健脳とは?サポート商品・サービス事例
65歳以上の高齢者の認知症患者数は2025年には5人に1人となり、700万人を超えると推計されている(内閣府「高齢者の姿と取り巻く環境の現状と動向」)。認知症予防が大きな課題となる中、脳の健康をサポートする商品・サービスへの関心が高まっている。30~40代とまだ若いうちから脳の健康を意識する女性も増え、「脳の健康」はかつての“高齢者のトピック”ではなくなっている。
目次
健脳とは?
「健脳」の意味とは?明治時代から注目される脳の健康
健脳とは「健康な脳」のことで、明治時代後半にはすでに健脳という言葉が登場している(編集部調査)。明治29年、丹平製薬(大阪・茨木)が頭重薬「健脳丸」を発売開始しており、現在は便秘薬「健のう丸」として販売している。
明治39年、「長寿論(著:伊藤真一郎)」の中で健脳法が紹介されている。 1980年代以降になると健脳のためのハウツー本が多数登場し、生活者の間で脳の健康維持・向上への関心が広まった。各書籍が提唱・解説する健脳のテーマ(健脳で目指すこと)は以下。
- 脳の若返り
- ボケ防止、認知症防止
- 脳卒中予防
- ウツ防止
- 疲労回復
- 記憶力・発想力・集中力向上
- 頭がよくなる
- 子どもの成績を上げる
- 受験戦争を勝ち抜く
- 子どもの非行防止
健脳のための具体的な養生法としては主に次の5つが紹介されている。
- 生活習慣(コミュニケーション、ストレス発散、幸せを感じるなど)
- 食事
- 体操
- ツボ刺激
- サプリメント摂取
最近は健脳の養生法のことを「脳活」と呼ぶメディアが増えたことで、健康な脳(あるいは健康な脳を維持する方法)を表現する言葉としては、「健脳(以下赤線)」よりも「脳活(以下青線)」の方が広く使われている。
健脳食のレシピ
健脳食とは健脳に良い食事
健脳の維持・向上のための食事方法・食べ物のことを健脳食と呼ぶが、働き世代など若い世代の間では「ブレインフード」という名前が知られている。ブレインフード協会では、健脳食で期待できる効果として以下をあげている。
- 脳の活性化
- 記憶力・集中力向上
- 心や感情の安定
- メンタルヘルス
- 脳の健康
- 子どもの育脳
- 認知症予防
健脳食としてよく紹介される成分・食べ物は以下。
- オメガ3脂肪酸
・くるみ
・えごま油
・さんま
など - ギャバ
・玄米
・トマト
など - カカオポリフェノール
・ココア
・チョコレート
など - イチョウ葉エキス
健脳食レシピ
健脳食は、料理研究家によるレシピ、レシピ投稿サイト、Instagramで見ることができる。「脳活」「ブレインフード」という言葉の方が若い世代にとってはメジャーだが、一部女性の間では「健脳」というキーワードで浸透している様子。
例1.薬膳料理家によるレシピ
特に薬膳料理家が、薬膳レシピに健脳効果のある食材を取り入れていることが多い。薬膳料理家の黄惠子さんは薬膳レシピの健脳効果について次のように述べている。
薬膳には体調を整えるほか、脳の発達を促す作用も。「中国の家庭では、脳を健やかに賢く発達させるための〝健脳的食事法〟が伝統的に受け継がれています。子どもの脳の発達促進や老人の認知症対策として役立つ健脳食は、受験生にも最適」。(引用:LIVING くらしナビ「冬のカラダと脳に効く!『健脳的薬膳料理レシピ』」)
また、薬膳料理研究家の阪口珠未さんのHPでは健脳レシピとして「脳活薬膳。くるみと鮭の脳活ふりかけ」を紹介。
薬膳の世界では「脳」によいとされる食べ物があるのです。(略)「健脳の木の実」と呼ばれるくるみは古来から、「胡桃肉」(ことうにく)という漢方薬としても重宝されてきました。(略)中国の親たちは子供に毎日くるみを食べさせているそうです。(引用:阪口珠未オフィシャルサイト「受験生の脳活薬膳」)
例2.レシピ投稿サイト
レシピ投稿サイトにも健脳食レシピは多数投稿されている。いずれも「くるみ」「鯖」のレシピ投稿が目立つ。
