介護予防の取り組み事例と運用の課題(4/4)
介護予防の取り組みの課題
実際に介護予防に取り組んでいる自治体が挙げている課題例は以下。財政面においては「(大きな費用はかからないため)課題は特にない」としている自治体が多いが、施設面、利用者のアクセスなどに対する課題が目立つ。
- 人材
⇒継続的に行政が関わることで、信頼関係につながっているため、今後も定期的な講座への訪問は継続したいと考えているが、どのくらいの頻度でどのように関わるのがよいのか、人材のやりくりを含めて要検討(岡山県津山市)
⇒事業の開始から7年が経過。サポーターの高齢化や代替わりが懸念点(北海道滝川市) - 施設、設備
⇒冬は室温がマイナスになることも。冬季の降雪や寒さ対策が必要(北海道滝川市)
⇒自治会館によっては、畳の上にイスを置いてはいけない地域がある。絨毯を敷く等の方法を提案するが実践に結びつかない。(滋賀県栗東市)
⇒ビデオ等の設備がない会場に対し、デッキ貸出しを検討中(大阪府島本町) - 利用者のアクセス
⇒地域偏在があるため、歩いて20分以内に教室がない地域もある。農村地区は家が点在し、徒歩20分圏内で教室を開催することが難しい。冬季になると、通いが困難となる参加者もいる(北海道滝川市)
⇒疾病や加齢により自力で通うことができなくなるケースがある(滋賀県栗東市)
⇒認知症の人で曜日が分からない場合や介助までは要らないが少し見守りが必要な人が通いやすい工夫の検討が必要(大阪府島本町) - 地域に馴染みにくい住民への仕掛け
⇒地域に馴染めない住民もいるため、そうした人たちが参加しやすい仕掛けが必要。特に60歳代をターゲットに絞った内容を検討したい(滋賀県栗東市) - その他
⇒主体的に住民自身が講座を開始するスタイルは落ち着き、最近は新規実施箇所数の伸びが低下。異なるアプローチ手法により、実施箇所を増やす取組みが急務(岡山県津山市)
⇒サポーターのレベル維持(大阪府島本町)
(参考:厚生労働省「地域の実情に応じた効果的・効率的な介護予防の取組事例」)
介護予防に関する情報を取得できるサイト・書籍など
政府資料・HP
- 介護予防について理解する(厚生労働省)
介護予防に関する団体など
介護予防に関する書籍
変わる介護予防の形
介護予防の形が「機能回復訓練」中心から、「機能回復訓練」を基本とした「QOL向上」「地域の居場所づくり」などに変化したことで、実際に高齢者らの心身の状態が良い方向へ改善している成功事例が増えている。健康寿命の延伸は、“新しい介護予防”の形により実現されるだろう。各地域からは、取り組み・運営を通して見えてきた課題も挙がっており、いずれも参考になることが多い。高齢者が心身共に健康的で幸福を感じられる地域づくりに向けて、各地域・各企業の取り組みは定期的にチェックしておきたい。
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