フェムケア市場の拡大は50代以上の中高年層がけん引、6,000店舗の販売データと5万人の買い物データから考察

本稿は、医療・ヘルスケアに特化した市場調査会社の株式会社インテージヘルスケア(東京・千代田)による寄稿記事です。同社が保有する小売6,000店舗の販売データと生活者5万人のデータを元に、小売での販売状況、年齢別の購入カテゴリー、カテゴリー別の購入ルートなどの視点から、フェムケア市場の需要を紐解いていきます。

大規模パネルデータ(小売店/消費者)を元に市場分析

一言でフェムケアといっても、年代によって悩みも対処方法も様々です。前回は当社で長期間ににわたり収集しているアンケートデータを元にした分析をお届けしましたが、今回は、全国約6,000店舗の販売実績を継続的に収集している当社の小売店販売データSRI+®(全国小売店パネル調査)と、全国5万人を超える生活者の日々の買い物データであるSCI®(全国消費者パネル調査)を用いて、実際の販売・購買データを元にした分析をお届けします。フェムケア市場の定義には明確なものがありませんが、今回は、「OTC医薬品(女性用保健薬、皮膚用薬の一部、漢方薬の一部処方、妊娠検査薬、排卵日検査薬、膣カンジダ再発治療薬、尿トラブル改善薬、貧血改善薬)」+「健康食品(成分:葉酸、大豆イソフラボン、エクオール、等)」と定義しました。

<この記事のポイント>
・フェムケア市場は漢方、健食を中心に拡大中
・伸びているのは50代以降の女性の購入
・「更年期対策」健食サプリ市場は今後も伸びる可能性が高い
・健食成分「エクオール」が特に60代以上の高年層で伸長、「エクオール」の伸びの背景には、利用目的ベネフィットの拡大がある

 

フェムケア市場は拡大基調、背景には対処率の伸長がある

フェムケア市場はここ7年で順調に拡大している。カテゴリー別にみると、「漢方薬」「健康食品」が伸長している。人口ボリュームの大きい団塊ジュニア世代の多くが更年期世代に突入していることに加え、前回分析で示した通り、フェムケア症状(生理痛・更年期症状など)の対処率の伸びが市場を押し上げてきていると推察される。

インテージSRI+®(全国小売店パネル調査)

【出典】インテージSRI+®(全国小売店パネル調査)。国内最大6,000店舗の販売状況から推計。2018年1月度〜2024年12月度のドラッグストア、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ホームセンターでの推計販売金額。ECを含まない。「漢方薬」は加味逍遙散、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸など。「女性用保健薬」は更年期症状や生理痛・PMSの改善薬、貧血改善薬など。「皮膚用薬」は女性向けデリケートゾーン用。「検査薬」は排卵日や妊娠の検査薬。「その他の医薬品」は尿トラブル改善薬、膣カンジダ再発治療薬など。「健康食品」は葉酸、大豆イソフラボン、エクオールなど

 

 

購入率が高いのは30代女性だが、4年前と比較して増えているのは50代以降の女性

全国の5万人を超える生活者の日々の買い物データであるSCI®(全国消費者パネル調査)データを用いてフェムケア市場の購買状況を確認した。最も購入率(フェムケアカテゴリーの何かを買う人の割合)が高いのは女性30代。4年前と比較して購入率が伸びているのは女性50~70代の年代高めの層である。

【出典】インテージSCI®(全国消費者パネル調査)。全国15歳~79歳の男女53,600人の日々の買い物データのうち、グラフは女性のデータのみを集計して作成

【出典】インテージSCI®(全国消費者パネル調査)。全国15歳~79歳の男女53,600人の日々の買い物データのうち、グラフは女性のデータのみを集計して作成

 

 

購入しているカテゴリーは各年代で異なる、高齢層では健食割合が高い

20~30代では妊活関連が多いと思われ、検査薬(妊娠検査薬)の割合が他年代よりも高い。全年代で健康食品の割合が高く、特に70代を除き、年代が高くなるほど割合が高くなる傾向。

【出典】インテージSCI®(全国消費者パネル調査)

【出典】インテージSCI®(全国消費者パネル調査)

 

以下は上記グラフの縦横が逆で、各カテゴリーがどの年代に支えられているかを示している。皮膚用薬は各年代での需要あり。健康食品は年代高めの層の割合が非常に高い。

【出典】インテージSCI®(全国消費者パネル調査)、2024年1月度~12月度

【出典】インテージSCI®(全国消費者パネル調査)、2024年1月度~12月度

 

 

フェムケア市場はEC比率が高い、ECとの親和性がある

フェムケア関連のカテゴリーはECでの購入割合が高い。健康食品は75%が通販(インターネット)と非常に高い割合になっている。

【出典】インテージSCI®(全国消費者パネル調査)、2024年1月度~12月度

【出典】インテージSCI®(全国消費者パネル調査)、2024年1月度~12月度

 

 

健康食品カテゴリーで伸長している成分は「エクオール」

主に女性向けの訴求が多いと思われる各成分のうち、「エクオール」成分が大きく伸長しており、5年前と比較すると倍になっている。

【出典】インテージSRI+®(全国小売店パネル調査)、2020年1月度〜2024年12月度

【出典】インテージSRI+®(全国小売店パネル調査)、2020年1月度〜2024年12月度

 

 

「更年期障害対策」で健食サプリ市場はこの数年で大きく伸長、今後のポテンシャルも高い

インテージヘルスケアが発行している、「健食サプリ・ヘルスケアフーズレポート2024」では、消費者の利用目的(ヘルスベネフィット)別に健食サプリ市場を把握している。2023年の「更年期障害対策」市場規模は、「顕在市場」が248億円、2018年より約61億円市場が拡大した。また将来のポテンシャルを表す「潜在市場(※)」は498億円。顕在市場・潜在市場とも伸長しており、市場の引き続きの拡大が期待される。また、この目的で使用される原料シェア1位は「エクオール」。このエクオールの割合も大きく伸びている。※潜在市場とは、この目的で今後健食サプリを利用したいという意向の金額から推計したもの。顕在市場を含む。

【出典】インテージヘルスケア「健食サプリ・ヘルスケアフーズレポート」

【出典】インテージヘルスケア「健食サプリ・ヘルスケアフーズレポート」

 

 

「エクオール」は50代以上の女性の割合が増加、使用目的(ベネフィット)の拡大が背景に

「エクオール」の使用者の性年代を見ると、2023年では50代以上の割合が大半を占める。2018年と比較して、60代、70代女性の割合が伸びている。「エクオール」の利用目的をみると、「更年期障害対策」だけでなく、「関節の健康」の割合が増加している。

【出典】インテージヘルスケア「健食サプリ・ヘルスケアフーズレポート」

【出典】インテージヘルスケア「健食サプリ・ヘルスケアフーズレポート」

 

 

【提供元】 株式会社インテージヘルスケア

 

幅広い疾患領域における実績、医療やヘルスケアに特化した専門性の高さ、豊富なアセットを活かし、お客様の意思決定につながるインサイトをご提供します。

「健食サプリ・ヘルスケアフーズレポート」は2012年度意向毎年発刊し、延べ370社以上に提供実績があります。生活者13万人以上に大規模調査を行い、「健康食品・サプリメント市場」「ヘルスケアフーズ市場」「セルフヘルスケア市場」の市場規模推計や利用者の分析結果をまとめました。詳細はこちら画面右の申込画面からサンプルレポートを無償ダウンロードいただけます。他にも様々なサンプルレポートをご用意しております。インテージヘルスケアのHPホーム画面>メニュー>資料ダウンロード

 

 

 

 

 

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