例3.Instagram
Instagramには「#健脳:245件」「#健脳食:150件」「#健脳効果:17件」「#健脳食材:8件」「#健脳弁当:7件」「#健脳レシピ:5件」「#健脳サラダ:4件」の投稿がある(2019年5月現在)。決して多くはないが、Instgramユーザー層も使用する用語であることが分かる。
例4.書籍
前述の薬膳料理家が「(健脳食事法は)受験生にも最適」「(健脳に良いとされるくるみを)子どもに毎日たべさせている」と述べているように、健脳食材を子どもの“脳育”のために取り入れる女性もいる。詳細:脳を育てる! 子どものためのブレインフード&レシピ71
食事以外の健脳法
食事からのアプロ―チの他にも健脳法は「体操」「ツボ」「日記」などがある。
健脳体操
運動により脳を刺激して、活性化させるのが健脳体操。認知症の予防・改善にも。以下書籍では認知症の予防・改善に役立つ運動を31種掲載。詳細:「脚」を鍛えると「脳」が若返る! ボケを防ぐ運動・食事・習慣
健脳ツボ
脳に最も近い顔つぼを刺激することで脳の疲れをとって機能向上を目指す。詳細:顔ツボでぐんぐん脳活!―すぐに実践できる脳活ツボ・マッサージ
健脳サプリメント
小林製薬、DHCからは健脳にフォーカスした機能性表示食品が登場。健脳生活(長崎市)が販売する「スコアアップ」はブレインフーズの一つとして注目され今後伸びが期待されている「ホスファチジルセリン」配合。
- 【商品名】健脳ヘルプ
【分類】機能性表示食品
【会社名】小林製薬 - 【商品名】DHC イチョウ葉 脳内α
【分類】機能性表示食品
【会社名】DHC - 【商品名】健脳生活 スコアアップ ホスファチジルセリン
【分類】健康補助食品
【会社名】健脳生活
デイサービスで健脳
医療法人健脳会デイサービスセンター健脳(福島・郡山)は、脳疾患に起因した障害のリハビリに特化した脳活性化センター。脳卒中後遺症・神経難病・認知症に対して脳活性化プログラムに基づく脳リハビリを行っている。
Youtubeで健脳トレーニング
デイサービスや介護現場で活用できる健脳トレーニングはYoutube上の動画で多数紹介されている。要介護者や高齢者も取り組める内容。以下動画はデイサービス、介護施設で実施できる体操やスポーツを取り入れたレクリエーションを伝えるメディア「でいトレチャンネル」による「体操に脳トレを取り入れる方法」。
日記で健脳
脳科学者 茂木健一郎さんによる、脳の活性化を目的とした日記帳。1日1問、ユニークな質問に答えていく仕掛けで、創造的な刺激を脳に与える。詳細:茂木健一郎監修 脳が元気になるダイアリー
健脳市場、拡大の兆し
健康産業新聞(2019年1月16日号)は、特集「注目の“健脳”素材」の中でこのように解説している。
2015年4月にスタートした機能性表示食品制度を機に、健脳素材・最終製品の市場は盛り上がりを見せる。特に最終製品ではこれまで、主に医家向けルートや訪販・宣講販、MLM、医療・健康機器の体験販売会場など、対面による説明販売を中心とした流通が主だった。同ルートでも健脳サプリメントの売れ行きは順調に推移してきたが、より人の目に触れる通販ルート、店販ルートなどでは薬機法など法律の関係上、十分な広告ができず、ニーズは高くてもユーザーの手元に製品が届けられないという課題もあった。機能性表示食品制度のスタートはその課題をクリア、最終製品のパッケージや広告に一定の表示が可能になったことから、健脳サプリメントは通販ルート、ドラッグストアなどの店販ルートにまで販路が拡大。(引用:健康産業新聞2019年1月16日号)
富士経済によると、脳機能関連素材の市場規模は2017年が247憶円見込みで、2022年には303憶円に拡大すると予測。若い世代も取り込み始めた健脳市場の拡大はこれからだ。
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