満の定義や、肥満と判定される基準、肥満解消法についてなど、改めて肥満について確認したい。

肥満の定義

肥満と肥満症の違い

まず確認したいのが「肥満」と「肥満症」の違い。日本肥満学会は「治療の対象となる肥満」と「そうではない肥満」を明確に区別するため、医学的に減量の必要な状態を「肥満症」と定義している。2000年に同学会が「新しい肥満の判定と肥満症の診断基準」を発表して以降、疾患として肥満症が認識されるようになった。

肥満症の定義(大人)

肥満と肥満症の違いは以下の通り。

肥満症診断フローチャート

日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2016」をもとに編集部で作成

  • 肥満
    ・脂肪組織が過剰に蓄積した状態
    ・肥満の判定にはBMIを用いる
    ・日本では、疾病合併率がもっとも低いBMI22が標準体重
    ・日本では、BMI≧25だと肥満と判定される
  • 肥満症
    肥満(BMI≧25)と診断された者のうち、以下いずれかの条件を満たす場合、肥満症と診断され、疾患として扱われる
    ⇒肥満に起因ないし関連する健康障害(※)がある、あるいは健康障害の合併が予測される場合で減量を要する(減量により改善する、進展が防止できるもの)
    ⇒ウェスト周囲長によるスクリーニングで内臓脂肪蓄積を疑われ、腹部CT検査によって確定診断された内臓脂肪型肥満。この場合、健康障害を伴いやすい「高リスク肥満」に位置付けられる
    (参考:日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2016」)

(※)耐糖能障害,脂質異常症,高血圧,高尿酸血症・痛風,冠動脈疾患(心筋梗塞・狭心症),脳梗塞(脳血栓証・一過性脳虚血発作),非アルコール性脂肪性肝疾患,月経異常・不妊,閉寒性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群,運動器疾患(変形性関節症・変形性脊椎症・手指の変形性関節症),肥満関連腎臓病

なおBMI22が標準体重とされているが、この基準には問題点がある。BMIは体重を身長の2乗で割った体格指数のため、同じ身長・体重の人だと一律同じBMI数値が出てきてしまう。体重が重くても筋肉質であれば肥満ではないし、反対に体重が軽くても脂肪の割合が高ければ肥満となる。BMIの数値だけでは一概に肥満かどうかは判断できないので、あくまで参考数値として捉えたい。

肥満による病気のリスク

肥満により発症リスクが上がる病気例は以下。

  • 高血圧症
  • 脂質異常症
  • 糖尿病
  • 脂肪肝
  • 動脈硬化
  • 心臓病
  • 脳卒中
    など

肥満・糖尿病専門医の岡部正さんは、肥満者のリスクを次のように指摘する。

標準体重を基準とした場合、肥満者はそうでない人に比べて、糖尿病で5倍、高血圧症で3.5倍、心疾患で2倍の発病率になります。さらに肥満者には大腸ガンや乳ガンが多いことも分かっています。(略)脂肪率が高いと死亡率も高いのです。引用:「カンタンだから続けられる!内臓脂肪ダイエット(監修/肥満・糖尿病専門医 岡部正)」p.24

動脈硬化は年齢を重ねる(加齢)とともに少しずつ進んでいきますが、肥満の中でも特に内臓脂肪型肥満、そして脂質異常症(高脂血症)、高血圧、高血糖(糖尿病)の四つが動脈硬化の進行をはやめます。これら四つの動脈硬化危険因子は、単独ではなく二つ、三つと複数合わさったときに、動脈硬化の進行をよりいっそうはやめるのです。そして、四つが重なると、心臓病や脳卒中が起こる危険が著しく高まることから、これを「死の四重奏」と呼んでいます。引用:「家庭の医学(主婦の友社)」p.129

肥満の主な原因

体重増加に影響する主な原因・要素は以下。

  • エネルギー摂取量過多
  • 早食いの癖がある
  • 間食が多い
  • 不規則な食事時間
  • 糖質摂取割合が高い
  • タンパク質摂取割合が低い
  • 重度飲酒
  • 運動習慣がない
  • 短時間睡眠
  • 喫煙習慣がある
  • 強度のストレスを長期にわたり受けている
  • 閉経、更年期
  • 仕事環境(二交代勤務、長時間労働など)
    など
    (参考:日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2016」)

日本肥満学会は、労働時間と肥満の関係について次のように指摘。実際、当社の調査でも二交代勤務の看護師はそうではない働く女性と比較して痩せにくい傾向にあることがわかっている。

労働時間はBMIやウェスト周囲長の増加に関連し、同時に時間外労働時間が、遅い夕食の時間と関連していた。(略)日本の一企業における27年超えの追跡研究では、交代勤務が肥満と関連することが示されている。1日の総エネルギー摂取量について勤務形態による差異はないものの、深夜勤務者では明け方のエネルギー摂取量、油脂ならびにアルコールの摂取量が多く、1日の消費エネルギーは日勤者に比し深夜勤務者で有意に低かったことが報告されている。(引用:日本肥満学会「肥満症診療ガイドライン2016」p.22)

女性の体重増加には、妊娠や閉経も大きく関係している。

性ホルモンが食欲や体重に影響すると考えられている。女性では妊娠や閉経を機に食欲や体重が変動することも知られている。(略)体脂肪量は女性では40歳代、50歳代で増加(略)。閉経後エストロゲンが低下した女性では、閉経前女性に比し腹部や内臓脂肪量が増加しやすい。(引用:「肥満症診療ガイドライン2016(日本肥満学会)」p.22)

ストレスも体重増加に影響する。

ストレスがたまっているとき、ヤケ酒やヤケ食いをする人がいます。これは、心身にストレスが加わると、食欲中枢を刺激するホルモンの分泌が高まるからです。また、ストレスがあるとなかなか熟睡できず、睡眠不足になりがちです。すると、食欲を刺激するホルモンの分泌が高まり、食欲を抑制するホルモンの分泌が減少します。ストレスフルな状態というのは、心身にとって緊急事態ですから、それを乗り切るためのエネルギーをとるように体が反応するのです。その結果、たくさん食べたり飲んだりして内臓脂肪が蓄積していきます。また、ストレスが多い不規則な生活は、食事を抜いたり、遅い時間に食事をとったりすることが多くなります。こうした食習慣は肥満の原因になり、内臓脂肪もたまりやすくなります引用:「家庭の医学(主婦の友社)」pp.136-137

PAGE TOP
×